27.行ってきま~す!(修業式の日に話したこと)

【きっかけ・ねらい】

この話は、修業式の日にしようとかなり前から企画していたものです。最大のねらいは、現在担任している生徒に最後の「終礼の話」をすることでした。主な内容として考えていたことは、①前日の終礼でもらった色紙に対する謝辞、②1年間の生徒の成長と自分との関係の総括、③クラス替えに対する不安への対処、④翌日に予定されている自分の手術に対する見舞い辞退のお願い、などでした。

 

【手順・工夫】

今回の話はかなり前から企画していたものであったこともあり、前話(「26.3年前のあの日、あの時」)と並行して内容を考えていました。具体的には、手帳に話の4つの柱(上記【きっかけ・ねらい】参照)を最初に書いておき、前話が終わったところで具体的な話の項目立てをし、さらに前日から当日にかけて細かい台詞に近いものを書いて準備をしておきました。

 

話し方の工夫としては、今回の話は下手をすると一方的な話になりかねなかったので、いつものように生徒に問いかけながら進める方法を採ることにしました。また、今回もかなり長尺になることが予想されていたので、最初からICレコーダーに録音しておくことにしました。

 

【実際の会話】3/18

T:それではですね、昨日はみなさんから貴重な声をいただきました。※色紙のこと。

S:(みんな話を聞く姿勢ができている)

T:それにあたっては、「2年生とはちがうね…」という話をしたことが、学級委員さんをはじめとして、あれを企画した何人かの人たちにいやな思いをさせてしまったかなと思います。

A子(学級委員)・B子(後期英語係):(ニコニコしている)

C子(前期英語係):(首を振っている)

T:あの話の意図は、2年生では一教科担任であった私でももらえたということなんですね。うちのクラスではそこまではしてませんよね?

S:(「へっ?」という驚いた顔になる)

T:例えば、最後の授業の時に「1年間ありがとうございました」なんて挨拶してないでしょ?

D男:してない。

S:(多くがうなずく)

T:これがね、中1と中2のちがいなんだ。そういう意味であの話をしたんです。で、元の話に戻りますが、色紙を読ませてもらうと、本当にみんなが一人一人いろいろなことを考えてくれていたんだなということを改めて感じました。それをみなさんは…、とても遠慮深い人たちだから、普段からはそういうことを口に出さなかったのかなと 思います。

S:(どう反応していいかわからない様子)

T:ちょっとですね…、言いたいことがいっぱいあるので…、言い忘れちゃうといけないので、メモを見させてください。(背広の内ポケットから手帳を取り出して開く)

S:(「まあ、仕方がないか…」のようにニコニコしている)

T:何人かの人が私の終礼の話についてふれてくれていました。「終礼の話、おもしろかったです」とか「ためになりました」とか言ってくれているんですが、多くの人は「先生の話は長いなあ…」と思っていたのではないかと思います。(笑いかける)

S:(どう反応していいかわからない様子の生徒もいれば、首を振っている生徒もいる)

T:前の学年の生徒たちも「AA先生(筆者)の話は長い」とか「5組の終礼が長いのはAA先生のせいだ」とか…。

E男:長くないよね?

T:2年生、3年生も私のクラスになった人は、あと2年間は覚悟してもらおうと思います。ただ、一方で、卒業するときに卒業生にもらった色紙には、多くの人が3年間 楽しかったということと共に終礼の話のことにふれてくれていましたので、無駄ではなかったかなと思っています。そこで、今日はお別れするにあたって最後の話をした いと思います。ただ、一方的に話すつもりはないので、いつものように先生が何かたずねたら応えてください。

S:(数名が「わかりました」のようにうなずく)

T:黒板がきれいになっているので、ここに数字を書きたかったのですが書くのはやめることにします。書こうと思っていた数字は「1」と「3」です。さて、何を言おうとして書こうと思ったと思いますか?

F男:(サッと手を上げる)

T:(F男を見て)はい。

F男:3分の1が過ぎようとしている。

T:何の3分の1?

F男:えっ? だから、中学校生活の3分の1。

T:そうですね。中学校生活の3分の1。

S:(あちこちから「早い」とか「早かった」という声が聞こえる)

T:早い?

E男:早い。

T:早いですよね? 中学校生活の3分の1が過ぎちゃったんですよ! そこで、手を上げてもらいましょう。

S:(嬉しそうな顔になる)

T:「早かったなあ」と思った人か、「長かったなあ」と思った人か。どっちかに上げてください。では、「早かったなあ」と思った人?

