一般動詞(三単現)の指導

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はじめに
中学校1年生にとって、一般動詞の三単現の活用は最初の難関と言われます。ここで初めて複雑なルールに出会い、理解できない者が急増するというわけです。もちろん、私が知る限りでは、過去にこのことを実証的に研究した例はありません。しかし、実際の生徒の様子を見ていると、この教師の「感」もあながちまちがいとは言えないようです。したがって、生徒達にできるだけストレスを与えない指導法を工夫したいものです。

 

そこで今回は、一般動詞の三単現の用法を、①既習事項を活用してオーラルにより導入し、②場面を重視したコミュニケーション活動の中で練習させ、③わかりやすい文法説明を行うことで理解を深めさせる、という流れで指導する方法を示したいと思います。なお、前回と同様に、自分が実際に行った授業の記録をもとに指導の一方策を例示することにします。

1.既習事項を活用した導入と練習
一般動詞の一人称と二人称の用法はすでに学習してあるわけですから、ここではそれを活用してオーラル・イントロダクションを行います。なお、できるだけインターアクションを取る形でもっていき、生徒の頭の中を活性化させるようにします。

 

<第1時> ※文法指導の箇所のみ抜粋
① Oral Introduction
T: Let's talk about sports. I like tennis. So I say, "I like tennis." And you say?
S: You like tennis.
T: Please repeat, "You like tennis."
S: You like tennis.
T: Do you like tennis, Tanaka-kun?
S1: Yes, I do.
T: Oh, you like tennis? Everyone, Mr. Tanaka likes tennis. He likes tennis.
 ※ play the piano についても同様に。
T:(別の生徒に)Do you like tennis, Morii- kun?
S2: Yes, I do.
T: Oh, you like tennis. Then, everyone, you say...?
S: Mr. Morii likes tennis.
T: Right. He likes tennis.
 ※ She plays the piano.も同様に。
② Mim-mem
※特に[s][z]の音を強調して練習させます。
③ Oral Practice(Chorus→Individual)
次のPCを示して、それぞれの人物の発言から彼らの立場を客観的に言う形で練習させます。[ts]という音があることにも注意させます。
(平成5~8年度版 New Horizon Book 1より→省略)
④ Consolidation
[s][z][ts]という音からつづりを想像させます。
④で練習した文をノートに書かせます。

<第2時> ※文法指導の箇所のみ抜粋
① Review(Recollection of the Main Point)
前時のPCを使って表現を思い出させます。
T: Look at this picture. Keiko is saying,"I like pop music." In this case we say, "Keiko likes pop music." Repeat.
S: Keiko likes pop music.
T: Bin is saying, "I play soccer every day." Then we say ...?
S: ...Bin...play...
T: "Play"?
S: Bin plays! Bin plays soccer every day.T: Good! Bin plays soccer every day.
S: Bin plays soccer every day.
 ※残りの人物についても同様に。
② Pair Practice
目標文が正しく言えるようになったかを、次のワークシートを使ってペアで確認させます。
 (省略)
③ Oral Introduction
※同じPCを使って
T: Keiko is saying, "I like pop music." Do you like pop music? Tahata-san?
S3: Yes, I do.
  ※同様に何人かに尋ねます。
T: This time, I answer. Please ask the question. Everyone, question!
S: Do you like pop music?
T: Yes, I do. I like pop music. Do I like pop music? Yoshida-kun.
S: Yes, ...you...do.
T: Right. Please say, "Yes, you do." How about Keiko? Does Keiko like pop music?
S: ...?
T: Does Keiko like pop music? I say a new word. What is it?
S: "dazu"
T: Right. It's "does". Keiko is not "you" or "I". What is the word for Keiko?
S: "she"
T: Right. In this case we use "does", not "do". Now, let's practice. Keiko likes pop music. Question!
S: Does Keiko likes pop music?
T: Oh, oh. You say "does". Then you say "like", not "likes". O.K.? Question!
S: Does Keiko like pop music?
T: Answer!
S: Yes, she ... does?
T: That's right! You're very smart! Next. Does Bin play soccer every day?
S: Yes, he does.
T: Does Bin play baseball every day?
S: No, he ... does ... doesn't?
T: That's right!
S4: え~! でもやってるかもしれませんよ。
T: You're right. But let's think, 考えま しょう, he doesn't play baseball.
④ Mim-mem
疑問文、答えの文ともに練習させます。
⑤ Oral Practice
残りの登場人物についても練習させます。
⑥ Consolidation
doesのつづりを想像させます。音からはわからないので、動詞の-s(-es)が無くなってしまったことから想像させてみます。そして、4人のうちの誰かについて尋ねる文と答えの文をノートに書かせます。

