ライティングの指導

1. ライティングの指導目標

ライティングの指導目標として考えられるは次のようなことです(注:筆者の考え)。

 

① 文字・単語・文を正しく書けるようにする

② 聞こえた英文を正しく書き取れるようにする

③ 和文英訳ができるようにする

④ 自由作文(エッセイ)を書けるようにする

 

①は昔から中1の入門期指導で丁寧に指導されてきたものですが、現在は小学校で指導されるようになりました。ただ、そのような生徒を中学校で受け入れてみると改めて指導する必要性を感じている先生は多いのではないでしょうか。前任校でも中学校として改めて丁寧に指導を行っています。

 

②はいわゆるディクテーションですが、試験問題として出すというだけでなく、普段の授業での指導も適宜行った方がいい指導です。それは聞こえてきた情報を「なんとなく」理解できたではなく、「正確に」理解できたかどうかを確認するためです。もちろんその際の細かいつづりミスなどには目をつぶるとして、語順まちがいや単語の抜けなどの重大ミスがないかを常にモニターし、生徒自身にもふだんからしっかりと聞くクセを付けさせるのに有効です。

 

③は文法学習や表現学習の基本として昔から行われている活動です。伝えたい内容を日本語で見てそれを英語でどのように表現したいいかを的確に判断する練習としてとても大切です。特に英語の語順を定着するために有効な活動であり、ともすれば日本語の順番に単語を並べてしまう学習者が多い中で、英文を「分析する」力ではなく「統合する」力を養うことに有効です。

 

④はかつては英語の授業ではここまではできなかったと言われている活動です。それはまず何を書くかを考えるだけで時間が経ってしまい、結局は何も書けなかったという生徒が多いという実態があったからです。また、オープン・エンドで正解が示しにくいということもやりにくさを助長しています。しかし、この活動は「書くこと」の指導の最終的な到達目標であり、また最近ではほとんどの都道府県立高校の入試問題に出題されるようになったこともあるので、普段の授業で指導することの重要性が今まで以上に高まっています。

 

では、ライティングを「書くこと」としたとき、現行の学習指導要領の目標はどうなっているでしょうか。

 

ア 関心のある事柄について,簡単な語句や文を用いて正確に書くことができるようにする。

イ 日常的な話題について,事実や自分の考え,気持ちなどを整理し,簡単な語句や文を用いてまとまりのある文章を書くことができるようにする。

ウ 社会的な話題に関して聞いたり読んだりしたことについて,考えたことや感じたこと,その理由などを,簡単な語句や文を用いて書くことができるようにする。

 

これを読むと、上の①~④の中では④のみが中学校の指導目標であるということがわかります。③ですら目標には入っていないのです。一方、「書くこと」に関する基本的な指導事項は「イ 符号」の「感嘆符、引用符などの符号」のみとなっており、以前の学習指導要領にあった「アルファベットの大文字・小文字の活字体」は削除されました。これについて『解説』には次のように書かれています。

 

これは,アルファベッ トの活字体の大文字と小文字は,小学校の外国語科において指導する内容となっているためである。小学校の外国語科での内容を踏まえ,中学校においては語や句,文を書く中でアルファベットの活字体の大文字と小文字を書くことができるように引き続き指導する必要がある。

 

つまり、中学校で大々的に目標にかかげるほどではないが、引き続き指導していく必要があることは謳っています。もちろん中学校の先生であれば当然のこととして指導を続けていることでしょう。

 

2. ライティング指導の実際

ここでは1.であげた①~④の具体的な指導内容及び指導方法を筆者の実践より紹介します。

 

(1) 文字・単語・文を正しく書けるようにする指導

まとめてしまいましたが、文字、単語、文を正しく書けるようにする指導はそれぞれ別にあります。

 

① 文字を正しく書く

これについては「7. 文字の指導」をご覧ください。

 

② 単語を正しく書く

これについては「8. つづりの指導」をご覧ください。なお、いわゆる単語のつづりテストを簡単に素早くやる方法についてはページ後半の【コラム】をご覧ください。

 

③ 文を正しく書く

文を書く際の注意点のようなことについては、歴代の教科書やペンマンシップに「書き方のコーナー」のようなものを利用したり、それをもとにして独自にハンドアウト化したものを使って指導しました。

