教員採用試験あれこれ①

国立大学の附属学校の教員をやっていると、毎年多くの教育実習生を受け入れるので、自然と教員採用試験のことに関心が向きます。毎年7月には多くの都道府県で教員採用試験の一次試験が行われるので、特にこの時期には関心が高くなります。

 

数日前にネットで、今年は各都道府県の教員採用試験の倍率が下がっており、特に地方では定員をぎりぎり超える程度の応募者しかないという状況があるとの記事を読みました。以前にも新聞で同様の記事を読みましたが、今年もその傾向は変わらないようです。

 

一番の原因は教育現場がブラック企業並みの労働環境にあるということが一般に広まっていることにあるそうで、もともと教員を目指そうという学生が少なくなっている上に、教育実習でその"ブラックさ"を目にして教員になることをあきらめる学生もいるようです。さらに、今年はコロナ禍の中で先生方の負担が増えていることが連日のように報道されていれば、教員を目指そうとは思わなくなるのも仕方がありません。

 

教員になろうと考えている学生が安心して働ける環境がいつ訪れるのか。いや、今後益々それが悪化する一方なのか…。筆者はあと1年半ちょっとで定年を迎えますが、中学生の頃に教員になることを決めて努力してきたことを思い出すと、自分と同じ思いを持ち続けてきた学生たちにはなんとか安心して教員になってもらいたいものです。

 

一方、今から35年くらい前からしばらくの間は逆の状態が長く続きました。筆者が教員採用試験を受けた1980年代前半は多くの採用人数がありましたが、後半になるとそれが激減し、1990年代後半くらいまではその状態が続いていました。例えば、筆者が受けた年は埼玉県では中学も高校も英語はそれぞれ100名採用したのに(倍率約4倍)、翌年はそれが50名に、翌々年はそれが25名になり、最終的には10名前後になりました。確か5教科以外は2~3名だったと記憶しています。地方では0名も珍しくない状況でした。現在、50代前半~40代の先生が少ないのはそのせいです。

 

これではせっかく教師を目指して勉強してきたのに教師になれません。筆者の2~3歳下の後輩たちも、多くが数年間の臨時職員を経験した後に正規教員になったり、教員になることをあきらめて一般企業に就職したりしました。また、教師になりたいと思って教育学部に進んだり教職課程をとったりしても教師になれないという意識が広がり、バブル経済の絶頂期で企業の採用が好調であったこともあって、その後は教員を目指す学生自体が少なくなったということが話題になりました。ただ、2000年代になると徐々にその状態が回復して、その後はある程度の採用人数を維持しているようです。

 

教員採用は定員制なので仕方のないことではありますが、いつ生まれていつ採用試験を受けることになるかで教員になれるかなれないかが大きく左右されない制度ができないものでしょうか。教員を採用する自治体には、単年度ごとに必要な教員数で採用人数を決めるのではなく、中・長期的な視点で採用人数の調整をし、年度ごとのばらつきを少なくする施策をお願いしたいものです。その方が、結果的に意欲があって優秀な人材を教育現場に送ることができるはずです。(7/25/2020)

 

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