この疑問文は生徒が理解しやすい文だと言われています。しかし、だからと言ってけっして導入が簡単なわけではありません。
例えば、ありがちな導入例として次のようなものがあります。
<導入例①>
教師:(ペンを手に持って)What is this? It's a pen. (教科書を手に持って)What is this? It's a textbook. さて、今私は何を尋ねていたのでしょうか?
生徒:「これは何ですか?」です。
さて、上記の導入にはダメな点が2つあります。1つは、誰もが知っている現物を持って「これは何ですか?」と尋ねていることです。最初からわかっているものに対して「何ですか?」と尋ねる必要はありません。2つ目はいきなり生徒に意味を尋ねている点です。上記の場合、生徒が正しい答えを言ったのは教える前からこの疑問文の意味を知っていたからということ以外に考えられません。上記には「これは何ですか?」と尋ねていることがわかる状況設定がまったくないからです。
<導入例②>
教師:(何かのシルエットを見せて)What is this?
生徒:It's a pen!
教師:No!
生徒:It's a pencil!
教師:Right! (シルエットの答えを見せて)さて、先生は今何を尋ねていたのでしょう?
生徒:「これは何ですか?」です。
上記は<導入例①>の反省から考え出された導入法で、何代か前のある教科書にも上記のような導入方法、つまり何かのシルエットを見せて導入する方法が載っていました。これなら生徒に「何だろう?」と思わせてから尋ねるので、状況設定としては格段に良くなりました。しかし、1つだけ残念な点があります。それはこの疑問文の構造がこの導入ではわからないという点です。もちろん、この後にこの英文を黒板に書いて演繹的に説明することはできますが、工夫をすれば導入時にこの疑問文の構造を帰納的に理解させることができるのです。
そのヒントは前回(⑩ Is this(that) a/an ~? Yes, it is./No, it is not. It is a/an ~.)の導入にあります。その活動の延長としての導入法を考えると意外にすんなりこの疑問文の導入を思いつくことができるでしょう。ぜひ先にそちらをご覧になってください。
前置きが長くなりましたが、以上のような欠点を補う方法として本校(筑波大学附属中学校。実際には筆者にとっては「元勤務校」)で長年行われている導入方法を紹介しましょう。T: は教員の発言、S: は実際のまたは想定される生徒の発言、S1:, S2: は生徒個人の実際のまたは想定される発言を表します。なお、発言中の太字は強調して発音する部分です。また、「スピーチ・バブル」とは台詞の吹き出しマークを描いた絵カードのことです。平叙文を言わせるための空のスピーチ・バブルと、その裏側に疑問文を言わせるための「?」マーク入りのスピーチ・バブルの2つを用意して使い分けます。
◇Introduction of the New Expressions
(0) Review of the Previous Expressions
① Recollection 1(Question Form)
T:(持ち主不明のペンを持って)Whose pen is this? Is this your pen?
S: No, it is not. It is not my pen.
T: Oh,.... This is not my pen. It is not your pen. It is no one's pen.
(スピーチ・バブルを自分の頭上に置いて)
T: In this case you say, ...?
S: This is a pen.
T: Question!
S: Is this a pen? →Mim-mem
② Recollection 2(Answer Form)
T:(MDのシルエットを見せて)Is this a CD?
S: No, it is not. It is an MD. →Mim-mem
T:(卵の形のシルエットを見せて)Is this an egg?
S: Yes, it is. It is an egg.
T: No. (シルエットを裏返して)It is a ball.
※『巨人の星』で星飛雄馬が投げた魔球の形(楕円形)のボール
S: えええ~! ずるい~!
(1) Input of the New Expressions
① Oral practice for introducing the new expressions
T: Now, it's your turn. Please make up a question. (定規のシルエットを見せて)Question!
S: Is this a ruler?
T: No, no. I say, "this", but you say...?
S: That.
T: That's right. Question!
S: Is that a ruler?
T:(表を見せて)Yes, it is. It is a ruler.
※他にもいくつかのシルエットで質問文を練習する
② Input of the new expressions
T:(初登場のシルエットを見せて)Question!
S: え?
S1: 何、あれ?
S2: 何だ、あれ?
T: Question!
S: ...Is that a ...?
T: Is that a ...? Is that a ...? Is that a え~? (ここで生徒から向かって左から一語ずつ手のひらで単語の位置を示しながら)Is, that, a, え~? Is that a え~? (次に「え~」の部分に置いた手のひらを文頭に持ってくるようにして)え~! is that? え~! is that?
S: (Laughing)
T: え~! is that? (「え~」の部分を入れ替えるジェスチャーをして)What is that? What is that? What is that?
※ここの肝は、Is that a ~? の「~」の部分がわからないという状況を設定し、その部分を文頭に持って来るということを音声と視覚で示すということです。これによって既習の疑問文の形を維持しながら不明な部分のみ what に変えて文頭に出すという構文を理解させることができます。
(2) Check of Understanding and Mim-mem
①(別の初登場のシルエットを見せて)
T: Now, it's your turn. Is that a え~? Right? Then, question!
S: What is that? →Mim-mem (Choral → Individual)
②(別の初登場のシルエットを見せ、「?」のスピーチバブルを自分の頭上に載せて)
T: Question!
S: What is this? →Mim-mem (Choral → Individual)
T: The answer is.... (シルエットを裏返して)It's a panda!
S: えええ~!
※ここで「今のはどんなことを尋ねたのですか?」などという意味の確認をする必要はありません。なぜなら(1)の時点でその意味が生徒の発言から出てきているからです。つまり状況設定から明らかに「何、あれ?」「何、これ?」という意味であることはわかっています。
(3) Oral Practice
①(別の動物のシルエットをいくつか見せて)
T: Question!
S: What is that?
T: Answer!
S: It is a ... kangaroo/monkey/bear/dog/cat/mouse/....
※この活動ではシルエットの答えが「何だろう?」という興味・関心を利用して、What is that? の疑問文をしつこいくらいに練習します。
②(①で出てきた動物の単語の発音練習をします)
ア)最初は個々に練習します
イ)続いてリズムに乗って練習します
◇Oral Practice with a Worksheet
左のようなワークシートを使って本時に学習した表現を口頭練習します。なお、ワークシートに英文が書かれていないのは、本校の方針として文字を見せずに口頭導入及び練習をしているからです。
(1) 最初に各課題をまず全員で練習をします。本校ではこの時点でICレコーダーに教師や生徒の発言を録音し、家庭で復習するときの模範の音源としています。
(2) 次にペアで練習をします。片方が出題役、もう一方が答える役です。もちろん、役を交代してもう一度行います。
(3) 最終的には家ですべての表現を口頭で言えるように練習する課題を出します。
具体的な細かい指導過程は、① My(your)~? Yes(No), my(your)~. とほぼ同じなので、そちらをご覧ください。
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