【きっかけ・ねらい】
日頃から生徒の電車の中でのマナーの悪さを心配していたのですが、12月最後の全校集会で、生徒部長のAA先生から、本校生徒が電車の中で騒いでいるので注意してほしいという電話があったとの話がありました。そこで、その日の終礼でクラスでもそのことを注意しておこうと思いました。
また、話をしている間に、冬休みを迎えるにあたって気になることに気づいたので、そのことも話そうと思いました。
【手順・工夫】
生徒に何か行動面で注意をするとき、具体的に注意すべき対象者がいない場合は一般論で話をするしかありません。しかし、それを単に型どおりに話したのでは、心に染みとおる話にはならないばかりか、生徒はそれを真剣に聞こうとはしません。そこで、次のような話の流れを考えました。
① 生徒に似たような経験がないかを聞く。
② 自分の体験談を話す。
③ 自分が気づかないうちに他人に迷惑をかけている可能性があることを認識させる。
【実際の会話】12/18
T:今日、生徒部長のAA先生から、電車の中でのマナーの話がありました。それに関しては、先日、電車の中でゲームをやっていて騒いでいた生徒が乗っていた人に怒られたというので、このクラスに該当者がいないかと聞きましたね。
A男:先生、それって誰だかわかったんですか?
T:どうやら1年生らしい。「自分が怒られました」と申し出てきた生徒が他のクラスにいたらしいからね。
S:へえ~。
T:その1年生によると、他にも怒られたことがある人がいるそうだ。このクラスにもそういう人がいるんじゃないか?
S:(いるかもしれないが、知らん顔をしている?)
B男:先生、オレ、この間、変なおっさんにいきなり切れられた。
T:それは君が騒いでいたからじゃない?
B男:ちがいますよ。何もしていないのに、急になんか言ってきたんです。
T:う~ん、そういう変な人のことは置いておいて、みんなは自分で意識していなくても、他の人から見ると迷惑だと思われる場合があるから注意しなさい。例えば、みんなは電車の中でかばんをどうやって持っている?(一番前の男子生徒のかばんを肩にかけて)こうやって肩にかついでないかい?
C子:ええっ!ちゃんと下で持っています。
D男:股の間にはさんでいます。
T:なるほど。そういう方法でもいいよね。私は、やっぱりこうやって前にして、足下のスペースを利用するかな。
E男:股の間の方がいいですよ。
T:まあ、荷物が重いときは先生もそうするかな。
F男:でも、先生。ぼく、この間、そうしてたら、「股の間に荷物を置くなっ!」って怒られた。
T:それはさあ、きっとすごく混んでいた時じゃない?それで、みんなが詰めていたときに、君が荷物を置いたまま動こうとしなかったからじゃない?
F男:(・・・)
T:かばんと言えば、小学生のランドセルは邪魔だよねえ。あれって一人分のスペースを取るから、混んでいるときはすごく気になる。まあ、小学生なら…、1年生みたいなちっちゃい子だと仕方がないかあって思うけど。でも、そういう小さい子にもきちんと言った方がいいのかなあ…。
S:(附属小出身者の多くは経験者のはずだが、身に覚えがあるのか黙っている)
T:あとさあ、かばんならいいけど、満員電車の中で、ぎゅうぎゅうになのに、(腕を伸ばすジェスチャー)こうやってゲームをやったり、本を読んだりするスペースを作るヤツがいるよね?
E男:ゲームだったら、そんなに腕を伸ばさないんじゃない?
T:まあ、とにかく、「こんなに混んでるのに、自分だけのスペースを作るんじゃねえ!」
と思うわけさ。
F子:先生、言っちゃたんですか?
T:いや、さすがに言ったことはないけど、何度か言ってやろうと思ったことはある。だから、みんなも気をつけるんだぞ。
S:(顔を見合わせてコソコソ話している)
G子:先生、この間ねえ、私の隣で寝ていたおじさんがねえ、急に起きたの。そうしたら、頭の半分がはげていた。
S:(みんな笑う)
G子:本当だって!
T:あのね。その話は今話していることと関係ないからカットします。では、話を元に戻します。とにかく、かばんの持ち方には注意しよう。それから、おしゃべり。これが一番迷惑だよ。苦情が一番多く来るのもこれ。特に、朝の電車でうるさいと叱られることが多いと思う。
H子:先生、私、帰りの電車の中で「うるさいっ!」って怒られた。
T:それは本当にうるさかったんだろう。
I子:でも、先生、本当に変な人がいたらどうするんですか?
T:だからね、本当に変な人だったら、それはしょうがないけど、そうじゃない場合は、大抵みんなが原因を作っているんだよ。それに気づいていない。
H子:ええっ!私、うるさくなかったもんっ!
