0. 入学式予行で話したこと(学級指導につながる学年最初の指導)

(注)この話は、終礼の話の記録を1年生の5月から始めたので、その前にした話の記録がないかと探して収録したものであり、オリジナルの小冊子には載っていません。なお、元の原稿にあったものの中で本書の主旨と関係のない部分は省略しました。

 

【きっかけ・ねらい】

この話は、入学式前日に新入生だけを集めて指導した時に学年生徒全員(205人)に向けて話したものです。入学式の所作指導を担当することを自ら学年主任に申し出て了承してもらい、4月初めの学年会(担任会)で指導方針を他の担任の先生方にも理解してもらうためにあらかじめ書いておいた原稿で示し、了解を得た上で指導をしました。

 

この指導の元々のねらいは生徒に入学式の入場から終了までの所作指導をすることでしたが、同時に生徒の不必要な緊張をほぐすことにありました。特に、新入生の約3分の1にあたる70名の附属小学校以外の小学校から来た生徒の不安感を取り除くことをねらっていました。そして、学年担任団が生徒に対してどのような気持ちでいるのかを示したいと思いました。さらに、その指導が英語科の授業における指導と学級担任としての指導につながることをここで示しておきたいという気持ちもありました。

 

【手順・工夫】

この話の主なねらいが生徒の緊張感をほぐすことにあったので、最初に自分の近くにいる仲間とあいさつや自己紹介などをすることによって、体と口を動かさせて身体と心の両方の緊張感を和らげることにしました。そして、入学式の所作指導を単なる事務的な指導にするのではなく、その中に生徒を納得させられるような話を入れ込んで、生徒が心からその行動を行いたいと思えるように工夫をしてみました。

 

【実際の話(学年会資料の原稿より)】4/7

1.導入 -見知らぬ人の中にいる緊張感をほぐす(自己紹介エンカウンター)-

みなさん、こんにちは~!(→生徒) あれっ?せっかく附属中に入ってきたのに、喜びの気持ちが感じられないなあ。もう1回やってみよう。こんにちは~!(→生徒)

 

おっ、さっきよりはよくなったねえ。でも、先生の期待感からするとまだまだだなあ。もしかして、みなさんはかなり緊張していますか?

 

まあ、新しい制服を着て、初めて中学生としてここに来ているんですから、緊張して当然ですよね。でも、おそらくそれ以上に緊張する理由がある人もいるのではないでしょうか?それはね、自分の周りに知らない人がいて、その人たちに囲まれて座っているというのが理由の人も多いのではないですか? 特に、附属小以外の小学校から来た人の中には、知り合いが一人もいなくて、そんな中でひとりぼっちでいるから、極度に緊張しているという人が多いのではないでしょうか? 附属小から来た人でも、自分の周りに知らない人やふだんはあまりおつきあいのない人がいたら緊張しますよね。かくいう私も、まったく知らない205人の生徒の前で話すのはとても緊張しています。

 

(1) となりの人と自己紹介

さて、これからいい意味で緊張感をもって臨んでもらいたい入学式の予行演習を行うので、それをきちんとやってもらうために、余計な緊張感をとってもらおうと思います。そこで、まずは現在座っている場所の隣の人と自己紹介をお互いにし合ってください。

まだ始めては駄目ですよ。これからやってもらうことを言います。

 

① 自分の両側に座っている人と自己紹介をしてください。すでに知っていててもです。端に座っている人は自分の内側にいる2人目までの人としましょう。

② 自己紹介をする際には、まず相手の目をしっかり見て、握手をしてください。

③ そして、自分の名前と出身校をいいましょう。その他は任せます。

④ 相手の人は、名前を聞いたら、必ず「~さん/くんですね」と確認しましょう。

⑤ 制限時間は全部で1分です。一人と30秒以上話すと時間がなるくなりますよ。

⑥ そのまま始めるとどちらの人と最初に話したらいいか迷いますね。男女とも横に10人ずつ並んでいるので、それぞれ端から2人組になるようなペアから始めてください。何を言っているかわかりますか?(手で示して)この2人、この2人、…から始めてくださいということです。それが終わったら、その反対側の人とやってください。

 

では、どうぞ!(タイマーで1分計時)はい、そこまで!(静かになるのを待って)

 

どうですか?もうとなりの人とは仲良くなりましたね。実は、入学式の入場の際にとなりの人を知らないと困るので、お互いに知り合ってもらいました。

 

