中学校教師が行う高校授業-OCAの実践-

1.新学習指導要領より

平成30(2018)年3月に改訂された高等学校学習指導要領では、令和4(2022)年より学年進行で実施される新しい高等学校の外国語(英語)の科目が以下のように再編成されました。

 

〇英語コミュニケーションⅠ~Ⅲ(このうちⅠのみ必修)

〇論理・表現Ⅰ~Ⅲ

 

現行のものでは、コミュニケーション基礎英語、コミュニケーション英語Ⅰ~Ⅲ、英語表現Ⅰ・Ⅱ、英語会話となっていますので、より実践的なコミュニケーション能力の育成が強調されたようです。

 

授業の運営の仕方については、中学校に先立って現行のものから「授業は英語で行うことを基本とする」とされており、英語教師自身にも益々英語の運用力が求められるようになるでしょう。

 

そこで、30年以上前から授業を英語で行うことを実践してきた者として、高等学校において生徒も教師も英語を使って授業を行うヒントをご紹介したいと思います。ただ、「授業は英語で…」と言っても、100%英語で行うということではありません。日本語で行った方がよいと考えられる文法の説明等は日本語で効率よく行いつつ、言語習得のための学習・活動場面では英語を積極的に使っていくというスタンスの授業とお考えください。

 

なお、ご紹介する指導内容は、いずれも筆者が実際に高等学校で授業を行っていた平成11~12(1999~2000)年度のものです。科目名や教材などは現行のものや次期のものに比べて古さが目立ちますが、指導目標や指導方法等は現在でも十分通用するものだと考えます。

 

2.OCAとは?(高校教師以外の方のために)

 OCAとは、Oral Communication A のことです。平成元年の学習指導要領の改訂において、「聞くこと」「話すこと」の指導を高校のカリキュラムに明確に位置づけるために初めて取り入れられた科目を指します。本科目の目標は、学習指導要領によるれば次の通りです。
 
「身近な日常生活の中で相手の意向などを聞き取り、自分の考えなどを英語で話す力を養うとともに、積極的にコミュニケーションを図ろうとする態度を育てる。」

もうお気づきのことでしょう。この目標は中学校の英語の目標とほとんど同じことをねらっています。つまり、それまで高校ではほとんど行われてこなかった、しかし中学校ではかなり行われるようになってきていることを、高校でもしっかりとやろうという発想から生まれてきたものなのです。高校の英語の授業といえば、日本語を使って長文の逐語訳をしたり細かい文法の勉強をしたりということが中心であったわけですが、そこに風穴を開けるべく登場した科目というわけです。

 

「A」というからには他にもありそうですが、実際この他に「B」と「C」があります。三者のちがいを大ざっぱに言うと、「A」がごく初歩的なコミュニケーション活動を目指し、「B」はディスカッションをしたりできるレベルまで高めることを目指し、「C」はディベートを行うことができるレベルまで高めることを目指していると言えます。しかし、実際には全国の高校のほとんどが「A」を採用しており、「B」「C」はごく一部の学校(その多くが英語科とか国際科のある学校)しかありません。したがって、教科書も「B」「C」はないというのが実態です(?)。

  

3.中学校教師が行う高校の授業

さて、平成11・12年度の附属中学校出向者は私でありました。これは平成11年春に卒業生を出して担任業務からはずれたこと、そしてその卒業生が内部進学者として新高校1年生の3分の2の人数在学していることによります。平成11年4月より教員生活15年目にして初めて高校OCAを4単位(2単位×2クラス)担当することになりました。

 

さあ、そこで困ったのがどのように授業を運営したらいいかということです。高校側からは、活動を共有する意外はやり方は自由で良いという大変ありがたい(?)助言がありました。それでも I don't know what to do. の状態でしたので、冒頭にあるように学習指導要領から見直してみたり(いえ、実際は初めて読んだのですけど)、前任者の記録を参考にしたりしながら、自分なりのイメージ作りに努めました。そして行き当たったのが、「なんだ、中学校と同じようにやればいいんだ。」でした。実際、附属中学校では1年生のときよりほとんど英語で授業を進めていますし、oral activity も毎時間行っていますので、同様にやっていけばいいことになればかなり楽にできるわけです。

 

ただ1つだけ問題だったのは、高校生という年代の生徒たちの精神レベルがどこにあるかということをしっかりつかまなければならないということでした。幸い、内部進学者は3年間のつきあいをそのまま継続していけるので、相互理解はできています。しかし、それでも高校という別世界に入った生徒を、授業以外の日頃の付き合いがなくなった自分が指導をするというのはそう簡単ではないだろうという予想だけはつきました。そこで、最初は外部生を含めてそのあたりの探りを入れながら授業を進め、だんだんとこちらのペースに巻き込んでいくという作戦に出ました。中学校で行っていた授業スタイルをあまり変えずに内部生取り込み、同時に中学校教師ならではのきめ細かな指導を行うことにも努めました。そして、なんとか自分なりの高校OCAの授業となったところです。

 

4.実践例

ここでは、これまでに自分が実践してきた授業内容のうち、主なものを紹介します。それぞれ別ページに詳しい説明や資料がありますので、興味のあるところをクリックして進んでみてください。 

 

(1) スピーチ活動

 

(2) ディスカッション・タイム 

 

(3) コミュニケーション活動

 

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