勤務校におけるロイロノート遠隔学習指導の位置づけ構想図(研究部作成)
筆者の学校では、臨時休校になりそうになった段階で研究部がいろいろな学習支援の方法を探し始め、3月の会議でロイロノートによる学習指導が提案されました。同アプリは、元々は遠隔授業を想定して開発されたシステムではありませんでしたが、インターネットを使うという点から、それを教室内の教師と生徒の間ではなく、学校と家庭の間で利用しようというのがその主旨でした。
(1) 期待された点
当初は、一部の先生を除いて誰もその存在すら知らないシステムでしたが(筆者もその一人)、提案を聞いているうちにこの方法がもっとも良い「遠隔学習指導」になるかもしれないと思われました。
そのように思われた一番の理由は、Zoomのようなリアルタイムの指導ではなく、生徒が自分のスケジュールに合わせて学習ができるということでした。特に、ズームによる指導はその場で受けられなければやり直しがきかず(当時は録画して再配信できることを知りませんでした)、実行途中にトラブルが起こったり、そもそも最初から受信できない生徒がいた場合の対処が課題になっていました。このシステムであれば、そうした突発的なトラブルを気にせずに課題に取り組ませられると思われました。
また、当時はこうした遠隔学習指導は4月から学校が始まるまでの短期間の散発的な利用になるであろうという見通しもあり、リアルタイムの通信システムではできない確実な課題の提示と提出がシステムで可能であるということは大きな魅力の1つでした。また、5月の連休まで臨時休校が延長されたとしても、それまでの間の暫定的なものになるだろうと考えられていたこともありました。
(2) 疑問視された点
一方、当初から適切な学習指導の方法であるのかということを疑問視する声もありました。
第一に、生徒の学習時間を拘束しないので、はたして全員がきちんと課題をこなしてくれるかどうかが心配されました。これについては、提出状況をこまめにチェックし、Zoomによるホームルームや個別の電話で指導することになりました。
また、それ以前の問題として、この指導が可能なIT環境が各家庭にあるかということも問題になりました。これに関しては、4月からの約1ヶ月間で調査を行い、視聴が困難な家庭には学校のタブレットを貸し出す等の方法で対応することになりました。
(3) 本格使用に向けての準備
ところで、生徒にとっても教員にとっても初めて利用するシステムであったので、本格的な運用を前にシステムに慣れておく必要がありました。そこで、4月中にホームルーム活動をZoomとロイロノートを併用して行うことになりました。例えば、クラス替えをすれば必ず行うであろう自己紹介をロイロのカードで提出してもらい、それをみんなで共有するというものでした。特に、1年生はお互いのことがまったくわからない状態でしたので、Zoomによるホームルームと並行して行うことで、視覚情報を手軽に示せるロイロノートの強みを活かし、効果的にお互いの理解を深めることができたようです。そしてもちろん、その作業を通じてロイロの扱いにも慣れることもできました。
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