2.場面を重視したコミュニケーション活動
さて、ここまでに十分な口頭練習ができましたので、少しだけ場面を重視した活動ができるようにしましょう。

<第3時> ※文法指導の部分のみ抜粋
◎各ステップの主旨と実施上の留意点
① Step 1は、対話活動中に答えを考えたりする無駄な時間をなくすためのものです。
② Step 2は、最終的な目標(Step 3)を行うための情報集めの活動です。活動の全体像をつかませるために、事前にいくつかの絵を使って質問の仕方と答え方を練習します。
③ Step 3は、今回の目標活動です。4人グループ(2ペア)で行いますが、各ペアで協力し合いながら情報の交換をし合います。
④ Step 4は、情報を正しく伝えたり聞き取れたりしたかを当事者で確認し合うものです。
⑤ Step 5は、活動毎に自分の取り組み姿勢を反省させ、活動の質を維持・向上させるためのものです。このような小さなことの積み重ねを怠らないことが大切です。
⑥ この後、集めた情報を用いて、その人のことを説明する英文を書かせ、まとめとします。

3.疑問を解消する文法説明
生徒はまず、be動詞と一般動詞の疑問文・否定文の作り方のちがいに戸惑います。さらに、人称によって表現が変わると知って、頭の中が大混乱になってしまう生徒も多いでしょう。

 

そこで何とかうまい説明方法がないかというわけですが、実は私も少し前まで手つかずでした。しかし、今から3年前に同僚の先生から面白い方法を勧められ、それを自分でも納得のいくように膨らませてみました。それは次のとおりです。
・ do +動詞 か does+動詞 を選択する
・do と does は動詞の後ろに隠れている!
まず、主語によって do +動詞 か does+動詞が選択されます。
・I + do
・He + does
すると、文中に入った途端、恥ずかしがり屋の do と does は動詞の背後に隠れてしまいます。しかし、doesは do よりも体が大きいので、動詞の後ろにお尻が飛び出してしまうのです。

 

そして、疑問文や否定文(そして強調)ではこの隠れている do や does がついに勇気を出して飛び出してきたというわけです。 

 

もちろん、この説明方法はあくまでも生徒を納得させるための方便で、英文の成り立ちを正確に説明しているわけではありません。また、doesの -s はどこから来たのかということも説明していません。しかし、少なくとも今まではまったく説明のつかなかった部分を、少しでも論理的に説明できるようになったのではないでしょうか。私がこの説明を授業で行ったところ、生徒からは「オー!」という声と共に大拍手が起こりました。「とにかく、一般動詞の文ではdo か does を持ち出せばいいんでしょ。」と 無理矢理に納得させられていた生徒には、まさに「目から鱗が落ちる」説明だったようです。

 

なお、この説明方法は語学教育研究所によって開発されたものを基にしています。本誌第14号の pp71-74でも四方雅之氏が解説をなさっています。説明に至るまでのアプローチの方法は多少ちがいますが、そちらもご参照ください。

おわりに
生徒に文法を理解させるのはとても大変です。しかも、今回のようなグレー・ゾーンを含むものは一筋縄ではいきません。まったく説明しないと中途半端な理解のままになるでしょうし、逆に詳しく説明したからといって理解できたはずだと考えるのは教師の思い上がりです。したがって、授業の中で繰り返し言語活動を行わせ、折りに触れて説明を加えることで、スパイラルに積み上げていくようにしたいものです。

<参考文献>
肥沼則明(1997)「コミュニケーション活動と文 法指導の両立」 第23回全国英語教育学会 福井大会問題別討論会資料

 

楽しい英語授業』第17号(明治図書、1999.7)に掲載されているものを加筆・修正しました。

 

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「一般動詞(三単現)の指導」
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