S:(ほとんどの生徒が手を上げる)

T:ああ、多くの人がそうなんですねえ…。はい。これは「長かったなあ」の方の人を数えた方が早いね。「長かったなあ」という人は?

S:(数名がサッと手を上げる。何かを伝えたいようなそぶりである)

T:(数えて)1、2、3、4人! そうですか。まあ、いろいろな理由があって「長かったなあ」という人もいると思うんですが、ほとんどの人は「早かったなあ」と感じているんですね。来年1年はもっと早くなります。3年生はもっと早くなると思います。さらに言うと、先生の年齢になるとあっという間に過ぎます。まあ、年々年々1年が早くなって過ぎていくことになると思います。(笑いかける)

S:(どう反応していいかわらない様子)

T:その中学校生活ですが、この間みなさんにビデオ見てもらいましたよね? ある人を見たときは「ギャー!」とか声が上がり…。(注:入学式の呼名のシーンを見せた)

S:(笑いが起こる)

T:「声が高い~!」とか「でかくなった~!」とか「かわいかったのに~!」とか。そういう声が上がりました。

S:(この話題でざわつく)

T:そういうことで、体も大きくなりましたし、心も成長したと思います。心の成長というと、何が成長したかというと、みんなが「やれること」が多くなったと思います。

S:(数名がうなずく。以前に同じような話をしたためと思われる)

T:これまで先生に指示されなければできなかったようなことが、自ら仕事を探し、あるいは気がつき、やってくれようになりました。

S:(自信を持っているような顔になる)

T:そういうことで、後半になって先生は大分楽になりました。久しぶりに1年生をもって、最初の頃はどうなるのかと思いましたが、みんな大きく成長してくれてよかったなあと思います。(手帳のメモをのぞき込んで)2つ目。そういうみなさんなので、2年生になって大きくステップアップしてもらいたい。そのステップアップしてもらうにはいくつかのポイントがあるので、それをお話ししたいと思います。

S:(真剣な顔で聞いている)

T:さっき席替えの話をしました。席替えの話ね。あっ、席替えじゃない、ごめん、クラス替えだ。クラス替えです!

S:(笑いが起こる)

T:クラス替えは…、クラス替えは不安ですか? 

S:(「はい」という声が多く聞こえる)

T:不安だという人?

S:(ほとんどが手を上げる)

T:「不安だなあ」じゃなきゃ、何だろうね?

E男:「楽しみ」?

T:ああ、「楽しみ」…。「楽しみだなあ」という人?

S:(数名が手を上げる。そのうちの2人が「長かったあ」と重なる)

T:(数えて)1、2、3、4、5、6人。はい、わかりました。まあ、多くの人が不安だなあと思っていると思います。そこで、その「不安だなあ」と思っている人にぜひ2年生でステップアップしてもらうためのポイントをお話ししましょう。まず、その1。このクラスの仲間のことを忘れないでください。

S:(誰かが「はは!」と笑うが、ほとんどは無反応)

T:みなさん一人一人はとても頑張ってくれましたけども、みなさんは一人一人では生活できなかったし、いろいろな人との関わりの中でやってきたと思います。仲間から受けた恩をぜひ忘れないでもらいたいなと思います。仲間がいて今の自分がいるんだ。 一人でも欠けていたら、またちがった世界があったかもしれません。今の自分は仲間がいたからいるんだということですね。S:(わかったような、わからないような顔をしている)

T:2つ目。5組の良いところを新しいクラスに持って行ってほしいと思います。ちなみに、5組の良いところって何でしょうね?

G男:騒々しい。

T:何?

E男:騒々しい。

T:騒々しい? なんか、あまりことばが良くないなあ。「騒々しい」じゃ、なんかあまりよくないから、ことばを変えて。

E男:明るい。

T:明るいね。

H男:にぎやか。

T:にぎやかね。

E男:いつもお祭り騒ぎ。

T:いつもお祭り騒ぎ? ほんとか?

I男:動物園。

S:(I男の発言に笑いが起こり、数名がそのことばを繰り返す)

T:他にはありますか?

J男:ポジティブ。

T:ポジティブ。すごいカタカナ英語が出てきました。ポジティブってどういう意味かは知ってますか?

S:(反応はない)

T:使ったJ男くん。どういう意味?

J男:全部プラス思考で考える。

T:そうですね。前向きに考えられるということだね? 他に?

