巨星逝く

数日前の新聞の社会面に、英文学者・言語学者・エッセイストとして有名な外山滋比古(とやましげひこ)先生がお亡くなりになったという記事が載っていました。享年96歳であったそうです。先生は、東京教育大学、お茶の水女子大学、昭和女子大学で教鞭を執られた大学教授ですが、ご自身の専門分野の書籍だけでなく一般書も多く(計150冊以上)書かれていたので、むしろ「エッセイスト」として多くの人に認識されていた方だと思います。特に、累計で250万部以上のベストセラーとなった『思考の整理学』(1983)は、10年ほど前に「東大・京大で一番読まれた本」としても有名になりました。

 

筆者が大学生であった約40年前の時点ですでに言語教育関係の著書がいっぱいある有名な先生で、お名前の漢字がとても珍しかったこともあって、ずっと頭の中にお名前が残っており、テレビのインタビューなどでお顔を拝見することもあったので、自分にとっては「有名な作家さん」のような存在の方でした。しかし、実は外山先生と筆者にはある接点がありました。

 

外山先生の経歴をWikipediaなとで調べても書かれていませんが、実は外山先生は昭和22年から同24年まで筆者の勤務校の教官(英語科)をしていたのです。つまり筆者の大先輩です。昭和22(1947)年は先生が東京文理科大学(現・筑波大学)を卒業された年でもあるので、大学を卒業してすぐに奉職したようです。そのことは勤務校の記録に残っていますし、みなさんにはそれを本ホームページ内の「英語科教官列伝」で確認していただくことができます。そして何よりも、筆者は勤務校関係者同士として外山先生にお会いしたことがあるという事実が、筆者の大先輩であったという証拠です。

 

勤務校には、OB教官(教員)で構成される「桐朋会」(とうほうかい)という組織があるのですが、その平成25(2013)年度総会に外山先生がお出でになっていたのです。桐朋会は現役の教員はなかなか敷居が高くて参加できない会なのですが、ちょうどその年に研究部長となった筆者は総会で勤務校の現在の様子を紹介する役目を仰せつかり、その年だけ参加しました。その懇親会で外山先生とお会いし、直接お話もさせていただいたのです。

 

当日会場で先生をお見かけしたときは、大変失礼ながら「えっ?あの外山先生?まだ生きていらっしゃったの?」と思いました。計算すると、そのとき先生はすでに89歳になられていたわけですが、そんなご高齢であるとは微塵も感じさせないほどお元気でした。先生に自分のことを紹介すると、先生は「あなたは18年も附属中にいるのかね?そんなに長くいたらいかん。早く大学へ出なさい。」とおっしゃいました。

 

いらっしゃることが事前にわかっていれば、ご本を持ってきてサインしてもらったのに…と思ったものです。ただ、先生と筆者が会話をしている場面を当時の副校長が撮ってくれた写真があり、それが私にとって宝物となっています。

 

先生、どうやら私は定年まで附属中にいることになりそうです。

 

ご冥福をお祈りいたします。(8/8/2020)

 

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