十二人の怒れる男

英語教師のみなさんは、多くの方がきっと洋画を観るのも好きでしょう。そして、みなさんにはきっとお気に入りの映画があるはずです。筆者はこれまでに『スター・トレック』のことを何度か取り上げていますが、これまでに観た映画の中で一番だと思っている作品は他にあります。それはタイトルにある『十二人の怒れる男』12 Angry Men, 1957)というアメリカ映画です。日本でも裁判員制度というものがありますが、この映画はアメリカの陪審員制度について描いた作品で、正義に対するアメリカ人の考え方がよくわかる作品です。

 

おそらく中年以上の先生方の中にはこの作品のファンの方もいらっしゃるでしょうが、若い先生方は知らない人もいるかもしれませんね。この映画は全編が小さな一部屋で撮影されたという設定がユニークな作品です。唯一途中で男子トイレの会話シーンと最後に裁判所の外観が出てくる以外は、一部屋にいる12人の男性たちの会話だけで構成されている地味な作品です。しかし、筆者以外にも「№1の映画」だと言う人がけっこういます。三谷幸喜が『12人の優しい日本人』というパロディ映画を作ったことがあることからもその人気のほどがわかるでしょう。

 

筆者が最初にこの作品を観たのは高校生のときでした。確か日曜日の午後で何もすることがなくてテレビをつけたところ、何やら白黒の地味な映画をやっていたので、なんとなくボーッと見始めました。画面の中に有名なヘンリー・フォンダが出ていたこと、後にテレビや映画の主演や脇役として有名になったマーティン・バルサム(『オリエント急行殺人事件』)、リー・J・コッブ(『エクソシスト』)、ジャック・クラグマン(『DR.刑事クインシー』)、ジャック・ウォーデン(『ナイル殺人事件』)などのよく見る俳優がたくさん出ていたのが見続けた理由だったと思います。ところが、観ている間にどんどん話に引き込まれ、見終わった時にはなんとも言えない感動を覚えました。そして、この時に感じたことは、その後の筆者の人生観に大きな影響を与えました。

 

教員になってからは、中学校2年生あたりの道徳や学活の時間を使ってこの映画を自分の生徒に見せることが多くなりました。学年全員に2時間をかけて一気に見せたことも何度かあります。それは、中2という生徒のメンタリティーを考えてのことです。つまり、自我が芽生えてなんとなく低きに流れやすくなった生徒の気持ちを前向きにしたいからです。

 

そんな『十二人の怒れる男』を都内で舞台でもやっているということで(元々はアメリカの舞台劇でした)、先日妻と息子がそれを観てきました。大学の法学部に通っている息子にこれまでこの作品を見せていなかった父親の代わりに、息子と趣味を共有する母親が舞台劇という形で見せようと思ったからにちがいありません(妻からそう聞いたわけではありません)。

 

見終わった後に息子に感想を聞くと、「面白かったよ」の一言でした。筆者とちがって無駄なことはしゃべらない性格の子なので、まあそんなところでしょうか。学校の自分の机に同作品のDVDがあるので、近いうちに映画版を家族で見ようと思っています。未見のみなさんはぜひご覧になってみてください。(10/10/2020)

 

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