『青天を衝け』と本校関係者(その2)

NHK大河ドラマ『青天を衝け』をみなさんはご覧になっていらっしゃるでしょうか。戦国時代の武将を描く作品とちがって、明治維新の頃を描く作品はあまり人気がないとされていますが(その最たる例が『いだてん-東京オリンピック噺-』であったそうです)、今回の作品も回を追う毎に面白くなってきたと思っています。『いだてん』もそうでしたが、歴史上の有名人物がそれほど出ていなくても、毎回見ていれば面白くなってくるものです。

 

同作品の主人公である渋沢栄一は、新しい1万円札の肖像画に使われることが決まってから一般人の間での認知度が俄然高まりましたが、筆者の地元・埼玉県では以前から“英雄”として知られています。ただ、筆者は同じ埼玉県でも渋沢の地元である深谷市とは正反対の県西南地区の出なので、恥ずかしいかな大人になるまで渋沢栄一が埼玉の出身であることを知りませんでした。昔から埼玉県には子供向けの「さいたま郷土かるた」というものがあり、その「に」のカードには「日本の 産業育てた 渋沢翁」と書かれているので、多くの小学生が渋沢栄一のことを「渋沢翁」として知っているようですが、筆者はこのかるたをやったことがなかったので、渋沢のことを知らずに育ってしまいました。

 

前置きが長くなりましたが、件のドラマと筆者の勤務校(以下「本校」)との関係は「87. 『青天を衝け』と本校関係者」で少しだけ触れました。もちろん、栄一は幼少期を血洗島(現埼玉県深谷市血洗島)で過ごしたので、本校(当時は東京高等師範学校附属中学校)の卒業生ではありません。しかし、栄一の子の代になると卒業生が出始めるので、この話題が成り立つというわけです。その話の元となっている『附属中学校・高校 卒業生列伝』(本校元副校長・山口正先生著。1号はA4判1枚で校内限定配付)は今年2月発行の第700号から「渋沢栄一伝」となっており、栄一についての話が第726号まで続いた後、第727号からはいよいよ本校の卒業生でもある栄一の孫・敬三(次男・篤二の長男)の話になります。まだ敬三の分は発行されていませんが、昨年度から本校にお勤めになっていらっしゃらない山口先生の代わりに筆者が列伝の未発行分(現時点で810号までできています!)を順次配付しているので、インサイダー情報として知っているというわけです。

 

山口先生から特別にいただいた渋沢栄一の詳細な家系図(栄一の孫の代まで入っている『渋沢家本支系図』)と、これまでに数千冊の本を読んでその内容がほとんど頭に入っているという「人間ハード・ディスク」(筆者命名)の山口先生の調査結果によると、その家系図の中だけで、本校の卒業生が計24名もいることがわかっています。概略は、栄一(演:吉沢亮)の子と孫が12人、栄一の伯父・渋沢宗助(演:平泉成)の曾孫(栄一の孫の代)が3人、栄一の親戚・尾高惇忠(演:田辺誠一)の孫(栄一の孫の代)が5人、その他の親類が4人です。該当の人物を家系図から抜き出してみると…

 

※氏名の後の[  ]数字は本校の卒業回数(「~回生」という言い方をする) 

<栄一の子> ※兼子(後妻)の子

① 渋沢武之助(四男)[14]

② 渋沢正男(五男)[15]

③ 渋沢秀雄(六男)[19]

※「~男」は夭折した子も含む数。以下同様。

<栄一の孫>

④ 穂積重遼(長女・歌子の長男)[10]

⑤ 穂積律之助(長女・歌子の次男)[11]

⑥ 穂積貞三(長女・歌子の三男)[13]

⑦ 穂積真六郎(長女・歌子の四男)[15] ※六番目の子で真六郎か

⑧ 阪谷希一(次女・琴子の長男)[16]

⑨ 阪谷俊作(次女・琴子の次男)[19]

⑩ 渋沢敬三(次男・篤二の長男)[24]

⑪ 渋沢信雄(次男・篤二の次男)[25]

⑫ 渋沢智雄(次男・篤二の三男)[29]

<栄一の姪孫(てっそん=大甥・大姪)>

⑬ 渋沢亨三(妹・貞子の長男・元治の長男)[40]

<栄一の孫の代>

⑭ 石黒忠篤(長女・歌子の次女・光子の夫)[10]

⑮ 高嶺俊夫(次女・琴子の次女・和子の夫)[12]

⑯ 秋庭義衛(次女・琴子の四女・千重子の夫)[18]

<渋沢宗助の曾孫=栄一の孫の代>

⑰ 諸井貫一(宗助の次女・さくの五男・六郎の長男)[22] ※六郎…四男・四郎との間に男子がいたか

⑱ 諸井桃二(宗助の次女・さくの五男・六郎の次男)[26]

⑲ 諸井三郎(宗助の次女・さくの五男・六郎の三男)[30]

<尾高惇忠の孫=栄一の孫の代>  ※惇忠の母・やへは宗助の次女

⑳ 尾高豊作(惇忠の次男・次郎の長男)[21]

㉑ 大川鉄雄(惇忠の次男・次郎の次男)[24]

㉒ 尾高朝雄(惇忠の次男・次郎の三男)[25]

㉓ 尾高鮮之助(惇忠の次男・次郎の四男)[28]

㉔ 尾高邦雄(惇忠の次男・次郎の五男)[35]

※上記5人の母・文(ふみ)は栄一の妾・大内くにの娘なので、5人は栄一の戸籍外の孫ということになる(12/28/2021追記)。

 

以上のリストを見ていただくと、よくもまあこんなに多くの卒業生が渋沢栄一の家系から出たものだという驚きと、よくもまあそれを調べたものだという山口先生への尊敬の念がみなさんにも湧いてくるのではないかと思います。孫の代まででこれだけの人数がいるわけですから、曾孫の代から現在まで入れたらいったい何人になるのやら…。

 

なお、件の『卒業生列伝』は抜粋判が一般書『卒業生列伝 日本の知性と感性』(山口正著、筑波大学附属中学校発行、1,500円)として販売されています。有名な卒業生としては、永井荷風(作家)、鳩山一郎(首相)、吉野源三郎(作家『君たちはどう生きるか』)、星新一(作家)、川口順子(女性初の外務大臣)、壇ふみ(女優)、野村萬斎(狂言師)などがあげられますが、総勢83名の卒業生が紹介されています。関心のある方はそちらをご覧になってみてください。ネットで探していただければ購入できると思います。(5/22/2021)

 

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