スキット

「スキット」とは寸劇のこと。英語の授業では、よくこのスキットを用いた活動が行われます。なぜなら、スキットには必ず何かしらの場面があるからです。そして、その場面の中で使われる表現を、スキットを演じるという活動を通して体験的に学ばせようとするものです。

1.「スキット」活動の面白さ

スキットを用いた学習には3つの段階があります。

 

第一の段階は、教科書の本文をそのまま演じさせるものです。実際の場面を思い浮かばせて、主人公になったつもりで演じさせます。これだけでも、本文に出てくる表現をしっかりと脳裏に焼き付けることができます。

 

第二の段階は、教科書の本文を一部だけ変えたり、本文に自分が考えた表現を少しだけ付け足したりするものです。これだと、与えられたものをただ演じるというのではなく、自分のオリジナリティーも発揮できるので、生徒はより意欲的に活動に取り組みます。また、新たな表現を考えなければならないので、必要に迫られてより豊かな表現力を身につけます。

 

そして、第三の段階が、場面のみ与えてあとは自由に創作させるものです。テーマや語数制限のあるものもあります。この活動は、最初からすべて自分で考えなければならないので、創作する時間はかなり必要としますが、それだけ得られるものも大きいものとなります。また、作成者の個性を十分に発揮できる機会を与えてやることになります。

 

そこで、ここでは、第二、第三の段階の活動について、私の実践例を紹介します。なお、第一段階の実践要領はありませんが、「コミュニケーション活動」の「(3) 授業をすべて英語で行う中でのコミュニケーション活動」の中に、実際の授業の中で生徒に教科書本文をアクト・アウトさせている場面があります。

 

2.第二の段階の活動:「ハンバーガーショップで」

 

「買い物」は場面がはっきりしており、functionalな表現も学習できるので、スキット化するのに好都合です。また、入門期ではペアで活動をさせることが多いので、その成果を発表させる機会としても最適です。教科書にそのような題材があれば、それをうまく利用して、楽しいスキット発表の場を提供したいものです。 

 

(1) 題材
「ハンバーガーショップで」(旧New Horizon English Course 1: Lesson 6)

(2) 指導計画(6時間扱い)
第1時:Part 1の理解

第2時:Part 1の復習、スキット作り、練習
第3時:スキットのリハーサル、スキット発表(録画)
第4時:スキット発表の評価(ビデオ鑑賞)、発表のまとめ
第5時:Part 2の理解
第6時:Part 3の理解

※スキット発表をそのレッスンでの最終目標にあたる活動として設定するのであれば、Part 2,3も学習した後に最初に戻る形で実施してもいいでしょう。今回は、Part 1の内容が新鮮なうちにやりたかったことと場面を客と店員のやりとりに絞りたかったことから、このような指導計画で行いました。

(3) 準備
① ビデオカメラ
・「ビデオに記録する」というだけで生徒の取り組みの姿勢はかなり変わります。
・発表時は発表に集中させ、次時に全員で相互評価をさせるのに役立ちます。
② 評価カード
・視聴者側に回る生徒を意欲的に参加させるために各ペアの活動を評価させます。
・その評価表は集めて、各発表者に渡し、発表のまとめの際の参考にさせます。
③ ハンバーガーショップ・グッズ
・臨場感を持たせるために、店員の服装や品物に工夫を加えるようにします。
・自作してもいいですが、今回は「マクドナルド」の協力で、店長の帽子、ハンバーガーの包み等を譲り受けました。

(4) 指導上の留意点
・日頃からペアで「聞くこと」「話すこと」の活動を行うことに慣れさせておきます。
・教科書の音読練習では、教師が大げさなぐらいの読み方をして、生徒にもそれを真似させるようにします。
・本文を土台とすることを基本とし、付け足しのシナリオ作りにはあまり時間をかけさせないようにします。むしろ、練習時間を多くとった方がいいでしょう(過去に、懲りすぎて練習時間が足りなくて、逆に発表が物足りなくなった経験が有ります)。
・教科書にある表現以外に必要なものはあらかじめ教えておき、必要なら使わせるようにします。
・発表させたら必ず評価する時間を確保します。その積み重ねが次の活動への意欲を向上させます。
・この段階の活動は主に1年生向けです。2,3年生ではシナリオの工夫をより前面に出した方が面白い発表をします。
 
(5)  その他
・各クラスごとに優秀ペアを互選で選ばせます。結果は「英語通信」などで全クラスに発表します。
・優秀ペアの発表ビデオは編集して1本にまとめておきます。機会があったら全クラスで見せ、よい所を具体的に誉めて質の高い活動をすることの楽しさを教えるようにします。
・優秀ペアの発表ビデオは次年度の生徒のためにとっておくといいでしょう。


3.第三の段階の活動:「NHKスキット・コンテストに参加しよう」

※同スキットコンテストは現在は実施されていませんが、参考までにご紹介します。

 

NHKのスキット・コンテストは、スキット作りをとおした学習活動の1つの大きな目標になります。毎年全国のたくさんの中学生が応募しているので、そこに応募するということは強い動機付けになります。

 

入賞している学校の中には選抜チームがあったり、小学生が親に徹底的に指導された成果と思われるものもありますが、本校では「全員参加」にこだわり、入賞することは二の次と考えて指導していました。

 


(1) 題材
「NHK基礎英語スキット・コンテスト」(各学年)

(2) 指導計画(夏休み直前)
第1時・・・・課題スキットの導入、ペア(グループ)作り、課題スキットの練習
第2時・・・・自由スキットの作成、下書き提出
第3時・・・・自由スキットの完成、練習
第4時・・・・課題スキットのリハーサル・録音(公開録音)
第5時・・・・自由スキットのリハーサル・録音(公開録音)
第6時・・・・予備時間、書類準備

(3) 準備
① NHK基礎英語テキスト
・購読させていればそれを持参させます(本校では全員が普段から聴取させているのでテキストも持っています)。または、必要箇所をコピーします。
② 録音機材
・テープレコーダー(録音用)、ダブルカセット(ダビング用)、マイク、カセット・テープ(全員分)

※今ならICレコーダーとSDカードを用意するといいでしょう。
③ 応募書類
・応募用紙、ラベル、提出用原稿用紙、英語科保管用原稿用紙、封筒

(4) 指導上の留意点 
・ペアやグループ作りは、クラスの事情やそれまでの指導の様子で臨機応変に行うようにします(1年生は出席番号順の男女ペアに、2・3年生は自由に3人組を作らせています)。
・自由スキットは下書きを集めて、可能な範囲で添削します(ただし、直しすぎはよくありません)。
・録音は「公開録音」という形をとり、仲間の発表もきちんと聞くという意識を持たせるようにします。
・必要な機材や書類はあらかじめ用意しておき、できるだけスムーズに準備できるようにします。

(5) その他
・全員分のカセット・テープ代を学年費または教科費にあらかじめ計上しておきます。※今ならこれは必要ないでしょう。
・NHKに送るとともに、校内選考も行い、優秀ペア(グループ)を表彰します。

 

(6) 入賞&校内優秀作品

・実際のスキットコンテストで入賞した作品と校内選考で優秀とみなされた、生徒のオリジナル作品をこちらで紹介しています。