46. はっきり言っておきたいこと

【きっかけ・ねらい】

今回の話は、3年生前期の学級委員がなかなか決まらなかったことに関して、まとめのことばとして生徒に渇を入れたかったことから考えたものです。

 

本校では、2年生から3年生に上がるときにクラス替えがないため、3年生の委員・係決めを2年生最後のHRHで行うことが慣例となっています。最初に学級委員(男女各2名)を選挙で決め、その後に保健委員、図書委員、議長団も選挙で決め、最後に残りの学級の係を希望優先で全員に割り振ります。過去の経験では、3年生前期の学級委員は定員以上の立候補者が出る激戦区になるはずなのですが、今回は女子1名がようやく出ただけで推薦も出ず、2時間をかけても学級委員が決まりませんでした。そこで、終礼を延長して何とか推薦者を出させ、どうにか選出することができました(他のクラスもほぼ同様の様子だったようで、学年全体の傾向のようでした)。さらに、翌日の通常授業を1時間つぶして残りの委員・係を決めましたが、そのときも我先に仕事の楽な係になろうとする者が少なからずおり、4月から新1年生を迎える最上級生になる生徒たちの担任としては、そのまま放っておけないという思いがありました。

 

【手順・工夫】

いつもであれば、生徒が話に乗って来やすいような話題から入るのですが、今回は伝えたいことをストレートに話すことにしました。また、翌週に予定されている2つの奉仕活動(ワックスがけ、音羽の坂の掃除)への積極的参加の呼びかけにつなげようと思いました。

 

ただ、このような予想外の事態に最初は自分自身がややあわててしまったこともあったので、最後にまとめとして話す話し方としては、口調を落ち着いたものにして、生徒を必要以上に萎縮させたり不安にさせたりしないようにしようと思いました。

 

【実際の会話】3/5

T:いつもならみんなに話をよく聞いてもらおうと余計なことも話すのですが、今日はこの2日間で先生が感じたことを率直に言いたいと思います。

S:(ほぼ全員がやや緊張した顔でこちらを見る)

T:はっきり言って、先生はこの2日間の君たちにがっかりしています。

S:(緊張が高まった顔になる)

T:その理由の第一は、昨日のHRHで学級委員がなかなか決まらなかったことです。確かに、このクラスにはすでに委員会の責任者や部活の主将になっている人がいっぱいいて、忙しい人が多いのはわかっています。でも、先輩達はそれでも何とか頑張った。それに、他に余裕のある人もいっぱいいたはずです。また、推薦がなかなかでなかったのも気になりました。すでに忙しい人を推薦するのはその人に悪いという気持ちが働いたのでしょう。とても仲がいいみなさんの間での気遣いだったのだと思います。でも、推薦された人がほとんどみんな実質的に断るようなことを言ったのが先生には残念でなりません。以前のみんなだったら、「みなさんが推薦してくれるのならやってみます」と立候補に切り替わったのではないでしょうか。

S:(推薦されたのに断った生徒数名が下を向いている)

T:それから、先程の今日の反省では議長さんが「今日はみんながよく協力してくれたので係決めがスムーズにできました」と言っていました。

A子(発言した議長):(自分の発言がどう扱われるのか心配な顔をしている)

T:先生もそれは同感です。

A子:(ホッとした顔になる)

T:ただ、中身を見てみるとどうでしょうか? こういう言い方を先生がするのはあまりよくないかもしれませんが、「この係は仕事が少なくて楽だ」と思われている係ばかりに希望が集まっていました。

S:(該当生徒がばつの悪さからニヤニヤしている)

T:その上、「~が一番楽だ~!」とか「~だったら仕事がなくていいじゃん」などということばが飛び交っていました。

B男(最後まで大声でそれを言っていた生徒):(恥ずかしそうに下を向いている)

T:いったい、みんなはどうしたんだろうか? つい2ヶ月ほど前には、先輩から指導学年の立場を譲り受けて、「自治活動を頑張ります」とか「みんなのために何か役立つことをしたいと思います」とか言ってたんじゃなかっただろうか? あれはその場かぎりのいい加減なことばだったのか? それとも、あの時の気持ちをもう忘れてしまったのだろうか?

