(1) 活動の必要性を認識する
新出表現のコミュニケーション活動も大切ですが、それだけではせっかく習った過去の表現までは使えるようになりません。そこで、既習事項を総合的に使わせる活動をぜひ授業に取り入れる必要があります。しかもそれをスパイラルに練習することによって力を積み上げていくことを考えると、毎時間のように行う、いわゆる「帯活動」のように設定できることが望しいと思います。
そのような活動としてよく行われるのが、スピーチやチャットなどの活動でしょうか。「コミュニケーション活動」のページで紹介している勤務校の What Am I? は、全員を、同時に、聞く・話す活動に取り組ませることができると、一時期全国各地で行われたことがあります。
もっとも、オープンエンドの活動は、生徒に活動の主体を預けるので、教師がコントロールする活動に比べると上手く実行できないのではないかという心配があって、躊躇する先生もいるかもしれません。しかし、最初に上手に仕込み、注意を怠らなければ、順調な活動にすることができます。
(2) 活動のバリエーションを考える
ただ、なかなかいろいろなタイプの活動をするのは難しく、同じことを繰り返すなどして、活動が単調になりがちです。そういったときに、同じ活動でも少し異なったことを取り入れると、その活動がまた新たな局面に入ることがあります。
ここでは「チャット」を例にして、そのバリエーションを紹介します。チャットは多くの教科書に活動が載っているので、実際に授業で行ったことがある先生も多いでしょう。先生方は教科書等に載っている標準的な活動を超えるようなチャットをしたことがあるでしょうか。
① Caterpillar Chat
この活動を実り多いものにする方法は、同じ活動をペアを変えてどんどんやらせることです。勤務校では、2列毎に並んだ生徒を時計回りに回転させるように相手を変えて、連続してチャットを行っています。勤務校ではこれを Caterpillar Chat と読んでいます。隣同士のペアをキャタピラのようにずらして(回転させて)替えていくことから名付けました。
この活動の効果は、同じ活動を繰り返させることで生徒にやり直しの機会を与えることです。生徒自身が何度も何度もやっているうちに、少しずつ自己修正して上達していくことができます。もう1つの効果は、相手を変えることで、同じ内容でもフレッシュな気持ちで臨めることです。また、相手が変わると内容が変化して、思考が広がっていく経験ができることもあげられます。
② Reporting
チャットでは相手からいろいろな情報を得ることができます。それなのに、時間が来たらそれで終わりというのはもったいないでしょう。そこで、得られた情報を第三者に伝えるという活動をポスト・アクティビティーとして設定します。
この活動の効果は、断片的に覚えている内容を自分のことばで第三者に客観的に伝えるいう活動を行うことで表現力を鍛えることができることです。少しハードルが高い活動なので、ここでも「それは附属や私立だからできる」という先生もいるかもしれません。しかし、このような得られた情報を第三者に伝えるという活動を行っている先生は、公立中の中にも大勢います。最初から「できない」と諦めるのではなく、「鍛えればできるようになる」と挑戦をしてみてください。
(3) 振り返りの活動を設定する
学習指導要領では、主体的で深い学びを実現させる方法として、振り返り学習を奨励しています。実は、勤務校では以前から何か活動すると必ず振り返りの課題を与えています。多くの場合は家庭学習として行わせますが、授業中に行うこともあります。筆者は後者の例を平成26年度の公開授業で約200名の参観者の方々に見ていただきました。
そこで行った活動は以下のような内容です。
・「週末に何をするつもりか」というチャットをペアで行い、その会話を録音する。
・ペアで録音を聞き、2人のすべての発言を書き起こす。
・ペアでより良い表現や言いたかった表現を考えて書く。
・代表者に話し合った内容を発表してもらい、全員でそれを共有して考える。
・生徒だけでは解決できなかったことは教師が生徒とやりとりしながら教える。
ここまで丁寧に行うと授業の多くの時間を取られますが、他の活動を削ってでもやる意味がある活動です。生徒もこの活動をとおして「これまでは知らない表現があるとあきらめてしまっていたが、なんとか自分が知っている表現で言い直してみることの大切さがわかった」と言っています。
(4) 活動内容・方法の見直しを図る
コミュニケーション活動を始めたら、途中で修正することが大切です。それは、たとえその活動が考え抜いて始めた活動でも、生徒の実態とずれていたり、本質を見失ったまま続けている場合もあるからです。
一番簡単な見直し方法は、同僚にその活動を見てもらって感想を聞くことです。そうすることで、自分では考えつかなかった点を修正できて、活動が進歩します。筆者もかつて What Am I? という活動を開発して行っていましたが、同僚の指摘で活動内容を大きく向上させた経験があります。お互いの授業を見せ合うのは恥ずかしい気もするかもしれませんが、それが結果的には自分の利益になりますから、ぜひやってみてください。
なお、その他の具体的な活動例は、以下のページでお読みいただけます。
・「コミュニケーション活動」
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