67. 将来の自分のために(学年末考査に向けて)

【きっかけ・ねらい】

この話は、学年末考査を1週間後に控えた生徒に対して、中学校最後の考査に向かう姿勢をしっかりとさせたいという思いで話したものです。都立高校を第一志望とする数名の生徒以外は高校受験が終わってしまっており、過去の経験からも、この時期にしっかり意識付けをしておかないと生徒は気がゆるんだまま考査に臨んでしまうので、以前から何かしら話をしなければいけないと思っていました。ところが、その日のその時間が来るまでは簡単な注意をするくらいのつもりでいたところ、たまたまその日に英語の授業を見学に来られた研修の先生が終礼も見に来られていたので、教卓に立って話し始めたとたんにいつものスイッチが入ってしまい、結果的に生徒との会話を楽しみながら目的の話をすることになりました。なお、中身は大したものではなかったのですが、久しぶりに生徒と活発にことばを交わせたので、記録として残しておくことにしました。

 

【手順・工夫】

準備らしい準備はまったくないまま話し始めたので、生徒の反応を見ながら話を進めるしかありませんでした。話しながら思いついたことは、生徒の欲求を満たすような話題を入れることと、それまでに見聞きしていた生徒の具体的な言動を利用することで、生徒を話に引き込むことでした。

 

【実際の会話】2/16

T:さっき週番が「テストまであと1週間です」って言っていたけど、みんなの気持ちはその準備ができていますか?

S:できてませ~ん!

T:やっぱりね。そう言うと思ったよ。それじゃ、本当に困るんだよなあ。テストに臨む姿勢がそれじゃなあ…。

S:(ニコニコしながら聞いている)

T:さっきもね、昼休みにファイナルコ-ス委員会を開いていたら、このクラスの某学級委員が「テスト中に下見に行きましょう」なんて言ってたくらいだからね。

A男(学級委員):(B子を指して、笑いながら)お前だぞ、言ってたのは!

B子(学級委員):(A男に向かって、笑いながら)私じゃないわよ!(注:B子である)

C男:「下見」ってどこか行くの?

T:他にもさ、今週末は遊ぼうなんて言っている人がいたよな?(該当のD男を見る)

D男:(恥ずかしそうに苦笑いしている)

T:そんなね、学年末考査を軽く見られちゃ、困るんだよね。

E男:もう(入試は)終わっちゃったんだから、いいんじゃね?

T:(D男に)そうかい? そう思ってると、後で後悔することになるかもよ~。

E男:(顔をひきつらせる)

T:「もういいじゃない」って思っている人が多そうだから、そうじゃないっていう話をしよう。

S:(「いったい何だろう?」という表情になる)

T:もしもだよ、みんなが最後の学年末考査でこけてしまったとしよう。そうすると、どうなると思う?

S:(答えに困っている表情)

T:それはだね、もし最後のテストで変な点を取ろうものなら、君たちの3年生の成績はそれが残っちゃうんだよ。

F子:ええ~!やだ~!

T:そうだろ? それでだ。別に中学校の成績なんか卒業しちゃえばどうでもいいやと思っているとしたら、いざというときに大変だぞ。

S:(驚いた顔になる)

T:例えば、みんなが高校に入ってから留学したいとかいうことがあったときは、中学校の成績を出さなければいけない。それがあんまりよくなかったりすると、きっと困るぞお~。

S:ええ~!

G子:そうかあ!

H男:別に留学なんかしなければいいんじゃない?

T:留学しなければいいという問題じゃないぞ。何か他のことでもけっこう中学校の成績証明書を持ってこいということがあるんだよ。実際、先生はよく卒業生から頼まれて書いているし、自分が大学4年生の時に留学した際にも高校の成績まで提出させられた経験があるからわかるんだ。

S:(真剣な顔で聞いている)

T:とにかくだ。学年末につく成績がみんなの中学校の成績として残るんだよ。途中の成績なんてもうどうでもよくなっちゃうんだ。だから、今度のテストは自分の将来のためにも頑張らなきゃ。

S:(「へえ、そうなんだ~」というような顔)

T:もう受験が終わっちゃった人で、「最後のテストなんてどうでもいいや」なんて思っている人がいるとしたら、とんでもないことなので、これまでと同じようにとはいかないまでも、やれることはとにかくやるという気持ちでいないと後で後悔することになるぞ。(次のことばが出なくて、しばらく沈黙した後に)ちなみに、この話は他のクラスではするつもりはありません。

S:(一瞬驚いたような顔をするが、多くは私の発言の意図を察した様子)

C男:えっ?どういうこと?

T:成績はさ、クラス毎につけるんじゃなくて、学年200人全員でつけるでしょ?

I子:5組だけいい成績とっちゃお~!

T:さあね。先生は別にそういうつもりで言っているわけではないけどね…。

S:(「そういうつもりで言ってるでしょ!」と笑顔でこちらを見ている)

T:まあ、最後の最後はいい結果で終わらせようや。では、これでおしまい。

 

【振り返ってみて】(○/○/2022)

ここからはオリジナルの本にはないことなのですが、現時点で約10年前にしたこの話を振り返ると、このような話をしたのを恥ずかしく思います。実は、同じような話を『続・終礼の話』の方でもしているのですが、もう少しちがった角度から話ができなかったかと後悔しています。

 

目の前に迫る学年末考査をしっかり受けてもらいたいという気持ちから、「ちゃんと受けないと後で公開することになる」という損得勘定に訴える内容で話をしましたが、今であればもっとちがう角度から、すなわち、より生徒の心に染み通る話を考えたのではないかと思います。ただ、それをどのような話にしたらいいかということまでは思いついていないのですが…。

 

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