ついに来た…

Nory: ついに来た…。

Daughter: 何が?

N: だから、ついに来た…。

D: 何が来たって言うの? 楽しいこと?

N: それなら「来た!」ってビックリマークを付けるだろ。

D: ああ~、もう夏休みの終わりが近づいて、憂鬱になったってことね。

N: ちがう。

D: だから、何よ?

N: シュワ、シュワ。

D: 耳が聞こえない人?

N: それは「手話」。

D: オヤジギャク言ってんじゃないの!

N: お前が変なこと言うからだ。

D: シュワルツェネッガー?

N: それは「シュワちゃん」。お前もオヤジか?

D: いい加減にしてよ。何なのよ?

N: セミ。

D: セミ? あの、ミーン、ミーン?

N: それはミンミンゼミ。

D: どこがちがうのよ?

N: クマゼミ。

D: なんか、強そうだね。

N: そうだろう。でかくて、真っ黒なヤツなんだ。

D: それが「シュワ、シュワ」って鳴くの?

N: そう。だけど、見かけがクマみたいに黒くてでかいからクマゼミ。

D: それのどこが悪いの? お父さん、ムシ大好きじゃん。ついこの間もカブトムシを見つけて大喜びしてたじゃない。

N: いや、いや…。こいつはちょっとちがう。

D: どこが? "G"みたいにすばしっこいとか?

N: ちがう。騒音。うちらみたいな関東の人間には関係ないと思っていたら、ついにやってきた。

D: ついに…って。そんなにうるさいの?

N: お前、しょっちゅう大阪とかに出張に行ってて、聞いたことないのか?

D: ほかのセミと区別がつかない。

N: ほんとかよ。お父さんが大阪城公園に行った時なんか、クマゼミの泣き声で頭が痛くなったよ。

D: また、大げさな。

N: ああっ!信じないのか? もう何年も前のことだけど、確か兵庫県の教員採用試験で英語のヒアリングテストがクマゼミの泣き声がうるさくて聞こえないと受験者からクレームが出て、合否判定からはずすことになったって新聞なんかで話題になったくらいなんだぞ。

D: へえ~。それで?

N: それがついにこっちにもやって来た。

D: そうなの?

N: 以前は東京にはまだいないと思っていたけど、数年前から朝のNHKニュースのお天気お姉さの山神さんのバックでシュワシュワ聞こえるから、渋谷にいることはわかっていた。

D: それで?

N: なんと、3年前にはもう少し東にあるお父さんの学校の木でも鳴いていたのを初めて聞いた。

D: お父さんの学校は都心にあるのに緑が多いもんね。

N: そうなんだよ。毎年夏にはミンミン、ジージー、ニーニー、カナカナ、ホーシンツクツクって大合唱さ。

D: ミンミン以外がわからない。

N: アブラゼミ、ニイニイゼミ、ヒグラシ、ツクツクホウシ。

D: あ、そ。

N: でも、シュワシュワは3年前に一度聞いただけで、その後は鳴いていない。今年も聞いてない。おそらく、オスが一匹で鳴いていて、卵を産んでないのか、まだ幼虫がかえってないのか。

D: なら、いいじゃん。それがなんで「ついに来た」なの?

N: 数日前に自宅で聞いた。

D: えっ? うちでってこと?

N: そうだよ。向こうの方にある木で鳴いてた。

D: シュワ、シュワって?

N: そうだよ。ついに埼玉まで北上してきたってわけさ。

D: でも、一匹だけだよ、きっと。

N: それが怖いんだよ。

D: どうして?

N: クマゼミって大繁殖するんだよ。

D: そうなの?

N: 以前にNHKの朝のニュースでやってたんだけど、大阪のある場所にある一本の大木に「ここには約3,000匹のクマゼミがいます」なんてレポーターが言ってた。

D: 一本に3,000匹? それじゃあ、木の幹をおおいつくしているアブラムシみたいじゃん。

N: そうなんだよ。それがみんなでっかいクマゼミなんだぜ。

D: ひえ~!

N: ようやく飲み込めてきたみたいだな。まだ、関東の人間のほとんどがその怖さを知らないけど、ヤツらが大繁殖したら、大変なんだぞ。駅前の木にムクドリの大群が夜集まっていてうるさいけど、あれよりもっとすごいことになる。

D: お母さんなら卒倒しちゃうね。

N: まあ、そうだろうな。

D: これ以上増えないといいね。

N: そう祈ってるよ。

 

Nory(筆者)と Daughter(娘)の会話でお送りしました。ここに書いたことは本当の話です。関東以西の人にはなじみがあるであろうクマゼミですが、関東以北の人間には未知(未聞・未見)の虫です。ところが、ここ数年の猛暑のせいか、クマゼミは確実に東征・北征を続けているようなのです。数年後には関東でも当たり前の存在になってしまうのかもしれません…。

 

なお、実際に娘とこんな会話をしたかどうかは定かではありません。今回は今までとまったくちがうテイストの話でした(笑)。(8/20/2019)

 

【追申①】

勤務先の最寄りの駅から地下鉄で3駅東京寄りのところに行ったら、複数が「シュワシュワ」言っていました。確実に近づいているようです。(8/23/2019)

 

【追申②】

朝7時に勤務先に行くと、正門に向かう敷地わきの道路で元気のよいミンミン、ジージー、ニーニーの大合唱に迎えられました。ところが、準備室で朝食をとっていると、「シュワシュワシュワシュワ…」。あ~あ、3年振りに聞いちゃいました。このまま勤務先の雑木林もヤツらに占領されるのかなあ…。(8/31/2019)

 

【追申③】

朝7時に学校に着くと、例年聞き慣れたミンミン、ジージー、ニーニーの大合唱の中に1匹だけシュワシュワが…。ああ~、今年もいたか…。もう定着がほぼ決定的ですな…。(8/3/2020)

 

【追申④】

朝8時40分に時差登校で登校してくる生徒たちの検温をするために生徒用玄関の前に立っていると、玄関横の大木からミンミンゼミとアブラゼミの声にまじって「シュワシュワシュワシュワ…」この声を学校で聞くのは今年4回目。ああ…、もう、うちの学校にも奴らが根付いてしまったか…。(9/1/2020)

 

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