S:(下を向いている生徒とこちらを見つめている生徒が半々)

T:あと1ヶ月もすれば新1年生が入学してくる。その時にみんなは胸を張って「3年生です」という態度がとれるんだろうか? 少なくとも、みんなが1年生のときの3年生、今の高1の人たちはもっともっといろいろなことに積極的にチャレンジしていた。みんなもそれを見て、「3年生ってすごいなあ」と思ったはずだ。

S:(下を向いている生徒が増える)

T:(興奮してきたためか、次のことばが出なくてしばらく沈黙する)こんな状態のままでいいのかな? 「自治活動が盛んな学校です」と言っている本校の3年生として情けなくないか?

C男(副委員長):(うなずいている)

T:決まったことは決まったことだから、先生は何もそれをもう一度やり直せと言っているわけではない。決まったからには、自分ができることを一生懸命やってもらいたい。いいですか?

S:(半分近くの生徒がうなずく)

T:では、これから来週みなさんにやってもらわなければならないことを言います。どれも順番で回ってきたものですから、しっかりとやってください。

S:(多くの顔が上がり、真剣に聞いている)

T:1つは、昨日やるはずだったワックスがけです。昨日は終礼が延びて中止せざるをえませんでしたが、今日も終礼後はすぐに下校しなければならないので、来週やることになります。ただ、来週のスケジュールを見るとかなりつまっているので、月曜日の放課後にやるしかなさそうです。ワックスとモップの準備を用務員の〇〇さんにお願いしなければならないので、OKであれば月曜日に改めて連絡します。

S:(今日やらなくて済んだという安堵の表情を浮かべる)

T:もう1つは、音羽の坂の掃除です。3月は5組が担当なので、これもできるときにやっておきたいと思います。前回は大勢の人が参加してくれましたが、今回もお願いします。それで、いつやれるかというと…(手帳を見る)、水曜日の昼休みしかなさそうですね。放課後はみんなも部活動があるだろうから、今回も昼休みにやりましょう。

S:(真剣に聞いている)

T:どちらも、基本的には当番ではなく、ボランティアでやろうと思います。音羽の坂の掃除ですが、水曜日の昼休みに会合等があって参加できないことがわかっている人はどのくらいいますか?

S:(7~8名が手を挙げる)

D子(卒業生歓送行事準備小委員会副責任者):ソツカン(=卒歓)は会議があるよ。

E男・F子(同委員):(D子に言われて手を挙げる)

T:じゃあ、その他の人は基本的に大丈夫ですね? 現時点で手伝ってくれようという人はどのくらいいますか?

G男:(さっと手を挙げる)

T:えっ? G男くんだけですか?

S:(さらに5~6人が手を挙げる)

T:(手を挙げた生徒の少なさに少しがっかりするが、すぐに気を取り直して)そうですか。実は今朝登校途中で坂を見たところ、今回は落ち葉がほとんどないので、そのくらいの人が手伝ってくれれば大丈夫でしょう。今手を挙げてくれた人はよろしくお願いします。では、今日はこれでおしまい。

 

【こぼれ話①】

今回はタイトルを「言わなければよかったこと」にしようかと思ったほど、話を終えた後に後味の悪い思いをしました。それは、話し始める前には冷静に事の次第を分析し、次への第一歩を踏み出すための呼び水にしようと思っていたのですが(【手順・工夫】参照)、話している間に気持ちが高ぶってきて、結果的にかなり感情的な話し方になってしまったからでした。したがって、自分が話をしたことが生徒によい刺激になったというよりは、事態を益々悪い方向に向けてしまったのではないかという思いにかられてしまい、精神的にぐったりと疲れてしまいました。

 

加えて、他のクラスでも学級委員のなり手が少なかったのは、HRH委員として2年生後期学級委員をまとめて指導した自分のせいではないかという強迫観念が浮かんできました。前回の学年では、同様のことをしてその中から新たなリーダーを発掘することに成功したという達成感があったので、今回の学年ではさらにきめ細かく指導をしたつもりだったのですが、そのことがかえって「学級委員は大変だ」という印象を学年全体に広げてしまったのではないかと自分を責める気持ちが強くなりました。

 

