5. 「主体的・対話的で深い学び」について

これは、今回の学習指導要領の改訂の中で最も大切な部分の1つです。ところが、「なんとなくわかったようでわからない」とか、「とらえどころが無くてよくわからない」とも言われている点でもあります。そこで、ここでは『解説』編などをもとに詳しく見ていき、筆者の視点でわかりやすくまとめてみようと思います。

 

一見すると、流れのある1つの表現のようにも見えますし、「主体的・対話的で」が修飾語で「深い学び」が被修飾語のようにも見えますが、中央教育審議会答申や『解説』編などを読むと、「主体的な学び」、「対話的な学び」、「深い学び」に分けてそれぞれ説明しているので、ここでも3つに分けて見ていきます。

 

(1) 『解説 総則編』から

『解説 総則編』の「第3章 教育課程の編成及び実施」→「1. 主体的・対話的で深い学びの実現に向けた授業改善」には次のように説明されています。※青字は原文。太字は筆者による。

 

○主体的な学び

学ぶことに興味や関心をもち,自己のキャリア形成の方向性と関連付けながら,見通しをもって粘り強く取り組み,自己の学習活動を振り返って次につなげる「主体的な学び」

 

○対話的な学び

子供同士の協働,教職員や地域の人との対話,先哲の考え方を手掛かりに考えること等を通じ,自己の考えを広げ深める「対話的な学び」

 

○深い学び

習得・活用・探究という学びの過程の中で,各教科等の特質に応じた「見方・考え方」を働かせながら,知識を相互に関連付けてより深く理解したり,情報を精査して考えを形成したり,問題を見いだして解決策を考えたり,思いや考えを基に創造したりすることに向かう「深い学び」

 

これに対して、『解説 外国語編』にも「主体的・対話的で深い学び」についての説明はありますが、教科独自の視点からの記述はありません。

 

(2) 中央教育審議会答申から 

(1)の最後に記した点については、中央教育審議会の『幼稚園、小学校、中学校、高等学校及び特別支援学校の学習指導要領等の改善及び必要な方策等について(答申)』(平成28年12月21日)の「12. 外国語」に次のように記されています。

 

○主体的な学び

「主体的な学び」の過程では、外国語を学ぶことに興味や関心を持ち、どのように社会や世界と関わり、学んだことを生涯にわたって生かそうとするかについて、見通しを持って粘り強く取り組むとともに、自分の意見や考えを発信したり評価したりするために、自らの学習のまとめを振り返り、次の学習につなげることが重要である。このため、コミュニケーションを行う目的・場面・状況等を明確に設定し、学習の見通しを立てたり振り返ったりする場面を設けるとともに、発達の段階に応じて、身の回りのことから社会や世界との関わりを重視した題材を設定することなどが考えられる。

○対話的な学び

「対話的な学び」の過程においては、他者を尊重した対話的な学びの中で、社会や世界との関わりを通じて情報や考えなどを伝え合う言語活動の改善・充実を図ることが重要である。このため、言語の果たす役割として他者とのコミュニケーション(対話や議論等)の基盤を形成する観点を資質・能力全体を貫く軸として重視しつつ、コミュニケーションを行う目的・場面・状況に応じて、他者を尊重しながら対話が図られるような言語活動を行う学習場面を計画的に設けることなどが考えられる。

○深い学び

「深い学び」の過程については、言語の働きや役割に関する理解、外国語の音声、語彙・表現、文法の知識や、それらの知識を五つの領域において実際のコミュニケーションで運用する力を習得し、実際に活用して、情報や自分の考えなどを話したり書いたりする中で、外国語教育における「見方・考え方」を働かせて思考・判断・表現し、学習内容を深く理解し、学習への動機付け等がされる「深い学び」につながり、資質・能力の三つの柱に示す力が総合的に活用・発揮されるようにする。このため、授業において、コミュニケーションを行う目的・場面・状況等に応じた言語活動を効果的に設計することが重要である。

 

(3) まとめ

以上のことを総合すると、英語科における「主体的・対話的で深い学び」とは次のような生徒の姿(学習活動)にまとめられると思います。

 

・外国語を学ぶことに興味や関心を持ち、見通しを持って粘り強く取り組む。

・自らの学習のまとめを振り返り、次の学習につなげる。

・他者を尊重した対話的な学びを行う。

・情報や考えなどを伝え合う言語活動を行う。

・実際のコミュニケーションで運用する力を習得して活用する。

・思考・判断・表現し、学習内容を深く理解し、意欲的に学習する。

 

そして、上記のような学びを実現するためには、私たち教師は次のようなことに留意して授業を行わなければならないとまとめられるでしょう。

 

・コミュニケーションを行う目的・場面・状況等が明確な言語活動を設定する。

・学習の見通しを立てたり振り返ったりする場面を設ける。

・発達段階に応じて、身の回りから社会や世界との関わりを重視した題材を設定する。

・他者を尊重しながら対話が図れるような言語活動を行う学習場面を計画的に設ける。

 

いかだったでしょうか。「学習指導要領」本編とその元になった「中教審答申」、そして学習指導要領の「解説」をさらに易しく“解説”してみましたが、「主体的で対話的な深い学び」の言わんとしていることをご理解いただけたでしょうか。筆者自身もそれによって「わかった」ような気がしていますが、しばらくするとまた忘れてしまいそうなので、そういうときはまたここに戻って来てみようと思っています(笑)。

 

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