【第2学年】(はじめに)

※自分で印刷した冊子版の第3巻・第4巻・第5巻の「はじめに」を再編集

 

最初の9話(第24話~第32話)は、2年生になってクラス替えをした直後から夏休み前までのものですが、ここで私が直面したのは、それまでの指導をそのまま踏襲していればよいというものではないことでした。その最大の理由は、新たに担任した2年生のクラスの生徒は、1年生の時のように幼稚な笑いを取るような話しかけ方ではあまり積極的に話に乗ってきてくれなかったからでした。また、他のクラスから来た生徒が、返事を期待するような新しい担任の話しかけにどのように対応したらいいか迷っているようでした。そこで、新しいクラスの生徒の実態に合わせて私も新しい対応をしようと、話し方や話す内容を少し変えてみることにしました。具体的には、言葉遣いを少し丁寧にして大人扱いするようにし、話す内容や導入方法も生徒の知的好奇心をくすぐるようなものにしようと努めてみました。すると、機会を追う毎に新しいクラスの生徒達も心を開いて話に乗ってきてくれるようになりました。もちろん、それは終礼における話の仕方だけが原因ではなく、クラス替えから時が経つにつれて、学校生活全般における付き合いをとおして、自分と生徒達の人間関係が徐々に深まっていったということもあったでしょう。

 

中盤の7話(第33話~第39話)は、一般的に最も生徒指導が難しいと言われる中学校2年生の2学期にあたる期間のものです。この時期の生徒は、学校生活への慣れから生じる、いわゆる「中だるみ」現象が目立ち始め、また思春期独特のいらだち感から精神的に不安定になる生徒も多く、結果として学級や学年の生活全般がマイナス方向に動きやすい時期でもあります。したがって、生徒の心の変化を敏感に感じ取りつつ、短期的にも中・長期的にも学校生活における目標を持たせ、心を落ち着かせてあげる必要があります。そのような点から、この時期の生徒に学級担任がどのように向き合い、彼らをどのように導いてあげられるかということはとても重要なことだと言えます。幸い、本校では9月に運動会と前期期末考査、10月に前期終業式及び後期始業式と学芸発表会(文化祭)、11月に研究協議会と委員長陣(生徒会役員)選挙と後期中間考査、12月に合唱発表会、と行事が間断なくあり、それらを上手に利用すれば、生徒を節目節目で大きく成長させることができます。そのようなこともあり、この間の7話はそれらの行事と密接に関わったものになりました。

 

終盤の8話(第40話~第47話)は、一般の中学校では2年生の3学期にあたる期間のもので、本校では私が担任する2年生が3年生から生徒会活動などの学校生活全般を引き継ぎ、試行錯誤を重ねながら忙しい日々を送り始めた時期のものでした。特に、私が担任するクラスには運動部の主将や研究会(文化部のこと)の責任者、生徒会の委員会・係の責任者が大勢おり、それぞれが自分の担当する分野で活躍していました。それ自体はとても嬉しいことであるのですが、学級経営の観点からすると学校全体の動きに多くの優秀な生徒を取られてしまったことになり、結果的に学級のことまで気を配る余裕のない生徒が多い集団の舵取りをしなければならなくなりました。また、生徒の精神レベルが一段と大人になり、それぞれが自分の判断で行動できる範囲が広がったことで、学級担任の言動によって生徒の行動をコントロールできる割合が一段と低くなりました。これらのことは学級活動や終礼時の生徒の言動にも表れており、それらの1つ1つに対応していった軌跡が残されています。なお、最後の第47話は、東日本大震災で学校宿泊や下校困難を経験し、その後の生活への不安感などをもっていた生徒の心のケアをするための1つとして話したものでした。

 

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