S:(沈黙が流れる)

T:じゃあ、前向きに、明るく考えていけるというその良さを持って行ってください。あとね、私がね、このクラスのよいところだと思うのは、この間の保護者会でも言いましたけども、みんながね、とても落ち着いているということですね。まあ、放課後に教室でバタバタしていたなんていうのはありましたけど、そういうのは中1ならごく普通のことだし。そうじゃないときにね、誰と誰が喧嘩して大けがをしたとかいうことはないし、そういう意味でとても落ち着いて生活をしてくれたかなと思います。そんな意味での苦労はなかったと思います。

S:(褒められているのかどうだかわからない表情)

T:3番目。5組の足らない部分は新しいクラスで広めてはいけない。さあ、5組の足らない部分とは何でしょうか?

E男:(間髪を入れず)学力。

S:(笑いが起こる)

T:学力…。つまり、もっと一生懸命勉強しましょうっていうことね?

E男:(ニヤニヤしながら)はい。

T:はい、他に?

K子:(サッと手を上げる) 

T:(K子に)はい。

K子:あのう、団結力に欠けてて、自分の個性を大切にしすぎているから、協調性が足りないと思います。(注:K子は日頃からクラスの雰囲気が悪いと思っている)

T:自分の個性を大切にしすぎて、協調性が足りない…。団結力が足らないという印象をK子さんはもったわけですね?

K子:(うなずく)

T:みんなもそうですか?

E男:運動会で負けちゃったから…。

T:運動会で負けちゃったから?

E男:リレーしか勝ってないし…。

S:(E男の発言に「リレー勝ったからいいじゃん」のような声が数名から上がる)

T:リレー勝ったというのは重要なことだよ。

E男:リレーは勝てるってわかってたから…。

S:(E男の発言に対してさらにざわつく)

T:はい、他に?

E男:遅刻者が多い。

T:遅刻者が多い!

S:(笑いが起こり、ときどき遅刻するL男をみんなが見る)

L男:(どぎまぎして苦笑いをする)

M子:提出物の悪さ。

S:(笑いが起こり、提出物をあまり出さないと評判のE男をみんなが見る)

T:提出物の悪さ! これは1年間解決しませんでしたね。(E男を見る)

E男:(苦笑いしながら)すみません…。

T:他に?

E男:自治会のときに手が上がらない。

T:えっ? クラスの?

E男:クラスで話し合うときなんかになかなか手が上がらない。

T:ああ、学級自治会とかにね、なかなか意見が出なかったということね。他に?

N男:側面黒板に落書きをする。

S:(笑いが起こる)

O男:それってクラスのことか?

T:落書きが起こるなんてことはね…。クラスの人のことをバカにするようなことは絶対にしないでくださいね。他にありますか?

D男:本当に声を出さなきゃいけないときに声を出していない。

T:声を出さななきゃいけないときに声を出していない!

S:(数名がうなずく)

T:これはね、5組だけじゃないと先生は思っています。2年生になったらそれを改革する案を担任団の先生方で考えています。

S:(「いったい何だろう?」という興味津々の顔になる)

T:ぜひね、元気なみんなでいてもらおうと思っています。なぜかというと、合唱発表会で1年生であれだけの合唱ができたのは久しぶりの学年です。だから、絶対に声が出るはず。だから、みなさんが声が出せるキャンペーンをはる予定です。

S:(笑いが起こり、何人もが「キャンペーン!」と叫ぶ)

T:キャンペーンをはる予定です。ぜひ、しっかり声を出してください。他に?

K子:他人に流されすぎて…、人のことを口汚く罵る人がいた。

T:(この発言をどう処理するか一瞬迷って)たぶん、2つのことがあると思うんですね。まずね、前半はね、そうだねえ、自分の意思をしっかり持たないで、他の人に流されて何となくやってしまうということだね。後半の人のことを口汚く罵るというのは…、それはお互いにやり合っていたということですか?

K子:一人が失敗したりすると、誰かがそれを言って、みんながドッと笑うみたいな…。

T:以前にもそのことが指摘されましたよね。失敗があったときに、みんながなんだかんだと言ったことがあったと…。ぜひこれは新しいクラスで絶対にやらないでくださいね。他にありますか?

S:(「もうありません」という視線を送ってくる)

T:ありませんね。じゃあ、4点目。そういったことを含めて、新しいクラスで新しい文化を創造してください。今度は2年間一緒だからね。2年間一緒というのは大変なことです。みんな自身が新しいクラスがいいクラスだったら…、さっき「不安だ」という人が多かったけど、裏を返せば、「いいクラスになればいいな」ってことでしょ?

