新出文法事項を導入したら、単なる機械的な練習だけでは不十分だということで、その文法事項を使ったコミュニケーション活動を行うことがあります。そうした活動は、「授業は英語で」を印象づける場面として多くの教師が公開授業等で見せてくれます。ここでは、そのような活動を行う際の留意点を述べます。
(1) 目的を考えた活動を設定する
コミュニケーション活動として新出文法事項を使った活動を目的は、その表現を場面のある環境で使わせて身に付けさせたいということでしょう。ですから、その活動を行うと、どのような力が身に付けさせられるのかを意識して行いたいものです。
例えば、表現のバリエーションを増やすなら、できるだけ多くの表現を使わせたるようにします。構文をつかませるのなら、できるだけシンプルな表現を繰り返し使わせるようにした方がいいでしょう。もちろん、こららの組み合わせの活動を設定するのが実際的だと思います。
(2) 目的に合った視覚資料を提示する
例えば、生徒個人にインタビュー活動をさせたいときの補助資料を考えてみましょう。多くの先生方は、各生徒にきちんと活動させるためのワークシートを作ると思います。では、What food do you like? I like ~.のやり取りをさせるためのワークシートはどのようなものになるでしょうか。
筆者が過去に見た公開授業では、このような活動を行う際に、使わせたい英文がすべて書かれているワークシートを生徒に持たせることが多かったのですが、これでは活動目的が達成できません。それはなぜでしょうか。
それは、ワークシートに生徒が使う英文がズバリ書かれているので、生徒は結局その英文を「読んでいる」だけで「話している」活動をしていないのです。このような活動をさせていると、その時はスムーズに活動しているようでも、文字を読まなければ言えない状態のまま授業を終えてしまいます。そして、このような活動を続けていると、結局は活動しているように見えるだけで、力はついていないのです。
この活動の目的は、定着させたい構文の聴覚心像(acoustic image)をつかませることです。ならば、ワークシートには英文は示さないで、絵やヒント語などを示すにとどめるようにします。これはワークシートだけの話ではなく、黒板に生徒にリピートさせたい英文を書くかどうかということにも関係します。
「それでは自分の生徒は活動できない」と思った先生がいるかもしれません。もしそう思うのでしたら、言えるようになるまで事前に徹底練習してから活動させてください。それでも低学力の生徒のために英文を示したいということがあれば、せめて裏側に例文を載せたり、活動時は必ず裏返したり折ったりさせて、わからなくなったら見て確認してもよいというようにします。
(3) 技能統合型の活動を仕組む
平成元年の指導要領改訂で中学校でコミュニケーション活動がはやり出したときに、高校の先生方から高校入学時に基本的な学力が身に付いていないという苦情が多く寄せられました。中学校の教師としては、聞く・話すの活動に慣れ親しませたのだから、文句など言わないで、高校の先生もしっかりコミュニケーション活動を行ってほしいなどと思ったものです。
しかし、もしそうした活動が上滑りなもので終わっているとしたら、やはり中学校の教師にも責任があると思います。「上滑り」活動と言うのは、「言っておしまい」「聞いておしまい」のような活動を指します。耳や口だけでなく、目や体も使ってできるだけ多くの感覚で言語を身に付けさせたいものです。
そこで、単技能ではなく、複数技能を統合的に使う活動を仕組む必要が出てきます。例えば、「聞くこと」「話すこと」で得られた情報を「読むこと」「書くこと」で締めるという方法です。逆に、「読むこと」で得られた情報を「話すこと」で伝え、それを「聞くこと」で理解して「書くこと」で締めるという活動も考えられます。
要は、複数の技能を上手に組み合わせて、頭をいろいろと使わせて定着させることが重要です。
なお、実際の授業でどのように活動を行っているかの例は、以下でお読みいただけます。
・「英語で行う中学校1年生の授業:ケンちゃんといつでもティーム・ティーチング全台詞」
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