この文は "What is this?" の疑問文と同様に比較的導入しやすい文だと思われていますが、はたしてそうでしょうか。例えば、いきなり有名な人の写真を見せて Who is this? と生徒に尋ねて答えさせる導入をよく見ますが、それで生徒はその文の意味や構造を理解できているのでしょうか?そこで答えが出たとしたら、それは最初からその文の意味を知っていた生徒が答えただけでしょう。また、最近は少し進んで誰かのシルエットを見せて Who is this? と尋ねる練習問題も教科書などには示されています。しかし、それをいきなり導入で使ったのではそれも生徒に意味を類推させることに成功したとは言い難いと思います。
そこで、ここでは「⑪ What is this/that?」の導入と同じ考えに立ち、既習の "Is this ~?" の疑問文を復習する中で新たな場面を提供することで "Who is this?" の疑問文とその答え方を導入する方法を紹介しましょう。
では、具体的な導入方法を紹介します。導入過程の中の T: は教員の発言、S: は全体または大勢の生徒の実際のまたは想定される発言、S1:, S2: は生徒個人の実際のまたは想定される発言を表します。なお、発言中の太字は強調して発音する部分です。
<準備するもの>
・前時に使った『サザエさん』の登場人物の顔のイラストと、新たにそれらの裏側にシルエットのイラスト
◇Introduction of the New Expressions
(0) Review of the Previous Expressions
① Recollection
T:(サザエの絵を見せ、自分にスピーチバブルを載せてその部分を指さす)
S: ... This is Sazae.
T: Good. Repeat, "This is Sazae."
S: This is Sazae.
T:(カツオの絵を見せて同様に)
S: This is Katsuo.
T: And...?
S: He is Sazae's brother.
T: Good. Repeat, "This is Katsuo. He is Sazae's brother."
S: This is Katsuo. He is Sazae's brother.
T:(ワカメの絵を見せて同様に)
S: This is Wakame.
T: And...?
S: She is Sazae's sister.
T: Good. Repeat, "This is Wakame. She is Sazae's sister."
S: This is Wakame. She is Sazae's sister.
※この練習で先に生徒から発言を引き出しているのは、前時に学習した内容をどの程度覚えているかを確認するためです。ここでいきなり教師が行ってしまってはそれができなくなります。もし生徒の口からそれが出てこなければ、前時の学習内容が身についていなかったと評価しなければならないでしょう。また、この練習は単に前時の復習というだけでなく、本時の導入をスムーズに行うための“地ならし”でもあります。つまり、場面の設定と新出表現を引き出す表現をここで出しておくという意味があります。
② Oral Practice
※以下同様に、Namihei, Fune, Tarao, Masuo, Norisuke の絵を使って練習をする。
(1) Introduction of the New Expressions ①
① Input of ”Is this ~? Yes, it is. It is ~.”
T:(サザエのシルエットを見せて)Now, everyone. Listen. Is this Sazae? (シルエットを裏返してサザエの絵を見せて)Yes, it is. It is Sazae.(×2) (波平のシルエットを見せて)Is this Namihei? (シルエットを裏返して)Yes, it is. It is Namihei.(×2)
② Check of understanding and Mim-mem ①
T:(サザエのシルエットを見せて)Now, I have a question. Please answer. Is this Sazae?
S: Yes, it is. It is Sazae.
T: Good. Repeat, "Yes, it is. It is Sazae."
S: Yes, it is. It is Sazae. → Mim-mem
T: What is my question?
S: ... Is this Sazae?
T: Good. Repeat, "Is this Sazae?"
S: Is this Sazae? → Mim-mem
※ここでは人物に対しても Is this ~? Yes, it is. It is ~. という表現が使われることを理解させます。前時に肯定文で使っているのでそれほど難しくはないでしょう。答えの文で he/she を使わせないことがポイントです。
(2) Introduction of the New Expressions ②
① Input and practice of ”Is that ~?”
T:(カツオのシルエットを黒板に貼り、遠くから指さして)Question!
S: Is this ...?
T: "this"?
S: Is ... THAT Katsuo?
T: Good. Repeat, ”Is that Katsuo?"
S: Is that Katsuo? → Mim-mem
※他の数名のキャラクターでも同様の活動を行う。
② Input of "Who is that?"
T:(ここで未知の人物<学年主任>のシルエットを見せて)Question!
S: Is that ...?
S1: 誰、あれ?
S2: 知ってる?
T: Come on! Question, please!
S: ....
T: Maybe your question is "Is that ...?"