S:(数名がうなずく)

T:ですから、新しい文化を一生懸命作ってください。そのよいクラスを創るためのアドバイスを大きく2点話をします。その1。絶対にやるなよ。新しい環境に対して文句を言わない。

S:(驚いた顔になる)

T:やはりね、仲間や雰囲気が変わると、慣れないうちはどうしても昔のことがなつかしくなります。「ああ、5組よかったなあ…」って。他のクラスの人も「4組良かったなあ…」「3組よかったなあ…」と思う人が出てくると思います。そのときに絶対やってはいけないのが、(女子のことばの真似をして)「や~だ~、このクラスの雰囲気暗い~」とか、「○○がいるから、や~だ~」とかいうこと。

S:(笑いが起こる)

T:そういう人が必ずいるの。それで、そういうことを言う人がその雰囲気を自分が壊しているということに気づいていない。わかる?

S:(うなずくともなしに真剣に聞いている)

T:なんでかって言うと、他の人もね、なんとなく不安を感じながらそう思っているんですよ。でも、新しいクラスをよいクラスにしたいからって黙っているんですよ。そういうときにね、そういうことをおおっぴらに言われるといや~な気分になる。思うのは勝手だけど、絶対に口にするな。表に出しちゃいけない。最近、バカなやつが、浦和の方のバカなやつが自分の思ったことを張り紙に出しちゃって問題になりました けど…。何の話か知ってる?

E男:知らない。

T:浦和レッズのサポーターが「ジャパニーズ・オンリー」という弾幕を掲げたっていう事件。(注:「日本人以外お断り」という意味の段幕を掲げたせいで、浦和レッズは次節の主催試合を無観客試合とされるJリーグ史上最大の制裁が加えられた)

S:(数名が「ああ!」と言う)

T:新聞やニュースでさんざん取り上げられましたよね。ちょっと曲解された部分もあるんですが、思っていることを表に出すと問題になることがあるので…。

S:(件の話でおしゃべりが続いている)

T:「ジャパニーズ・オンリー」のことはこれ以上深入りしません。興味のある人は今週の新聞を見ればおそらく一面に載ってるから、そちらで確認してください。

S:(静かになる)

T:で、そういうことを言う人はそれでストレス発散になるかもしれないけど、まわりの人はストレスをためるので、絶対にそういうことはないようにしてください。2つ目。1つ目も2つ目も私は新しいクラスでも言いますけど…、自分が貢献できることは何かっていうことをよく考えて、積極的にそれに取り組んでください。誰かがクラスを作るんじゃなくて、自分が、一人一人が作るんだということ。そういうつもりで 取り組んでください。みなさん自身もね、自分が頑張っているんだということが自覚できれば…、集団を変化させることに貢献しているんだということを感じられれば、自分の生き甲斐にもなると思います。

S:(わかったようなわからないようなポカンとした顔をしている)

T:最後になりますが…、昨日みなさんからあんな色紙(注:全員からメッセージが書かれている色紙)をもらったわけですが、そのときに私はあることを考えていました。(この時点でチャイムがなる。すでに16分半以上も話しているが続けることにする) 実は、これは保護者会のときにも話したことなんですけども、それをみなさんにもお 伝えしておきます。

S:(チャイムの音が続いているが、辛抱強く聞いている)

T:それはですね…(しばらく沈黙して)、みなさんともっと親しくおつきあいできればよかったなと思っています。しかし、私自身の不徳のいたすところもあり、それができなかったかなと思っています。また、それはみなさんが持っていた性格的なこともあったかもしれません。さっき言った、遠慮深い性格とかね、そういうことですね。

S:(廊下が他のクラスの生徒で騒がしくなり始めたが、真剣な顔で聞いている)

T:保護者会でこんな話をしました。聞いた人もいると思います。

S:(数名が顔を見合わせている)

T:私が昼食を食べていると、「先生、愛妻弁当ですか?」って毎日のように来たものですが、このクラスではそいういうことがほとんどありませんでした。という話をしました。

S:(弱い笑いが起こる)

T:朝教室に来ると…、昼休みに教室でボーッとしていると、けっこうみんな話しに来てくれたんだけど、このクラスではそういうことがあまりありませんでした。

S:(大きな笑いが起こる)

T:たいてい女子が来てくれて…、こういうことばはあまりよくないんですが、ハーレム状態で話をしたりしていました。しかし、このクラスではそれはありませんでした。

S:(女子の笑いが起こる)

T:という話もしました。でも、たぶんそれはね、私の年齢も上がり、みんなからすれば近寄りがたい…

S:(笑いが起こる)

T:…オーラをね、私自身が出していたからなんだろうなっていうふうにも思っています。だんだん年を取るとそういうこともできなくなるんだなあと…。すみません。ということを保護者にも話しておきました。ただ、私はそういうことをかえって幸いだなと思っています。   

S:(驚いた顔になる)

T:それは…、これも保護者にも話しましたが…、過去はそうやってみんなと仲良くしちゃったんで、自分のクラスの子が可愛くて可愛くて、クラス替えを絶対にしたくなくて、クラス分けしても、5等分したその子たちが可愛くて可愛くて、仕方がなかった。で、それを平成13年のクラスのときに強く感じて…、生徒も5組のことがなつかしくてなつかしくて毎日泣いているっていう子がいるほどでした。でも、それは私にとって悲劇の始まりでした。

S:(なぜか、少しざわつきはじめる。「平成13年」または「悲劇」に反応したか?)

