筆者がまだ若かった頃は、いかに生徒を上手に叱るかというのが生徒指導の基本でした。叱るのが上手な先生ほど良い教師だと思われていたと言っても過言ではありません。もちろん、「叱る」のは「怒る」のとはちがいますから、感情任せに声を荒げるのではなく、厳しくも丁寧に優しく叱るということがポイントでした。
ところが、時代は変わって、今はいかに叱らずに生徒指導を行うかということに注目が集まっています。例えば、女子バレーボールの日本代表選手にもなった人たちが、「試合で選手を決して叱らない」ということをキャツチフレーズにした大会を開いて、指導者の意識改革をしたりしています。
バレーボールのー特に小中高の女子の―試合と言えば、あちこちから監督の怒号が聞こえてくるのが当たり前という印象があります。中には、相手を萎縮させるためにわざと大声を出している監督もいるとか。そのような状況が当たり前となっている世界を見て育つと、自分が指導者になったときにもそうしないといけないような錯覚に陥ってしまいます。
しかし、筆者が長年の教員生活でたどり着いた生徒指導の基本は、やはりいかに叱らずに褒めて生徒を育てるかということにつきます。ここまでたどり着くには、30年近くかかりました。それを明確に意識したのはさらに後のことですが、自分の生徒指導―特に学級指導―がうまく行っているときは、生徒をできるだけ叱らずに褒めるということを意識していたときでした。
ただし、「叱らないで褒める指導」と言っても、何もしないでただ褒めていたわけではありません。それでは学級崩壊を起こしてしまっていたでしょう。すでにおわかりだと思いますが、この指導を行うには、できるだけ叱らずに済む状況をあらかじめ生みだしておくことが肝心です。つまり、何か事が起こってからそのことを叱るのではなく、先手を打って生徒を褒めることができる状況を作るのです。そうすれば、叱るより褒めることが多くなりますから、好循環が生まれてきます。
また、それ以前の心構えとして、あまり細かいことに目くじらを立てないようにすることも必要です。教師というのは、とかく生徒の言動に口を挟むことが良い教師のあり方のように思ってしまいがちですが、それがかえってことを悪くしていることもあります。もちろん、見て見ぬ振りをして大事なことを見逃しては、大変なことになりかねません。要は、指導に入る線を引き直すということです。
その具体的な指導の例は、「終礼の話」のコーナーの特に「続・終礼の話」の各話や、「生徒を育てる話の内容と方法」のコーナーで紹介している話に現れていますので、関心のある方はそちらをお読みになってみてください。
なお、筆者と同じ考えからかどうかはわかりませんが、ある公立小学校で学校をあげて児童を叱らない実践を行っている学校があります。最初は戸惑っていた先生方も、そうすることで生まれてくる良好な状況に手応えを感じているようです。以下のリンクにその取材記事がありますので、ぜひお読みになってみてください。(11/4/2023)
「子どもを叱るのはもうやめる」と決めた公立小学校 褒める技術磨く先生たち、職員室まで明るくなった #令和の子(共同通信) - Yahoo!ニュース
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