 

(2) 聞こえた英文を正しく書き取れるようにする指導

厳密に言えば、この活動を行うには常に生徒にとって初出の英文を使う必要があります。それは既出の英文を使うと記憶を頼りに書く部分が出てくるからです。しかし、この活動を帯活動のように毎時間の授業で行うとなると、生徒全員が「正しく」書くことができる語句、つまり既習語句だけで構成されている英文を毎回準備するのはかなりの負担です。

 

そこで、「初出」という条件はあきらめて、教科書を使って毎時間短時間で実施できる方法をご紹介します。題して "Listen & Write" です。筆者の歴代の指導案ノートを見ると、25年以上前からずっと行ってきたことがわかります。

 

実施時間帯は授業の前半です。前時の文法事項や本文の音読活動の直後に行います。指導手順は以下のとおりです。

 

① 教科書閉じさせ、ノートを開かせます。

② 教科書のモデル音読を聞かせ、書かせたい文を聞き終えた瞬間に止めます。

③ 生徒は最後に聞こえた文を書きます。

④ 教科書を開かせ、自分で答え合わせをさせます。

⑤ 典型的なミスについて取り上げて復習のポイントを考えさせます。

 

この活動であれば、答え合わせも含めて3分程度で行うことができます。②の止める場所は前時に学習した文法事項を含んでいる文を選ぶことが多く、大抵は2カ所で止める、つまり2問出すというのが定番になっています。また、生徒自身に答え合わせをさせることで自分のまちがいに気づかせて復習しなければならないポイントを意識させるとともに、教師による無駄な採点時間を授業中に取る必要もなくなります。教師は採点中に机間巡視を行い、生徒がまちがえやすいポイントを把握して⑤で活かします。

 

(3) 和文英訳ができるようにする指導

この活動はたいていレッスン/ユニット、つまり課の最後にその課の復習として行っています。なぜなら、英文を書くという作業ほど生徒の学力差が現れるものはなく、早く書ける生徒となかなか書けない生徒の差が大きくて、後者の生徒を待っていると教科書本文を扱う時間の指導過程に入りにくいからです。

 


上は各レッスンの復習時に配付する本文の日本語訳(左。実際は表面)と和文英訳の問題(右。実際は裏面)で、どの学年でも3年間ほぼこのセットで作成しています。和文英訳をさせる前に、訳を読んで本文を口頭で再生できるかという練習があります(Task 2 のノートに書く練習は授業ではやりません)。和文英訳はその本文を元にアレンジしたもので、各文の重要ポイントを利用して英作するような問題にしてあります。模範解答が下にあるので、採点は書き終わった者からやっていいことにし、制限時間を過ぎた場合は家庭学習で行うように指導しています。

 

なお、表面上の「No. 335」とは「3年生の35番目」という意味ではなく、入学以来の手作りハンドアウトの通算番号です。年度切り替え等で指導者が替わった場合も基本的に前指導者が作成したハンドアウトの通算番号を引き継ぐのが慣習になっています。多くの学年で卒業するまでに400番を超えています。 

 

(4) 自由作文(エッセイ)を書けるようにする指導

いよいよ「書くこと」の最終目標でありもっとも難しい技能の指導です。しかも、中学校学習指導要領では「書くこと」の唯一の目標ですから、この指導を行わないわけにはいきません。しかし、中学校の実態としてはこの指導を積極的に行っている先生はまだ多くありません。「高校入試に出るから」と3年生になってから指導を始める先生はいますが、1年次から継続的に指導している先生は少数派です。その理由はおそらく次のようなことでしょう。

 

① 時間がものすごくかかり、下手をすると丸々1時間を費やしてしまう

② 生徒の学力差が大きく、何をどのように書いたらいいかわからない生徒は何もできない

③ オープン・エンドであるため正解を示しにくく、生徒が独自に書いた答えの採点も難しい

 

上記のような懸念があることは事実ですが(筆者も感じています)、だからと言って何もしないわけにはいきませんので、それぞれの対策について考えてみましょう。

 

①は、ダラダラと時間をかけるのではなく、必ず実施時に制限時間を設定し、生徒にもそれを伝えるようにします。そうすることで、生徒も残り時間を考慮して作業をするようになります。それでも終わらない場合は家庭学習に回すようにします。

