定期テストの結果(得点)は、その学期の評定を付けるための大事なデータとなります。しかし、「試験が終わったからと言って、それで終わりではない」というのは、多くの先生方が共通して持っている認識でしょうし、実際にご自身の生徒たちにそのように指導しているではないかと思います。そこで、ここでは評価観点別問題とともに長年にわたって本校の英語科教員全員が共通実践してきているテスト結果を形成的評価に生かす方法を紹介します。
(1) 評価観点別結果のフィードバック
評価観点別問題を出題しているわけですから、それぞれの評価観点の大問毎の結果を生徒にもわかりやすくフィードバックしたいものです。そこで、解答用紙には大問毎の部分点を記入する欄と、それらをさらに「表現」「理解」「知識」という観点別評価の参考データにできるような中集計点を記入する欄を設けています。なお、令和3年度に施行された新学習指導要領に合わせて、中集計点の欄を「知識・技能」と「思考・判断・表現」に編成し直す予定です。
採点時には各大問の部分点は手書き点数で書き入れますが、集計時にはそれをパソコンでエクセルの表に打ち込むと中集計点と合計点が自動計算されるようにしてあり、それらの点数を解答用紙の該当箇所に手で書き入れています(下の実際の解答用紙参照)。これだけでも、生徒に学習の成果があがった箇所と学習が足りなかった箇所を意識させることができます。
2年学年末考査の解答用紙(B5判2枚をB4判に印刷。実際には3枚目(裏面)もあるが省略)
しかも、パソコンに打ち込んだ各評価観点のデータがあるので、それぞれについて学年全体の結果をフィードバックすれば、各生徒に自分の学習課題を意識させることができます。そこで、本校英語科では全学年で「資料1」のような評価観点別達成度グラフ(レーダーチャート)を生徒に渡しています。そして、そこに自分の各データを記入させて図を描くことで、自分の課題点を明確にさせています。図表には平均点も示されているので、同じ学習を行った仲間の中での相対的な達成度も意識できるようになっています。
また、必ずしも全員の共通実践ではないのですが、筆者が主に担当する学年では「資料2」のような度数分布表を、総得点だけでなく評価観点別についても示したもので生徒に渡すことがあります。
資料1 評価観点別達成度グラフ
(レーダーチャート)
資料2 得点分布表
(総得点・評価観点別得点)
もっとも、このような詳細なデータを示すことは、過度な競争意識や生徒間の上下意識、あるいは下位生徒の劣等感を助長するという考えもあるかもしれません。しかし、この後に紹介する主体的な学習をしっかりと行わせる資料としてはとても大切なデータなのです。先生方が採用する場合はそのあたりのバランスをよく考えてから実施してください。
(2)「テストノート」の作成
本校では、定期考査後に「テストノート」という課題を生徒に課しています。テストノート作成は数十年も前から行われている課題です。英語科以外では、国語科、数学科、理科が実施しています。
この指導は、おりしも新学習指導要領で重視される「主体的で対話的な深い学び」を行うための大切な要素の1つである「振り返り」の学習とその目的を共有するものと言えるでしょう。生徒が自らの力で自分の学習を見直し、自分に合った学習内容・方法を生み出すための形成的評価に試験の結果を利用しようというものです。
英語科の場合、次のような課題を与えるのが全学年で共通した指導です。
① 問題用紙、解答用紙、放送台本の貼付
② テストのやり直し(別紙の解答用紙準備)
※放送問題は録音させて持ち帰る。
→コロナ禍でロイロノートを使用していた時代はロイロノートに放送問題をアップする。
→タブレットを使用するようになってからはタブレットで持ち帰る。
③ レーダーチャート等の資料の作成・貼付
④ 誤答分析または正答分析(=正答への道筋を解説すること)
⑤ 過去の学習の反省と今後の学習への目標
この指導の“きも”は「④ 誤答分析または正答分析」です。課題の方向性とやり方の例は示しますが、実際に行う内容は各生徒が自分で考えて決めます。そして、自分の解答を自分で振り返ることでより深く学習内容を理解したり新たに気づいたりします。
もちろん、この指導を行うためには、1年生のときから step by step で丁寧に指導する必要があります。また、途中で課題解決活動がマンネリ化しないように、学習の進度に合わせて課題内容も変えていきます。
ここでは、そのような指導を行うための具体的な資料のいくつかをご紹介しましょう。なお、残りのものも含めて3年間の指導の全資料は「3. 本校の定期考査問題と事後指導の実例」において実物のPDFファイルとして公開しています。
1年前期中間考査後の指導資料
1年後期中間考査後の指導資料
このような指導を行い、生徒に自分のテスト結果を分析させて、その先の学習目標を考えさせるようにしています。テストノートの作成は大変重い課題で、中にはこちらの思い描いたような成果のものを提出できない生徒もいますが、多くの生徒が「テストノートによって力がついた」と言っており、まさに「自ら学ぶ力」や「思考力・判断力・表現力」を磨く課題であると考えています。
なお、上記の課題に対して実際に生徒が作成したテストノートの実例(PDF)は「3. 本校の定期考査問題と事後指導の実例」で公開しています。
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