5. 指導計画と指導内容

こうして動き出したロイロノートによる遠隔学習指導ですが、いきあたりばったりの授業を行うわけにはいきませんので、ロイロ専用のきちんとした指導計画を作成することになりました。もちろんそれは、生徒や保護者に学習内容を学校のホームページで知らせるために、管理職から臨時の指導計画の提出を求められたということもありました。

 

幸い、1年生には前項で紹介した通常授業時の細かい指導計画があったので、それを元にロイロ専用の指導計画を作ることになりました。ただ、やはり特殊な指導形態を採ることになるので、実際の指導計画を作成する前に、「1年生当初指導内容候補一覧」というものを作成して、副担当と指導内容の検討を行いました。

 

(1) 5月の指導・評価計画と指導内容

ロイロノートによる遠隔学習指導が構想された当初、それは5月いっぱいで終わる予定でした。そこで、5月の第2週から始まる3週間分の指導計画を作成しました。ここでは3学年分すべての指導計画を紹介します。

 

① 1年生指導・評価計画(5月分)

② 2年生指導・評価計画(5月分)

③ 3年生指導・評価計画(5月分)

 

次に、上記を受けて各時間の指導内容の詳細を考えました。英語科では複数の教員が協働して授業を作成することになっていたので、同僚に学年主担当(筆者は1年生)としてどのような指導内容を考えているかを示す必要があったからです。さらに、特に「表現の学習」では4人で協力して対話場面を演じることを考えていたので、他の先生方に演じてもらいたい内容及び具体的なせりふ等を示さなければなりませんでした。そこで、以下のような各時間の指導内容を記した文書を作成しました。なお、撮影及び各指導項目の作成は週毎に行っていったので、文書も週毎に作成していきました。

 

① 1年生5月第2週(入門期01-03)の指導内容(カード作成計画)

② 1年生5月第3週(入門期04-06)の指導内容(カード作成計画)

③ 1年生5月第4週(入門期07-09)の指導内容(カード作成計画)

 

(2) 実際の授業内容例

これについてもできるだけ細かくご紹介したいのですが、なにせすべてビデオで作成したので(スライドも)、それらをここにアップするのは不可能です(容量オーバー&動画アップロード不可)。そこで、例として上記の中から1コマ目(入門期01)のスライド画面(完成品では音声を加えて動画として作成されている)だけを以下にあげておきます。なお、元々動画の部分はその主な場面を静止画カットで挿入してあります。( )は上映時間。

 

<入門期01の内容>

⓪ 表紙&オープニング(0'44")+入門期13表紙&新オープニング(0'55")

→教材目次、オープニング(挨拶)

① 教員自己紹介(2'47")

→自己紹介ビデオ(植野・肥沼)、内容確認

② 英語学習の目的(1'57")

→なぜ英語を学ぶのか、生徒の予想回答、英語科の願い

③ 英語学習の方法(6'06")

→臨時休校中の学習方法、本校独自の学習法、学習上の留意点

④ 表現の学習(挨拶)(7'57")

→学習目標、4人の授業に共通の挨拶場面、モデル会話、内容の確認、表現の確認、表現の練習

⑤ 語彙の学習(数字0-20)(7'41")

→学習目標、モデル音声、発音解説・練習、リズム練習

⑥ 文字の学習(アルファベットの大文字)(9'02")

→大文字の名前、発音のポイント、リズム練習(降順、昇順、ランダム、倍速)

⑦ 課題提出の説明 (スライド 0'05)

→課題の場所、提出方法、提出期限

○受講レポート(テキスト・カード 0'05")

→受講日、受講時間、使用デバイス、受信状況、課題理解度、感想

 

(3) 評価方法

音声を中心にした入門期指導の評価を行うためには、生徒の音声によるパフォーマンスのフィードバックが欠かせません。通常の授業であれば、それは授業中に一人ひとり発声させることで実現しています。また、実際にパフォーマンス・テスト(学習した内容の質疑応答、自己紹介スピーチ等)を行うことで実技の能力も測っています。しかし、ロイロノートによる指導ではそれが難しかったので(カードに声を吹き込ませて提出させることもシステム上できるが、録音デバイスが全家庭にあるわけではなかった)、その視点での評価はあきらめ、アルファベットの大文字と小文字を書くという課題のみを6月の分散登校時に提出させて評価するということを実施しました。

 

一方、そうは言っても、毎回の”授業”を生徒がしっかり受けているのか、そしてそれがどの程度理解されているのかということを知ることは必要でした。そこで、毎回の課題の最後に「受講レポート」というカードを用意し、受講日、受講時間、使用デバイス、受信状況、課題理解度、質問等を報告させました。これによって、生徒が何に関心を持ち、何を学び、一方で何に困難を感じていることなどがわかり、一人一人の学習状況がわかりました。また、質問にも答えられたので、ある意味で「双方向」の授業ができたようにも感じられました。もっとも、毎時間の”授業”でそれを全員に提出させたので、それらを全部読んでコメントを返すのがとても大変でしたが…。

 

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