T:なぜかというとね、他のクラスから来た生徒たちがみんなひがむわけです。「へん! どうせ私たちはよそのクラスから来た生徒たちですよ!」みたいにね。で、私自身も前のクラスの生徒たちのことが可愛いから…、その子たちのことをあと2年間愛することができませんでした。だから、生徒たちとも上手くいきませんでした。という経験をしたので、現在の大学3年生のときに、1年生のときにグッと抑えて、できるだけ関わらないように…

S:(数名が笑う)

T:「関わらないように」じゃなくて、親しくなりすぎないようにしました。そうしたら、2年生、3年生がうまくいったんですね。そういう話をして、現在の高2の生徒のときもそういうふうにしました。そうしたら、2年生、3年生もうまくいきました。 ということで、今年のこの5組の人たちとも1年間ほどよい関係が保てたので、たぶん、2年生、3年生もうまくいくかなと思っています。ただ、その一方でね、みなさんのことを本当に親身になってあげられなかったところもあったかなと思っています。そういう点は、本当にごめんなさいって思っています。

S:(ニコニコとした顔で聞いている)

T:ごめん。「最後」と言っておきながら、もう1つです。何人かの人から、私が今日の午後から入院することに対してお見舞いに行きたいんだけどという話がありました。それについては大変嬉しいお申し出ではあるんですが、すみませんがご遠慮いただこうと思っています。私以外の入院患者は…、実は前回もそうだったんですが…、ほとんどがお年寄りです。なので、病院を静かにしたいということもあり、あとみなさんに余計な心配をおかけしたくないので、お断りをしたいなと思っています。

S:(下を向く生徒が数名いる)

T:その代わり、みなさんからもらった色紙と学級の写真を病室に飾っておきますので。(注:この話を手術後2日目の夜に病室で打っているが、目の前に色紙と写真がある) 明日の今頃はもう手術が始まっていると思うので…

S:えええ~!

T:「ああ、今頃先生手術中なんだなあ」と思ってくれていればそれで結構です。ということで、来ないでください。ということで、長くなりましたが…、今年1年が終わりました。随分遅くなっちゃったので、この後に仲間同士でさようならをしてください。もちろん、また4月に会えるわけですが…。そのときまで、さようなら。それから、先生も手術頑張ってきます。では、行ってきま~す!(手を振る)

S:(手を振りながら)行ってらっしゃ~い!

T:では、おしまい。

J男(学級週番):静座! 起立!

S:(サッと立ち上がる)

J男:さようなら!

S:(おおきな声で)さようなら!

T:(下を向いたまま、ゆっくりと静かに)さようなら…。

 

【こぼれ話】

今回の話は結果的に22分39秒(ICレコーダーによる)にもなる長尺でした。終礼の話としては異例の長さのものとなりましたが、修業式の担任の話と考えればそこそこの長さだったかなと思います。ただ、当初こそ1年間を振り返り2年生の生活を充実させるためのアドバイスをするために企画したはずでありましたが、話した内容をまとめてみると、自分と生徒との関係を自分なりに総括した内容を生徒に伝えることが主目的であったのかなあと感じました。

 

なお、最後に話した手術の件ですが、これは第21話(「21. Back from the Hospital」)にもあるとおり、胆石症の手術(腹腔鏡下胆嚢摘出手術)のことを指します。1月に入院した際に医者から即手術することを勧められたのですが、仕事や息子の高校受験のことがあったので、手術自体を春休みまで延ばしたことによるものでした。ただ、手術をしてくださる先生の都合で、修業式の翌日かその1週間後に手術をしなければならないことになり、新年度のことも考えて前者を選んだというわけです。そのために本来であれば全員と個人面談をする修業式の日の午後には入院しなければならないという事態になったので、あらかじめそのことを生徒と保護者の両方に正確に伝えておく必要があると考え、事前に生徒に事情を言い含めておいたことからこのような話が出てきました。幸い、手術は無事に済み、こうして術後2日目の夜にはパソコンを打っています。