 

②は、おそらくいきなり「自分の好きなテーマで好きなことを書いてみなさい」というような課題を出してしまっているからという可能性があります。この活動はかなりレベルが高いので、ステップを踏んだ指導が必要です。筆者の場合は中1の頃から次のような段階的な指導をしています。

ア)新出の文法事項を使ってオリジナルの単文を書かせる(教科書のパートごと、レッスンごと)

イ)伝えたい内容や自分の意見を単文で書かせる(題材に応じて)

ウ)伝えたい内容や自分の意見を複数の文で書かせる

エ)テーマに沿った自由な内容をまとまった量の文章で書かせる

 

③は、極端な、しかしそれが現実的だという方法をお話しします。それは正解は示さず採点もしないということです。「それでは生徒に力はつかないし、生徒にどのくらい力がいているかの確認もできない」という大反対の声が上がりそうです。しかし、それがそうでもないということをページ下の【コラム②】でお話しします。

 

【コラム①】書く時間を劇的に減らして「書くこと」の指導を行う方法

授業中に「書くこと」の活動を行うことは時間的に厳しいことは以前にも書きました。しかし、だからと言ってまったくやらないのでは生徒に力を付けさせられません。授業中によく行われる「書くこと」の活動としては、単語の小テストが一番多いのではないでしょうか。しかし、これとて用紙を配ってテストを実施し、採点までその場でやって用紙を回収するまで行うと前部で10分近くはかかります。この活動に毎回の授業で10分もかけるのはかなりもったいないと思います。

 

では、この活動を行いつつ時間は最小限にする方法はないでしょうか。その1つが今回提案する "Writing in the Air" という活動です。これは対象となる単語を空中に書くというものです。これであれば用紙を配ったり集めたりする手間と時間がかかりませんので、時間を大幅に節約できます。 この活動は、紹介した教科書本文を聞いて書き取る "Listen & Write" の直前に行う「書くこと」の単語バージョンですが、こちらは実際にはノートや解答用紙に書かせたりしません。実際の指導は前時の復習として文型の復習や本文の音読をした後に行います。

 

① 単語を口頭で発音し、生徒に指で空中にそれを書かせる

② "Spelling, please." の合図でスペルを口頭で言わせる

③ 正解者は挙手させる

※①~③を出題する単語の数だけ繰り返す

④ 全問正解、1問だけ不正解などの生徒に挙手させる

 

出題する単語の数によりますが、少なければ全部で1分余り、多くても2分程度で終えることができます。

 

実は、この活動は20年くらい前からやっていて、研究協議会の公開授業で参加者(毎回200~300名)の先生方にこの活動も見ていただいていますが、たいてい次のような質問が出ます。

 

① この活動は「書くこと」の活動になるのか?

② この活動で本当に「書くこと」の力を養えるのか?

③ 生徒の中には適当に書いて正解だと報告している者がいるのではないか?

 

①については、紙に書くか宙に書くかのちがいはありますが、つづりを意識して指を実際に文字の形に動かすわけですから、紙に書くのと同じだと考えています。

 

②については、これも紙に書くのと効果は変わらないと考えています。実は紙に書かせたからと言って、それ自体が生徒の力になっているとは思いません。それよりも毎回この活動があることを生徒は知っていますから、事前に家で練習してきたり、授業前に確認したり、直前の音読活動で確認したりという練習効果への動機付けとして意味があると思っています。

 

③については、あまり気にしていません。それはむしろ紙に書いて答えを提出させておらず、成績にも関係がないからです。そのせいもあるでしょうが、生徒は正直に書けなかった単語を報告してくれます。そのような信頼関係があってできる活動だと思っています。

 

【特別映像】Writing in the Air ※YouTube限定公開

件の活動を過去に撮影した筆者の授業ビデオ(計200本以上)の中からピックアップして編集したものをご覧いただきます。挨拶活動の途中で日付の確認に使った「月」と「日」を表す単語を書かせたものと小テストとして実施したもの2種類があります。

※限定公開なので検索しても出てきません。上記タイトルのリンクをクリックしてください。

 

【コラム②】「添削しなければ生徒の書く力は伸びない」は教師の幻想である(?)

