1.生徒が聞く耳を持たない話の典型

ここでは、残念ながらそのような話をしていては生徒は聞く耳を持たないだろうという典型的な例を紹介します。もしかしたら、先生方も生徒に話していることかもしれません。しかし、それがなぜダメなのかということは、最後まで読んでいただければ納得していただけるでしょう。

 

例えば、「生徒にしっかり挨拶をさせたい」という状況があった場合、先生は生徒にどのように話すでしょうか? かつての筆者やときどき出会う“あるある”の例にとって見てみましょう。

 

(1) ダメな例①…「みなさん、挨拶は大切です。もっとしっかりしましょう。」

これのどこがダメなのでしょうか? 至極当たり前のことを言っているように思えますし、内容的にまずいことはどこにも見当たりません。しかし、実はこの話には生徒の心を動かすような要素がまったくありません

 

それは、生徒も「挨拶は大切だ」とか「挨拶はしっかりした方がいい」ということくらいはわかっているからです。ですから、ただ「挨拶は大切です」、「もっとしっかりしましょう」などと言っても、何の効果もありません。一方、どうして大切なのかということまでは、大人や教師が話してあげないと認識できていない場合がほとんどです。したがって、ここではなぜ挨拶をすることが大切なのかという話を入れる必要があります。ただし、それもただ漫然と説明するだけでは生徒は聞いてくれません

 

当たり前のことを何の工夫もなく話す教師の話には生徒は耳を傾けようとしません。そして、いつもそのように話すことが当たり前になっている教師に対しては、教師が教卓のところで話す準備をしていたとしても、「どうせまたつまらないことを言うだけだろう…」という潜在意識が働いて、顔をこちらに向けようとはしません。さらに、「お前の話なんか聞く気はないね」という意思表示をするために、仲間とおしゃべりを始めることもあります。かつて筆者も自分のクラスの生徒にそのような態度をとられていたことがあります。きっと生徒たちは筆者の話など聞きたくなかったのでしょう。

 

(2) ダメな例②…「先生が挨拶しているんだから、お前たちもしっかり挨拶しろ!」

これはよく教師が言うことばですね。特に、すぐにカッとして声を荒げる先生に多い発言です。また、運動部などで礼儀を教える際によく用いられる方法かもしれません。筆者も若い頃は言っていたように思います。実際に、これによって生徒がハッとしてしっかり挨拶をするようになることもあるかもしてません。しかし、この発言が生徒を威圧するような声の大きさと態度で発せられているものだとしたら、表面的には指示に従っているように見えても、生徒の心を真に動かすものにはなっていません。

 

もちろん、この発言が単に「教師が目上で生徒が目下なのだから、目上の人には礼儀を示せ」ということを言おうとしているものではないのはわかっています。きっと、「相手が挨拶をしたら自分も挨拶をするのが礼儀だということをわきまえておいた方がいいぞ」ということを親心のようなつもりで伝えたいのだと思います。

 

しかし、教師が立場の強さを利用して生徒を屈服させるような話し方をすると、生徒(特に中2以上の生徒)は表向きは聞いているような素振りをして、裏では舌を出すようになります。上記の場合、どうやら「先生が…だから」と「お前たちも…しろ!」がいけないようです。この2カ所によって、生徒は「先生はそんなに偉いのかよ!誰が挨拶なんかしてやるか!」という反発心を起こします。良かれと思って言ったことがかえって反発を招いてしまうことになるのです。

 

せっかく大切なことを伝えたいのに、言い方がまずくては生徒にそれが伝わりません。このような発言を繰り返していると、生徒は「どうせ先生はまた俺たちのことをバカにしたことを言うんだろう」とか「どうせ先生はまたどなるんだろう」と思ってしまい、先生の話を聞かなくなります。悪くすれば、何か言う度に反抗的な態度を取るようになります。

 

では、何をどのように話したらいいのでしょうか。それは次項でお話しします。

 

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