トイレの心理学

何やら怪しいタイトルをご覧になって、みなさんは何を想像しましたか? トイレの中で考え事をする? トイレについて研究する? いえ、そうではありません。これは今まさに巷で話題になっている「ソーシャル・ディスタンス」に関係することなのです。しかも、結構以前から知る人ぞ知る学問…というか、人間の心理について考える良い機会を与えてくれる話題なのです。そこで、今回は一般向けHP『目から鱗が落ちる英語学習』の「つぶやき」と同内容の同時アップです。

 

筆者がその存在を知ったのは、今から14年ほど前のことでした。勤務校で当時同じ学年担任団を組んでいた国語科の先生が、ある日の学年会で雑談中にそのことを話題にしたのがきっかけでした。初めて聞いたときは、筆者も「何だ、それ?」と思いました。しかし、中身を聞いているうちに「へえ~」と思うことがあり、「本当ですよ。ネットで調べればわかります。」とその先生が言ったことばを信じて調べてみると、実に面白い話であることがわかりました。

 

その「トイレの心理学」とは、簡単に言えば、「最もお互いに緊張感を感じずに利用できる便器の位置はどこか?」ということを真面目に論じたものです。例えば、次のように男性用便器(女性用の個室でも良い)が並んでいて誰もいなかったら、どこを使うのが最も良いかというものです。

 

←入口 ① ② ③ ④ ⑤

 

上記の答えは⑤です。それは次に使う人がそこから最も遠い①を選べば、互いの距離を最も遠くして緊張感を最小限にできるからです。特に、用を足し始めたら無防備になる(失敬!)男性にとって、これは重要なことです。一見すると①も同様に感じられますが、こちらは入口に近いので、そこを使うと自分の後ろを次の人が通るので不安を感じます。同様に考えていくと、上記の配置では⑤→①→③→④→②と埋めていくのが理想的だということになります。

 

これは電車の座席等についても同様のことが言えます。通勤・通学に電車を使っている方はご存知のとおり、たいていは座席の両端から人が座っていき、次に両者の中間、そして残りというように埋まっていきますね。これは以前から人々が無意識に、いや意識的に、ソーシャル・ディスタンスを考えて座っているからです。そして、それは今回のコロナ禍でより強く意識されるようになりました。

 

この話は、電車通学をする生徒が多い筆者の学校では、生徒に通学中のマナーについて考えさせるのに格好の題材であると考え、筆者は担任学年の3年間のどこかでこの話を生徒に持ち出し、彼らに通学中のマナーについて考えさせるようにしています。ちなみに、その実践例は「終礼の話」のコーナーの「終礼の話」では「53. トイレの心理学」、「続・終礼の話」では「68. 続・トイレの心理学」として、自分の生徒に話したときのやりとりの記録をすでに公開しています(すでに本「つぶやき」でも「18. 生徒がよく食いついた同じ話を2つの学年で話した例」として紹介しました)。この話題をどのように生徒にもちかけ、生徒がどのように反応したか等を読み取っていただけるでしょう。

 

みなさんもぜひこの「トイレの心理学」について仲間と話題にしたり、生徒に話を振ったりしてみませんか? もっとも、大人の女性を含む集団では話題の出し方が難しいですが…(笑)。(5/23/2020)

 

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