いきなり先生方に喧嘩を売るようなタイトルから始めました。特に平素から生徒の書いたものを丁寧に添削されている先生には猛反発を受けることを覚悟の上でこれを書いています。このような主張をあえてするのは次の2点によります。

 

① ある大学の実証研究により生徒の学力向上に対する添削の効果はそれほどないことが報告されている

② 筆者の前任校で長年行っていた「書くこと」の活動で添削をしなくても生徒の「書くこと」の力は高められることがわかっている

 

以下、これら2点について説明します。

 

(1) 添削の効果について

①は、東京学芸大学の教授(後に教育学部長)でもあった金谷憲先生を中心とした研究チームが2度にわたる科学研究費助成による研究で明らかになった結果を受けてのものです。詳しい研究内容は実際の報告書をご覧いただくとして、ここでは研究の概要を示します。

 

<方法>

ア)生徒をクラスによって「添削をする」「まちがった箇所に下線を引く」「ただ検印を押す」の3つのグループに分ける。

イ)作文活動を複数回行い、アを実施して返却する

ウ)ポスト・テストを行い、グループごとの結果を比較する

<結果>

3つのグループの成績に有意なちがいは見られなかった。

 

つまり、一生懸命添削をしたグループと単に検印を押しただけのグループを比較しても結果の差は無かったというわけです。この研究結果が発表されたのは20年以上前のことですが、この結果を知った当時の英語教師の間に衝撃が走りました。特に平素から添削を一生懸命やってきた先生方は「自分のこれまでの努力は何だったんだ…」と随分落ち込んだと言います。

 

ただ、ここには重大な指導の欠如があったことは見逃してはいけません。この研究では返却したところまでしか指導は行っていないのです。もしかしたら、添削作業の真骨頂はその後の指導にあるのかもしれません。それは返却しただけだと生徒はただそれを見て終わりという者が多いからです。生徒のまちがいを指摘し、それをどのように改善していったらいいのかという指導まで行うことで添削の効果があるのではないでしょうか。

 

例えば、この後に紹介する2年生の "Show and Tell" という活動では、事前にスピーチの発表者の原稿を教師が丁寧に添削をする作業を行っていました。しかし、単に添削した原稿を返却するのではなく、一人一人丁寧に面接を行い、まちがっている箇所を生徒にも考えさせながら添削をするという作業を行っていました。もっともこの作業をするのはとても大変なので、この授業だけは常勤教師4人が5クラスを分けて担当する(2年生の主担当が2クラスを持つ)という指導体制を採っていました。


また、小テストや定期テストで作文の問題を出したときは、一人一人の解答を添削するのてはなく、生徒の典型的なミスを一覧にしたワークシートを作成し、それを使って生徒と一緒により良い表現を考えるという指導を行っています。  

 

(2) 添削をしないで「書くこと」の力を伸ばす活動

②は、筆者の前任校・筑波大学附属中学校で2000年頃から2009年まで行っていた活動の成果についてお話しします。

 

<前提として>

当時より20年以上前(つまり筆者が赴任する前)から同校では2年生の授業で毎週1時間を Show and Tell" というスピーチに特化した活動の時間にあてていました。毎回3~4名の生徒が3分間の自由スピーチ(何か物を持ってきて紹介する内容)を行い、その後に post activity を行います。その post activity には時期により以下のものがありました。

 

ア)1995年以前(筆者赴任前)…ALT が司会をして生徒を指名し、発表者に質問させる

イ)1995年~2000年頃 

・第1期…ALT が司会をして、グループごとに発表者に質問をすると得点が与えられる

・第2期…ALT が司会をして、グループごとにお互いに質問したりその質問に答えたりすると得点が与えられる

 

イはアでは質問者以外の生徒が受け身になってしまうので、全員が積極的に参加できるよう、質問に対する答えも発表者ではなく聞いていた仲間が客観的に答えるという活動へ進化させました。アでは発表者に Where did you go during the summer vacation? と尋ねていたものを、イでは仲間に Where did she/he go during the summer vacation? と尋ねる活動に変えたわけです。

 

<本題>

ウ)2000年頃~2009年…スピーチで聞いた内容を客観的な文章で再生する

 