T:実はねえ、先生も以前にどこかの中学生を「うるさい!」って注意したことがあるんだよ。
S:(みんな固唾をのんで聞いている)
T:それはね、もう何年も前だけど、先生は所沢駅から始発の電車に乗ってくるんだ。何本か電車を見送ってね。そうすると座れるし、寝ながら池袋まで来られるからね。私だけじゃないよ。その電車に乗る人はみんなそうだ。だから、所沢で乗ったとたん、全員寝ちゃう。
S:(笑う)
G子:そうそう!みんな寝てる電車ある!
T:そうだろう?だから、うるさいヤツがいると頭にくるんだよ。さて、あれはたぶんどこかの私立中学の1年生だと思うんだけど、途中の駅でいつも2人で乗ってくる女子がいて、たいてい先生の前あたりに立つんだよね。ところが、2人は制服がちがうから別の学校に通っているらしく、それぞれ自分の学校の話を大きな声でしてるんだ。しかも、「~の先生が気にくわない」とか「~の教科がつまらない」とか文句ばかり言ってる。信じられるかい?毎日、毎日、池袋まで30分近くも文句ばかり言っているんだよ。
S:(みんな笑う)
T:でだ。毎日30分もでかい声で文句ばかり聞かされてごらん。しかも、こっちは眠いのに、その話が気になって眠れやしない。だから、ある日ついにその2人をしかったんだ。
I男:先生、何て言ったんですか?
T:「君たち、うるさい。いいかげんにしなさい。周りを見てごらん。みんな君たちのことをうるさいなあっていう目で見ているのに、気がつかないの?」ってね。
G子:ええ!先生、こわ~い!
T:別にどなったわけじゃないよ。低い声で言い聞かせるように言ったんだ。
G子:それでも、こわ~い!
T:だってね。先生が言わなかったら、どんなことになっていたかわからなかったから言ったんだよ。
S:(「へっ?」という顔をしている)
T:それはね。先生の左側に座っていた男の人が、ひざの上でこぶしを握って(ジェスチャーで示す)、ビクビクとやっていたんだよ。
S:(みんな笑う)
T:それで、その人の顔を見たら、ものすごい怖い顔をして2人をにらんでいたんだ。ところが、2人はそれにも気づかずペチャクチャやっている。これを放っておいたら、その人が怒鳴りだすんじゃないかなと思って、先に声をかけたんだよ。
H子:先生、それでその2人はどうしたんですか?
T:どうしたと思う?
I男:だまった!
G子:次の駅で降りちゃった。
T:その2人はね、最初はシュンっとしていたんだけど、しばらくしたら居づらくなったらしく、コソコソと他の場所に移動していった。ところが、またそっちでペチャクチャやっているんだよ。
I男:そいつら、バカじゃね?
T:そう思うだろ?きっと「あのオヤジ、うぜえ~」とかなんとか言ってたんじゃないかな。
G子:性格わる~い!
H子:次の日からはどうだったんですか?
T:そうだなあ。確か、二度と先生の近くには来なかったと思う。
S:(みんな笑う)
T:というわけで、きっとその2人も自分たちがどれだけ他人に迷惑をかけているかに気づいてなかったんだと思うよ。だから、君たちだって同じことをしている可能性はある。だから、十分に気をつけなさい。わかりましたかあ~?
S:は~い!
T:それからねえ、今気づいたんだけど、机の上に落書きしている人は消しなさい。
J子:ええ~!先生、せっかく「あけましておめでとう」って書いたのに~。
T:机はね、公共物なんだよ。そんなことは自分のノートに書きなさい。後で教室を見に来てそのままになっていたら、「明日消しに来い!」って電話するからな。
S:ええ~!
J子:先生、そこまでするんですか?
T:当たり前だろ?今消しなさいって言っているのに、無視したんだから。そういえば、以前にこんなことがあったな。ロッカーの荷物をみんなにも持ち帰ってもらうだろ? それなのに、何人かが点検をした後にロッカーにこっそりもう一度入れていった。その生徒には即電話して取りに来させたな。まさか、みんなはそんなことしないよね?
I男:先生、そんなこと考えもしなかったですよ。
T:普通はそうだよね。それからもっとひどいことがあった。その生徒はね、なんと掃除用具ロッカーに自分の荷物を入れて帰ったんだよ。
S:ええ~っ!
J子:そんなところまで点検するんだ…。
B男:先生、その時も電話したんですか?
T:いや、もっときついお仕置きを据えてやった。実はね、気づいたのがちょうど保護者面談の日だったんだよ。教科書とかノートには名前が書いてあるから誰のだかすぐわかった。それで、その子のお母さんにそれを見せて、「お宅のお子さんがやったんですが…」って。そうしたら、そのお母さん、かんかんに怒って、携帯ですぐに家に電話して、娘に「すぐ来なさいっ!」ってどなってた。
J子:えっ?女子だったんですか?
T:そうだよ。男子ならやりそうだけど、女子だったから先生もあきれた。というわけで、自分のことだけを考えて、悪知恵を働かせるような生徒は放っておくわけにはいかないからね。みんなはそんなことをしないように。では、今日の話はこれでおしまい。なんか最後にいやな話で終わったけど、みなさん、よいお年を!
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