すべてが手作りー修学旅行(その4)

今回も修学旅行の話題です。「その4」となります。

 

本校の修学旅行は、以前は後期(10月中旬~3月)に行われていたのですが、1990年から5月の連休後に行われるようになりました。令和2年度も5月12日~15日の3泊4日を予定していましたが、新型コロナウィルスのせいで10月に延期となりました(その後、中止となりました)。

 

さて、その修学旅行についての紹介は今回が4回目となります。今回は筆者が過去に担当した「E(野外生活実践)コース」を例に、各コースがどのようにそれぞれの内容を企画し、それを旅行として運営しているのかということを話ししたいと思います。

 

1. なぜ「野外生活実践」コース?

勤務校の修学旅行は、1978年から5つのコース制を取っていますが、いずれのコースも「教科学習の延長」であり、その運営主体が教科であることは「その3」でお話ししました。そして、その教科は国語、社会、理科、音楽または美術、技術・家庭であることも書きました。しかし、実際には対象となる3年生の担任団(5クラス+学年主任)にそれらの教科が全てそろっているとは限りません。もちろん、そのような場合でも国語、社会、理科は必ず設定されますが、その他のコースは担任団にどの教科の教員がいるかで決まります。

 

筆者は勤務校で過去に5回(5周、計15年間)学級担任をしていますが、いずれの担任団にも技術・家庭科がいた一方で音楽科と美術科がいなかったので、国・社・理・技家以外の担任団の誰かが残りの1コースを考えなければなりませんでした。ですから、筆者がその残りのコースを担当することになるのはごく自然の成り行きでした。そこで、最初の学年(平成8~10年度)の1年生の春休みに、1つ上の学年で新しいコースを作るために出かけた下見に同行しました。そのコースが英語科の同僚と美術科のベテラン教師が共同で作ろうとしていた「野外生活体験コース」だったのです。

 

そのコースのメインの活動はニジマスの燻製作りでした。なんと宿泊するペンションの近くを流れる小川を堰き止め、そこに買ってきたニジマスを放して生徒につかみ取りをさせ、それをさばいて燻製を作るという構想でした。自分でもやったことのないその企画に強い関心を持った筆者も、自分の学年で行う新しいコースでそれを活動の柱とすることにし、「野外生活実践コース」として企画をスタートすることにしました。ただ、本コースは他のコースとは少しちがう、“異端児”的なコース、つまり教科学習をベースにしていないものでしたが…。

 

2. すべてが手作り

勤務校の修学旅行は、バスの手配を大手旅行会社に頼む以外は旅行業者を一切使っていません。それ以外のことはすべてコース担当者が行います。つまり、旅行行程の作成、宿の確保、立ち寄り先や講師との交渉、昼食の確保、病院の確保などはすべてコース担当者が行うということです。筆者の場合も、幸いにも宿泊場所は下見でも使ったペンションをそのまま確保できましたが、それ以外は自分ですべて準備しなければなりませんでした。同じ教科の過去の経験の助言をまったくもらえない、手探りの準備が本番の2年余り前に始まったのです。

 

当然、下見は複数回行うことになりました。しかし、下見のための出張費用は1回分しか出ません。あとはすべて自腹というわけです。2回目の下見は2年生の夏休みに家族旅行をかねて2泊3日で行いました。本番で使うペンションに2泊しながら、自分が考える活動内容の関係場所を自家用車で訪ね回るというものでした。その際に大変助かったのは,ペンションのオーナーがその村の議長も務める実力者だったので、筆者がやりたいと考えたことの多くは氏の交友関係をたどると交渉可能であったということでした。しかも、メインのニジマスの燻製作りは、ペンションの敷地内で行うことができることになったので(1つ上の学年で実施したことで、オーナーも燻製作りを始めたからです)、メインの活動の合間で行う残りの活動を考えればよいことになりました。

 

そこで、2回目と3回目(2年生の春休み)の下見は、旅行中に行おうと考えている活動を実現するための現地交渉にあてられました。そのいくつかをあげると…

・初日に行うニジマス釣りの釣り堀との休業期間中営業の交渉

・2日目と3日目の昼食用食材を生徒に買いに行かせるスーパーとの交渉

・2日目に行う野外活動組織との交渉

・3日目に立ち寄る美術館との交渉

・非常時に頼る病院への挨拶

・4日目に立ち寄る土産物屋との時間外営業の交渉

・4日目に立ち寄る昼食場所との交渉

などでした。

 

これだけでも実に大変な作業でしたが、それだけに自分が1つ1つ作り上げていったコースであるという充実感で、アドレナリンが出まくっていることを感じながら各地を回ったことを記憶しています。また、それだけ労力をかけて作ったコースであったので、コース選択をさせるための説明会(ガイダンス)でも、自信を持って「このゆ~び止~まれ!」という気持ちで生徒にコース内容をアピールできました。

 

では、その具体的な活動内容とは…?

 

それを語り出すとさらにかなりの紙幅を費やすことがわかったので(少し書き始めました)、それは次回(第5回)に回すことにします。お楽しみに!(4/18/2020)

 

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