上記のイはそれなりの成果がありましたが、それでも質問を積極的にする生徒の陰に隠れて何もしない生徒が散見されました。これではその活動の時間がもったいないということで、何か全員が活動できるものがないかと考えたのがウです。

 

生徒はスピーチの間、聞こえた内容をできるだけ多くメモに残します。それは post activity としてウの活動があるからです。さらに毎回何語書けたかという記録を一人一人がバインダーに綴じてあるグラフに記録していきます。この活動を41人全員が発表を終えるまで40回(自分の発表を除く)行います。なお、生徒には事前に次のような指導を行いました。

 

① 生徒は3分間でできるだけ詳しくスピーチの内容を書いて再生する

② 目標は 20 words/min.、つまり3分間で60語とする

③ 書けた語数を毎回グラフに記録し、最後にグラフを提出する

④ つづりのミス等は問わないので、とにかくいっぱい書くことを推奨する

⑤ 書いた原稿の添削は行わない。自分の振り替えり資料として保存する

 

この指導をご覧になって、多くの方が「3分間で60語だって?それは無理だろう…」とか「そんなことは能力の高い附属中学校の生徒しかできない」と思われたでしょう。筆者自身もそう思っていたのですから、そう思うのも仕方ありません。ただ、まったくの自由作文とちがって書くべき内容とキーワードは生徒自身がメモでもっています。もしかしたら、回数を重ねていけば達成できる数字かもしれないと思って指導を続けました。

 

約10年間行ったこの活動の中で、2003年に指導したクラスの生徒の語数記録グラフを生徒の了解を得て資料としてコピーして残し、そこから何が読み取れるかを研究したことがあります(学会で発表しました)。残念ながらそのコピーはすべて定年退職時に処分してしまって残っていないのですが、当時の記録から次のようなことがわかっています。

 

① 初回に60語を達成したのは41人中3人で、その内訳は帰国子女の生徒、学年トップの成績の生徒、英語が大好きな生徒だった。

② 生徒によって異なるが、数回続けているうちに急に語数が増える時期があり、その後にまた頭打ちになる期間を経てさらに語数が増える時期があった。

③ 最終回までにはなんと41人中36人が目標(3分間で60語)を達成した。残りの5人も目標には届かなかったものの、かなり目標に近い数値まで上がった。

 

先述のとおり当時の記録グラフはないのですが、①~③のイメージは以下のとおりです。これらは当時の典型的な生徒のグラフを思い出しながら筆者が改めて作成したものです。

 

ア)初回に60語達成した生徒の例

 

イ)最終的に目標を達成できた生徒の例

 

ウ)最終的に目標を達成できなかった生徒の例

 

<備考>

この指導では、先述したとおり添削はいっさい行いませんでした。しかし、回を重ねるごとに生徒が書くことに慣れてきて、最終的には書くべき情報さえあればかなりの量を短時間でかけるようになることがわかりました。ただし、先生方の中には「たくさん書けるようになることはわかった。でも本当に力が付いているのか?」と思った方もいらっしゃるでしょう。

 

この点については、当時の附属中の生徒を受け取った附属高校の英語科の先生から、「附属中から来た生徒は自由に書けと言うとあっという間にたくさん書く。それに対して公立中から来た生徒は辞書を引きながらなので少ししか書けない。ただし、附属中卒の生徒の英文の正確さはイマイチだが…」というコメントをもらっています。


また、当時開発中であったある大手業者の「英語コミュニケーション能力テスト」のフィールドテストにおいて、この指導を受けた学年の生徒(中3)のライティング部門の自由英作文の点数が、あるトップレベルの都立高校の2年生と同等であったという客観的なデータがあります。

 

<まとめ>

(1) と (2) の事例から言えることがあります。それは添削にかかる教師の時間と労力を大幅に(完全に)カットできることです。自由作文を授業や課題として行わせる際の最大の懸念は添削作業が大変であるということでしょう。それが気になって自由作文を避けている先生も少なくないのではないでしょうか。しかし、自由作文の活動を授業や課題で行わないかぎり、まとまった量の文章を書く力を養うことはできません。ここは思い切って添削することはやめ、とにかくたくさん書かせる活動をある程度の期間実施してみてはどうでしょうか。