(2) 前後の人と自己紹介

では、もう1回やってもらいます。今度は自分の前後の人と自己紹介をしてもらいます。

 

①最初は、前から奇数列目の人が後ろを向いて、偶数列目の人に声をかけましょう。

②2人目は偶数列目の人が後ろを向いて、奇数列目の人に声をかけましょう。

③その他はすべて先程と同じです。目を見て握手をし、自己紹介をしてください。

④今回も時間は計1分です。

 

では、どうぞ!(タイマーで1分計時)はい、そこまで!(静かになるのを待って)

 

どうですか?前後の人とも仲良くなりましたか?今回の活動は、自分の前に座っている人をずっと見つめなければいけませんし、後ろの人の気配を常に感じながら座っていることになるので、お互いに知り合ってもらいました。

 

2.所作指導 -入学式での着座姿勢と起立・礼・着席の練習-  ※省略

 

3.声だし -入学式で元気よく返事をさせるための動機付けと練習-

入学式のハイライト、つまり最も盛り上がる部分は、みなさん一人一人の名前が呼ばれる場面です。全員の名前が呼ばれますので、大きな声で「はいっ!」と返事をして起立します。それを練習しますが、その前に、「はいっ」という返事の練習をしましょう。

 

この返事は2つの意味で重要です。1つはみなさん自身のためです。みなさんはこの「はいっ」という返事に、附属中学校へ入学するぞ!という自分の意気込みを込めてください。2つめはみなさんのご家族に対してです。なぜかというと、みなさんのご家族は後ろに座って、我が子の名前が呼ばれるのを楽しみにしています。その期待に対して、みなさんができるのは、精一杯の声で呼名に対して答えることです。みなさんが大きく、はっきりした声で返事をすれば、きっとご家族は喜んでくれるでしょう。以上、2つの意味で、一人一人が大きな声で、はっきりと「はいっ」と返事してください。

 

では、全員で練習してみましょう。これから「せ~の」と言いますから、その後にみなさんは全員で「はいっ」と言ってください。いいですか。せ~の(→生徒)いいですね。でももっと出そうですね。みなさんが最大限に出すと、この育鳳館の天井が落ちてくるかもしれません。では、みなさんで天井を落としてみましょう。せ~の(→生徒)おお、AA学年の生徒は元気があって、これから楽しみですね。あっ、そうそう。本校では学年主任の名前をとって「~学年」という言い方をします。ですから、みなさんは「AA学年」の生徒です。

 

4.呼名練習 -予行の予行-

(1) 説明

では、次に実際の呼名と返事の練習を一人一人全員(?)に対して行います。やり方は次のとおりです。

 

① 呼名は男子の名前の最初から始まり、女子の最後の人で終わります。学校によってはクラス順に行うところもありますが、本校では学年通しで男子の1番から女子の103番まで呼ぶことになっています。

② 自分の名前が呼ばれたら、「はいっ」と大きな声で返事をして、起立をしてください。

③ 起立をしたら、壇上にいる校長先生と目を合わせましょう。これは、「校長先生、よろしくお願いします」という意味を込めてしてください。

④ では、立ったらいつ座るのでしょうか?それは、次の列の最初の人が呼ばれて返事をした時です。例えば、男子で言えば、最初に一番後ろの3人が順番に呼ばれますね。次に呼ばれるのはその前の列の一番端の人です。その人が呼ばれたら、最初の3人は一斉に座ります。

⑤ では、ちょっとやってみましょう。最初の列が座るまで、つまり4人目まで呼んでみます。本校では、全員の名前を学年主任の先生、つまり今回はAA先生が呼びます。呼ばれたら、先程大きな声で練習したように返事をして起立をしてください。一番最初の「~くん」、君の返事が205人全員を左右するから頑張ってくださいね。(実施)

⑥ わかりましたか?これを繰り返していくわけです。男子の最後の列は、女子の最初の人が返事をしたら座ってください。

⑦ そして、最後の人が呼ばれたら、AA先生が「以上、205名!」と言います。そうしたら、全員がさっと起立してください。

 

(2) 練習

では、やってみましょう。ボーっとして、自分がやることを忘れないように緊張して臨みましょう。(実施)

 

5.入場の練習 -予行の予行-  ※省略

 

◇こんなことまで原稿に書いてあるなんて面白いと思われませんでしたか? 今思い返すと、これがこの後の「終礼の話」を考えて原稿にすることにつながっていったようです。

 

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