本日、「筆者の授業」に新しいページを追加しました。それは、令和元年度研究協議会(11/9)の公開授業に対する参観者の感想です。筆者にとっては、5年振りに行った公開授業で、定年までに残された時間を考えると、もしかしたら最後の公開授業になるかもしれないものでした。
当日は、英語科だけで166名の方にご参加いただき、講堂(約500名収容できる広さ)の床面に設置された"教室"で、三方を囲まれて授業を見ていただきました。今回の公開授業への感想を読ませていただくと、過去の公開授業に比較して、「ある活動」に感想が集中していることがわかります。それは、授業の前半に行ったコミュニケーション活動です。
実は、よくある「チャット」活動なのですが、おそらく他の学校ではあまりやったことがないであろうと思われる新たなやり方にチャレンジしました。その活動に対して、参観者の方々が"食いついた"わけですが、感想一覧のページに用意されている学習指導案ではその内容がよくわからないと思いますので、ここでその活動内容の説明をしたいと思います。
(1) 代表生徒2名(出席番号順に男女各1名)が自分の好きなテーマで教師と1分半のチャットを行う。
(2) 2つのテーマのうちの好きな方を選んで、ペアで1分半のチャットを行う。チャットは一人1台に用意されたICレコーダーに各自が録音する。
(3) 上記の録音されたチャットを各自が聞き直し、「もっと上手に言えればよかった」と思う表現をワークシートに書き出す。
(4) ペアで上記の表現についてより良い表現を考える。
(5) 上記の活動で解決できなかったことをクラス全員でシェアする。教師はそれを聞いて、より良い表現を生徒が絞り出せるように、解決へのヒントを与えたりして支援する。生徒の力だけで解決できなかった場合は、教師が適切な表現を教える。
この活動の"きも"は、ともすれば「話しっぱなし」になりがちなチャット活動に、生徒自身による「振り返り」の機会を与えたことです。これによって、生徒は自ら思考し、判断し、表現する力を伸ばすことができます。その他にも、活動の直前に示されたテーマで即興的に話すという力も伸ばすことができます。もちろん、毎回代わる代わる教師とチャットをする生徒は、事前に何をテーマにして、どのような内容で話せば教師と上手におしゃべりをすることができ、同時に仲間にそのテーマで何を話したらいいかというモデルを示すための事前の準備をすることになります。これは、あらかじめ準備して話す力を伸ばすことにつながります。そのような点が参観者の方々に好評をもって迎えられたようです。
一方、この活動のデメリットは、充実した内容の活動にするためには、どうしても一定時間が必要だということです。毎回、授業の前半の20分くらいをこの活動で費やしてしまいます。この活動をいわゆる「帯活動」として行うために、これまで"定番"として行ってきた「前時の復習」を思い切ってバッサリ切りました。それによって、もしかしたら、新しく学んだ教科書の内容の定着率が落ちてしまうかもしれませんが、それよりも既習事項をしっかり運用できるようになるということを優先してみたというわけです。
この活動は、今年度の3年生後期の授業で初めて行っています。公開授業のクラスはこの日がまだ4回目の活動でしたが、それでもすでに生徒の成長ぶりが感じられました。そのあたりは、参観者の感想にも表れていると思います。これを書いている時点で、全クラスで6~7回ほど実施していますが、どのクラスでも生徒が活発に活動し、(5)の活動では積極的に話題提供をしてくれています。例年、3年生のこの時期はどうしても単調な授業で生徒を飽きさせてしまうことが多いのですが、今年は例年になく生徒が活発に活動しているように思います。最終的には、全生徒が(1)の活動を行うまで、20回この活動を行う予定です。
なお、この活動を始めたときに薄々感じていながら、公開授業直前まではっきり意識していなかったこととして、(5)の活動を教師がきちんと仕切って進めていくには、相当の覚悟が必要だということがあります。生徒からは毎回かなりの"難題"が示されるので、それを上手にかみ砕いて生徒に返していかなければなりません。それを公開授業で大勢の参観者に見せるはめになってしまったことに気づいたのは、この活動を実際に始めた後でした。「もう後戻りはできない…」と腹をくくって、公開授業当日を迎えたというわけでした…。(11/23/2019)
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