その他すべての授業場面

これまでに紹介した①~⑤のような活動をとおして、教師も生徒も英語を使う機会を増やすのは大切なことです。しかし、実はそれだけでは今より英語を使う量を劇的に増やすことはできません。ある研究によると、授業中にたくさんの言語活動を行っているように見える授業でも、生徒が実際に英語を話している時間を測ってみると、授業時間の2割程度にしかならないという調査結果が報告されています。

 

それでは英語を使えるようにならないのは、当たり前と言えば当たり前です。新学習指導要領に言われるまでもなく、授業で英語を使う割合を高めることは重要でしょう。そのためには、授業中のあらゆる場面で教師も生徒も英語を使うようにしたいものです。

 

では、どのようなことが「授業中のあらゆる場面」なのでしょうか。

 

(1) Teacher Talkを増やす

「授業中のあらゆる場面を英語に」の最初は、いわゆるTeacher Talkを英語にすることです。それによって、英語の授業は教師も生徒も英語を話すのだという雰囲気作りをします。"Teacher Talk"とは和製英語のように見えますが、立派な専門用語です。「対象言語に堪能でない人に、理解可能な簡略された言語で話すこと」と定義されています。

 

最も基本的な表現は教科書に載っているものから始めます。そして、いつも指示に使っていることば、つまりroutineは英語にしていきます。普段から英語を使っていない先生は、急に変えるというのは生徒の手前恥ずかしいかもしれません。しかし、それも最初の1時間だけのことです。生徒はすぐに慣れますから、ぜひとも実践しみてください。

 

(2) Student Talkを英語にする

いくら教師が英語を使っていても、生徒が英語を使わなければ意味がありません。いかに生徒に実際に英語を使わせるかが鍵となります。

 

最も簡単なスタート地点は、教師に何か用事があるときの表現を英語で言わせることです。本当に伝えたい用件を英語で言うわけですから、リアル・コミュニケーションの場面ともなります。例えば、「先生!」「教科書忘れました」「それって~ですか」「エアコン付けてください」などの発言があったときが指導を行う絶好の機会です。

 

・「先生」とか"Teacher!"と言ったとき

→ I'm not "Teacher."  Please say, "Excuse me, Mr. ~."

・忘れものをしたとき

→ Please say "I forgot my textbook./ I don't have my textbook."  

      "Can I go to my locker?"  

      "Can I share my partner's textbook?

・「エアコン付けてください」と言ったとき

→ Say "Please turn on the air conditioner?"

       "Could you please turn on the air conditioner?" 

 

また、授業の開始と終了の挨拶を生徒から始めるというのはどうでしょうか。おそらく多くの先生は"Hello, everyone!"と先に言っていると思います。また、曜日や日付の確認等をする際にも先生がそれらの質問文を言っていると思います。そえを生徒にさせるのです。

 

<附属中全教師が共通で実施している挨拶>

週番:Hello, Mr. Koinuma!

生徒:Hello, Mr. Koinuma!

教師:Hello, everyone.  How are you?

生徒:I'm good, thank you.  How about you?

教師:I'm good, too, thank you.

週番:What day is it today?

生徒:It's Monday.

週番:What's the date today?

生徒:It's June 1.

週番:How's the weather today?

生徒:It's sunny.

教師:Who is absent today?

生徒:Yuko is absent.

教師:Who else is absent?

生徒:No one else is absent.

※上記のリズムに合わせて言います。

 

この活動の効果は何でしょうか。例えば、それを週番あるいは日直などに交代でやらせれば、全員が質問することに慣れることができます。勤務校では4人の教員全員がこの方法で授業を始めています。また、平成30年の英語授業研究学会全国大会で見た小学校の授業でもこの方法が採られていました。公立の小学校でできていることですから、中学校でできないはずはありません。しかし、それ以上にこの活動は、授業は生徒が自ら発言することで始まるという意識を与えることに貢献していると思います。

 

明日からでも簡単にできることです。ただし、軌道に乗るまでには地道な指導が必要です。教師も生徒も授業で英語を使い慣れることで、実際の場面でも使えるようになります。この「使い慣れている」は実際に大切で、教師にも当てはまるものです。生徒に話すことの抵抗を無くさせるには、教師がまずその模範を示す必要があるからです。「生徒が英語を話そうとしない」という場合は、先生自身に原因があるかもしれません。まず先生が変わる必要があります。そうすれば生徒も変わります。それは筆者自身が実証済みです。そのことはまたどこか別のページで紹介することにしましょう。

 

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