【きっかけ・ねらい】
この話の直接のきっかけは、全校集会のときにAA校長先生が2日後に控えた学年末考査に臨む姿勢として「3つの『C』を心に留めておいてください」と話されたことでした。校長先生によると、3つの「C」とはconcentration(集中)、confidence(自信)、control(調整)でした。このお話を聞いたとき、それが英単語であったこともあり、校長先生が話された内容を終礼でさらに生徒の心に深く刻んでおこうと考えました。
一方、前の週に2年5組の生徒が初めて全校週番を務めたのですが、その意欲的な活動ぶりを自分が週番教官の一人として見ていたので、彼らを全員の前で賞賛するとともに、残りの生徒への意欲付けを行おうと思いました。
【手順・工夫】
この日は他にもいくつか細かい連絡事項があったので、それらを話しながら生徒の気持ちをこちらに向けさせ、段々と確信の話につなげていこうと思いました。
なお、大切な連絡をし忘れないことと、話す事柄の順番を整理するために、手帳に以下のようなメモを書いておきました。
・12人の怒れる男プリント
・学年集会 2/25(金)
・落書き
・先週の全校週番
・3つのC
【実際の会話】2/21
T:まずは金曜日に見た「十二人の怒れる男」のプリントですが、今のところ提出した人が31人です。まだ出していない人は誰ですか?
A男:先生、今出してもいいですか?
T:いいよ。
B男:先生、ぼくも!
A男・B男:(席を立ってプリントを持ってくる)
T:すると、あと8人ですね。まだ出していない人は手をあげなさい。
S:(7人が手をあげる)
T:(数えて)7人か…。1人足らないじゃない。
C子:○○君(欠席がちな生徒でこの日も欠席)じゃないですか?
T:いや、彼のは金曜日にもらってある。
D子:すみません、私です!(席を立ってプリントを持ってくる)
T:(受け取って)これで数が合った。
S:(緊張が解けてホッとした顔になる)
T:さて、あの映画はみんなの中の何人かが金曜日の終礼で「面白かった」と言ってくれましたが、他のクラスでもなかなか評判がよかったようです。あるクラスでは、「面白かった」「ふつう」「よくわからなかった」の3択で尋ねたところ、30人が「面白かった」と答えたそうです。
S:(「へえ、そうなんだあ」という顔)
T:それで、けっこう印象的だったものですから、中にはあの映画のシーンを真似たりした人もいたようです。例えば、びっこを引く真似をするシーンがありましたが、あれを廊下でふざけてやっていて、転んでケガをした人がいたとか(該当のE男を見る)。
E男(張本人):(恥ずかしそうに笑ってキョロキョロしている)
T:それから、他のクラスには「十二人の怒れる男」ごっこをしている人たちもいたそうです。「お前があのおじいさんをやれ!」とかいいながら演じていたそうです。
S:(爆笑になる)
F男:オレだったら3番(陪審員の番号)だな。
G男:オレ、9番!
T:まあ、強く印象に残ったということなのでしょうが、「~ごっこ」というのは先生が意図したことじゃないから困ったなあ。もうちょっと真剣にとらえてほしかったんだけどなあ…。
S:(真剣な顔になる)
T:では、次に今週末の話をしておくと、金曜日は2時間で終わりなので…
S:ええ~!!
H子:やった~!
T:えっ? なんで? 金曜日ってテスト2時間だけだよね? ちがった?(考査時間割を見る)2時間だよね?
S:(うなずいている)
T:なんだ、まちがえたかと思ったじゃないか。それで、この日はテストが終わったら、合同終礼(あえて「学年集会」とは言わなかった)があります。
S:ええ~!!!
I男:せっかく早く帰れるのに~。
J子:先生、なんでですか?
T:(わざと知らん振りをして)さあ、なんでだろうねえ…。
S:ええ~!!!
C子:また~! こういう日にかぎって、なんでそうなるんですか?
T:(とぼけて)さあ…。
S:ええ~!!
I男:しかられるんですか?
T:さあ、どうだろうねえ。何か身に覚えはあるのかい?
C子:先生、どのくらいかかるんですか?
T:さあ、どうかな。話す人の気分次第だね。
S:(さらに聞いてもとぼけられるだけだと思ったのか、それ以上の質問はなくなった)
T:ということで、覚えておいてください。それから、明後日からテストですから、机の上に落書きをしている人は消しなさい。
S:(多くが一斉に消しゴムで机の上をこすり始める)
J子:ええ~! せっかく書いたのに~。
T:あのね~。いつも言ってるでしょ?「落書きは消しなさい」って。
J子:(舌を出してニコニコしながら落書きを消している)
T:(しばらく待って)それから、先週は5組が初めて全校週番を担当しました。先生も一緒だったからわかるんですが、6人プラス週番委員の7人がとてもよくやってくれました。
S:(7人が自信に満ちた顔でこちらを見ている)
T:7人の人に拍手!