【こぼれ話②】

本校では学級委員が生徒の座席の原案を考えるという慣例がありますが、今回新たに選出された4人の学級委員は、平素の生活態度と選出時の事情から、それをやらせられるかどうか不安がありました。そこで、翌日の係決めの最中に廊下に呼び出し、学級委員としての自覚が目覚めているかどうか問いました。そうしたところ、推薦で選ばれた者も含めて4人全員が学級委員としてやっていく心構えはできているということでした。そこで、4人にそれを任せることにしたところ、翌週から熱心にその作業に取り組み始めました。

 

ところが、嫌なことは続くものです。これは就任3日目の昼食時のことだったのですが、欠席した生徒が2名いたところ、こともあろうに学級委員の女子2名が勝手に欠席した生徒の座席に移動して楽しそうにお弁当を食べていました。その光景に激高した私はその場で2人を注意して元の席に戻し、その後に学級委員4人を集めて、「現在行っている作業を凍結する。その原因は君たちにあるが、それは何だかわかるか?」と尋ねたところ、その件が原因であることにまったく気づいておらず、トンチンカンな答えが返ってきました。そこで、「以前から席移動に関しては何度も注意してきたはずなのに、それを今日は学級委員である君たちの中の2人がやっていた。ルールやマナーが守られていないときはそれを注意する立場にある学級委員が自らそれを破り、しかもそのことについて反省していないということは、君たちがまだ学級委員としての心構えができていなということだ。したがって、現在の作業を中止する。君たちの生活態度が学級委員としてふさわしいと感じられるようになり、かつ君たちがその作業をやらせてほしいと望むのであれば、また再開させよう」と話しました。さすがにここまではっきり言われたので、当該の2名の女子学級委員はかなりすまなそうにしていました。ただ、彼女たちの生活態度がそう簡単に改善されるとは思っていなかったので、席替え作業が停滞してしまうことを覚悟しなければなりませんでした。

 

【こぼれ話③】

音羽の坂の掃除は予定どおり水曜日の昼休みに行い、5名(男子1名、女子4名)が参加してくれました。厳選された(?)心ある5人であったこともあり、とても一生懸命やってくれたので、ほとんどゴミが落ちていなかったことがかえって申し訳ないくらいでした。

 

一方、月曜日の放課後に行うはずだったワックスがけは、季節外れの降雪で中止せざるをえなかったので、木曜日の放課後に行いました。しかし、これまでのいきさつがあったためか、なかなか積極的に手を挙げて手伝いを申し出るという生徒がいませんでした。そこで、日頃あまり仕事を与えていない担任広報係、環境整備係、運動用具係に手伝ってもらうことにしました。そうしたところ、指名された生徒はみんないやがることなく、熱心にやってくれました。やはり、精神年齢的に「はいっ!はいっ!」と申し出る段階は過ぎており、頼まれればやるという気持ちになっていたのかもしれません。

 

なお、②で話題にした学級委員女子2名は、作業を始めると自ら手伝いを申し出てきました。そして、作業終了後に2人そろって私のところに来て、片方の女子(合唱発表会の責任者を務めた女子。彼女とのやりとりは、「37.第4の段階-合唱発表会に向けて②」参照)が、「席替えの作業凍結の件はそのままでもけっこうですが、昨日のことについては誤りたいと思って来ました。どうもすみませんでした」と反省のことばを口にしました。そこで、「昨日の今日のことだから、君たちが本当に反省しているのかどうかはわからない。ただ、自らこうやって謝りに来たのは認める。作業を再開するかどうかはもう少し君たちの行動を見させてもらってから判断する」と言ったところ、「はい、わかりました」と素直に言って戻っていきました。就任直後の学級委員に対して厳しい指導をすることは彼らをつぶしてしまうかもしれないリスクを追うことでもありましたが、こちらの気持ちが少しは伝わったかなと思えるできごとでした。ただ、もう1人の女子の方は一緒に着いてきたという感じで、本当に心から反省して、それを素直に行動に表せるかどうかはまだわかりません。あるいは、過去に人のために働くという経験をあまりしたことがないので、どう行動していいのかわからないのかもしれません。以前から言動が気になっていた生徒でもあるので、学級委員になったことを機会にじっくりと指導できたらと思っています。

 

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