"Is that え~?"(×2)(「え~」の部分を手で文頭に出すジェスチャーをして)"え~ is that?"(×2)(さらに)"WHO is that?"(×2)
S: Who is that?
T: Again!
S: Who is that? → Mim-mem
※この導入では、目標となる文を言う前に「誰、あれ?」という生徒のつぶやきに見られるようにその後の教師の発言の意味そのままの場面設定ができています。また、"Is that ~?" の文では「え~」の部分が文末にあったものを "Who ~?" の文ではその部分が文頭に動くことを視覚的に示した上で who に置き換えらえるという文の構造も理解させらます。
T: The answer is...?(シルエットを裏返して)It is Mr. Koyama. ※学年主任の小山先生の写真
S: (Laughing)
② Mim-mem and oral practice
※他の学年担任団の先生方の写真のシルエットを使って同様の活動を行い、"Who is that?" と It is Mr./Ms. ~." の口頭練習を行う。
(3) Introduction of the New Expressions ③
① Input of "He/She is our ~."
T:(別の教員のシルエットを見せて)Who is this?
S: Mr. Okada!
T: Right.(表を向ける)Full sentence?
S: It is Mr. Okada.
T: And?
S: He is a Japanese teacher.
T: A Japanese teacher? My Japanese teacher? Your Japanese teacher?
S: My Japanese teacher.
T: Yes. Everyone says, "He is my Japanese teacher." Right? In this case, please say, "He is OUR Japanese teacher."(×2)
② Check of understanding and Mim-mem
T:(別の教員のシルエットを見せて)Who is this?
S: It is Ms. Nakamoto.
T: And?
S: She is ... our math teacher.
T: Good. Repeat, "She is our math teacher."
S: She is our math teacher. →Mim-mem
※この部分はすでに学習済みである He/She is ~. に our という新しい概念の所有代名詞を加えて言えるようになることを目標にしています。後の Oral Practice を生徒自身で行わせるための大切な指導です。
(3) Quick Consolidation of the Grammar Points
ここまで来たところで、生徒が気づいたことを日本語で確認しておきます。英語できちんと言えていれば理解もできているはずですが、中にはそれに気づいていない生徒もいるでしょうから、そのような生徒の理解を助ける意味合いがあります。また、わかっている生徒にも構文を論理的に理解させることを目指します。ただし、この時点では書いて示すのではなく、話しことばのやりとりだけですませるようにします。
T: たった今練習した表現についてまとめてみましょう。どういう意味の疑問文だと思いましたか?
S1: あれは誰?
T: そうですね。そのときの「誰」にあたる単語は何だでしょう?
S: who
T: そうでしたね。それでできあがった疑問文は?
S: Who is that?
T: そうでした。でも、その文の who を使う前に先生は変な文を言っていましたね?
S2: え~ is that?
T: そのとおり。その「え~」は文頭に来る前にはどこにありましたか?
S3: 文末。
S4: Is that え~?
T: そもそも、なぜ「え~」などと言ったのですか?
S5: 誰だかわからなかったから。
T: そうですね。誰だかわからない場合に who を用いるわけですが、その who を置く場所は?
S: 文頭。
T: それって、以前にも同じようにして作る疑問文がありませんでしたっけ?
S: What is that?
T: そうでした。この2つのちがいは?
S: 「何」と「誰」
T: どっちがどっち?
S: what が「何」で who が「誰」。
T: そうですね。答えの文は何という単語から始まりましたか?
S: It.
T: それを聞いたときに何か感じませんでしたか?
S6: なんか、物じゃないのに it を使うなんて変だなと。
T: そうですね。ただ、疑問文 Who is this/that? の this や that を受けて答えているので、人か物かは関係なく it で答えるのが正しい答え方です。答えの2分目は?
※ここでは口頭のみのやりとりとしましたが、より文の構造を明確に示したければ、黒板に上記の話の流れに合うような板書をしていくとよいでしょう。
◇Oral Practice with a Worksheet
今回の目標文の意味を理解し、詳細な使い方も理解できたところで、ハンドアウトを使って自力で言えるようになるまで練習をさせます。
左のようなハンドアウトを渡し、個人やペアで言う練習をさせます。
<課題1>
Who is this? と It is ~. をしっかり言えるかを確認します。
<課題2>
Who is this? に続いて It is ~. He(She) is ~. の答えを連続で言えるかを確認します。
※シルエットになっている教師は、筆者を含む学年担任団6名と筆者以外に1年生を教えている英語科教員2名の計8名です。いずれの先生も "This is ~. He/She is a ~teacher." という表現で既出です。
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