◇まえがき-本書作成の主旨-

前著『では、最後に先生のお話です。-「終礼の話」をとおして培った生徒との絆の記録-』を自費出版してからちょうど4年、この度その続編にあたる本書を発行することができました。お陰様で前著は500冊(初刷200冊、増刷300冊)製作したものがすべてはけるほど関係者に好評をもって受け入れていただき、こうして2冊目を製作するに至りました。

 

そもそも前著を発行したのは、自分が教師として成長してきた証を残すとともに、その記録が生徒指導-特に学級指導-に悩んでいる全国の先生方に勇気を与えるられるのではないかという思いからでした。前著の「まえがき」にも記しましたが、今から28年前に高校教師から中学校教師に転身した私は、当初中学生をどのように育てたらいいのかがわからず、特に自分のクラスの生徒たちとの信頼関係の構築があまり上手ではない教師でした。それが15年ほど前のあることがきっかけで大きく改善されました。現職を続けながら通っていた大学院の修士論文のために全国の英語授業名人を訪ねた時に、彼ら「名人」たちに共通していていて自分に一番欠けていたのは、生徒同士の人間関係作りを何よりも大切にすることと、それを可能にする生徒と教師の信頼関係を構築することだと気づいたのです。そこで、直後の学年から自分の生徒指導に対する考え方と実際の指導を生徒の気持ちを第一に考えたものに変えました。そうしたところ、その指導を始めた学年(平成17年度入学)で初めて3年間をとおして生徒と自分の間に良好な信頼関係が築けたと感じられ、自分のクラスからいじめなどの深刻な問題も起こらなくなりました。それは次に担任した学年(平成21年度入学)でさらに進歩しました(その時の指導の様子を記録したのが前著です)。そして、今回担任した学年(平成25年度入学)で自分としては過去最高の学級経営ができたと感じています。

 

その状況を実現した指導の1つが学級担任による「終礼の話」です。担任の話と言っても、教師が一方的に話すのではなく、常に生徒に発言を促しそれを捉えて話を進める手法を採るものです。その指導をとおして、生徒と教師及び生徒同士の良好な人間関係を構築することができました。もちろん、良好な学級経営ができるようになったのは「終礼の話」のお陰だけではないと思います。おそらくは、そのようなことをしようとする意識があらゆる教育活動を変えたからでしょう。該当する具体的な指導内容は紙幅の関係で割愛しますが(多くは本書の中で読み取れます)、それらのすべてをとおして生徒たちは担任が彼らを心から愛していることを感じ取っていたようです。そのような環境下では生徒たちは安心して学校生活を送れるので、問題も起こしません。すると教師も生徒を叱ることが少なくなり(もちろん必要があれば叱ります)、結果的に生徒と教師の信頼関係が良好になります。それらの指導の効果には、直近3回・計9年の学年・学級指導を終えて確信に近い自信を持っています。

 

今回の「終礼の話」も、前回同様に年3回の長期休業毎に小冊子としてまとめ(3年間で計9冊発行)、同僚、研究会・研修会の参加者、来校した研修者、他大学で教える大学生、前著の愛読者さん等に無料でさしあげてきました。その実践記録が本年3月に発行した分をもって一区切りついたので、それをきちんと残すべく再び1冊の本にまとめてみました。

 

最後に、3年間一緒に学年指導をしてくださった担任団の先生方、この実践をいつも温かい眼差しで応援してくださっていた英語科の先生方には心から感謝いたします。

 

  平成28年4月吉日