S:(大きな拍手が起こる。7人は少し恥ずかしそうに笑っている)
T:それで、これは7人に言ったことなんだけど、3日目に「週番活動は楽しいかい?」
って聞いたら、みんな「楽しい」って言うんだね。
K子(全校週番の一人):(うなずいている)
T:それで、「なんで楽しいの?」って聞いたら、「自分が何か呼びかけると、それで変わることが嬉しい」って言うんだね。
L子(全校週番の一人):(うなずいている)
T:これって、とても大切なことだと思う。実は先生もそうなんだけど、みんなにいろいろ話をして、それでみんなが変わると嬉しくなる。だから、次はどんな話をしようかなってまた考えるようになるんだ。
S:(「先生の長話の動機はそれか」というような笑顔)
T:だから、これから5週間に一回は5組の番が回ってくるわけだけど、それぞれの回で「全校週番って楽しいな」と思えるように積極的に活動してください。
S:(ありきたりの結論だったので、多くが下を向いてしまった)
T:では、最後にテストをします!
S:(驚いて、全員の顔がパッと上がる)
T:みんなの記憶力と集中力がどのくらいあるかを試すテストです。
S:(「いったい何だろう?」という不安で緊張している)
T:そのテストとは…? 今日の全校集会で校長先生がどんな話をなさったか覚えていますか?
M子:3つのC!
N男:3C!
S:(ほぼ同時に何人もの生徒が続けて「3C!」と叫ぶ)
T:ほ、ほ~。とりあえずそれはよく聞いていたようだね。では、その「3つの『C』」とは何だったか覚えていますか?
S:(「集中力」「自信」「コントロール」ということばがあちこちから出てくる)
T:わかった、わかった。ちょっと整理をしてみよう。最初は何でしたか?
S:「集中力」!
T:そうだったね。校長先生はそれを英語で何と言うとおっしゃってた?
S:(・・・)
N男:「コン…」なんとか。
T:そうだね。正確には concentration。次は?
S:「自信」!
T:そうだね。英語では?
S:(・・・)
N男:「コン…」なんとか。
T:は、は、は。こっちはconfidenceです。先生はね、この単語をちょうどみんなと同じ中2のときに覚えたんだ。「サウンド・オブ・ミュージック」という映画があるでしょ? あの映画の最初の方のシーンで主人公のマリアが "I Have Confidence" という歌を歌ってるんだけど、知らない?(その部分を歌う)
S:(みんな首を振っている。どうやら有名な曲でないため覚えていないらしい)
T:では、3つ目は?
S:「コントロール」!
T:こっちは英語の方が覚えやすかったか。校長先生は日本語で何とおっしゃった?
O子:「調整」…?
T:おっ、よく覚えていたね。校長先生はこれら3つが試験を受けるときには大切だとおっしゃっていました。先生もそう思います。
S:(集中して聞いている)
T:これはもう20年近く前の話なんだけど、前の学校の保護者会で一人の親から「成績を上げるためにもっとも大切なことは何ですか?」と質問を受けたことがあったんだね。先生はとっさに「それは『集中力』です」って答えた。それは今でも正しかったと思うよ。だって、授業中に集中して話を聞いている人はやっぱり成績もいいからね。逆に言うと…、(一人だけ話を聞かずにとなりに話しかけている女子生徒に気づいて)こうして私が話している間も聞いていない人がいるしね。(その生徒をにらむ)
S:(該当のP子を見て笑う)
P子:(気づかない、あるいは気づかない振りをして話し続けている)
T:(特に本人を注意せず)そういうね、集中力のない人っていうのは、無駄な時間をいっぱい使っているから、成績も上がらないんだな(とP子のことを言う)。
S:(「まずいことになってきたぞ…」と心配そうにP子を見る)
P子:(まだ話し続けている)
T:(しかっても無駄と考え、さらに攻める)その授業中に集中力を高めておくためには、「コントロール」、つまり自分を調整する能力が必要だね。その能力のない人は集中力を維持できない。
P子:(ようやく自分のことだと気づいて話をやめ、こちらを見る)
T:そして、テスト中にあせったりしないために「自信」を持つこと。その自信はどこから来るかと言えば、自分が納得できるレベルまで勉強したっていう満足感から来る。
S:(真剣に聞いている)
T:だから、十分に準備してテストに臨んでください。けっしてあきらめてはいけませんよ。では、今日はこれでおしまい。
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