【きっかけ・ねらい】
冬休み前最後の日、2学期制を採用する本校では終業式はないものの、特別時間割として平素より長めの終礼がありました。そこで、3学期制の学校でいうところの2学期のできごとを振り返らせ、さらに3学期に待っている諸活動に目を向けさせることで、冬休みを有意義に過ごさせるとともに、新たな気持ちで新年を迎えさせるような話をしようと思いました。
【手順・工夫】
今回の話では、すでに終了した行事を1つ1つ振り返ったり先に来る行事を話題にしたりして、とりとめのない話をしているように思わせておきながら、その中に自分の伝えたいことを含めて、それを生徒の脳裏の片隅に残すように図ってみました。
【実際の会話】12/20
T:冬休み前最後の終礼なので、ちょっとだけ話をしたいと思います。
S:(一応、話を聞こうという態勢になる)
T:今日は一般の学校でいうところの「2学期」最後の日にあたります。2学期というのは、1年の中で一番長い期間なので、たいてい先生も生徒も「長かったなあ」と振り返ることが多い学期です。本校でも行事がいっぱいありましたよね。そこで、それらをもう一度振り返ってみましょう。
S:(思い出しているような顔をしている)
T:まず最初にあった行事は何ですか?
A子:運動会!
T:そうですね。ところで、5組の成績はどうだったんでしたっけ?
B子:パフォーマンス優勝!
S:優勝!
T:そうでしたね。競技の方はどうでしたっけ?
S:準優勝!
T:そうでしたね。ところで、準優勝のカップはうちのクラスに来ましたっけ?
S:(「いったい何のこと?」という驚いた顔)
T:ふつう、優勝カップとかは3学年全部に回るんだけど、うちのクラスに来ましたか?
S:(みんな首をふっている)
T:やっぱり。先生もそうじゃあないかと思っていました。3の5(3年5組)が自分たちのところだけでがめているんだな。
S:(笑っている)
T:あれはね、うちのクラスにも置く権利があると思うんですよ。だって、学年種目はとてもいい成績だったし、準優勝に大きく貢献したと思うんですよね。
S(「そうだ!そうだ!」のように騒いでいる)
T:ということで、3の5に言って回してもらいましょう。1年生だって見たいと思うんですよね。リーダーもさ、3年生に頼んでみてください。
C子(クラスリーダー):わかりました。
T:次の行事は何でしたっけ?
S:(一瞬の間があって)ガクハツ(=学発:学芸発表会)!
T:そうでしたね。学発といえば、どういうことが印象に残っていますか?
D男:嵐!
E子:台風で2日になっちゃったこと。
T:そうかあ…。先生が聞きたかったのは、活動自体のことだったんだけど…。
E子:2日になったんで大変でした。
T:そうじゃなくて…。本番までの活動はどうだったかということ。特にこのクラスの活動はどうでしたか?
S:(あまり反応がない)
T:映画を作ったわけですが、その活動には一生懸命取り組めましたか?
S:(あまり反応がない)
T:先生はね、みんながとてもよくやったと思っていますよ。
S:(「それはもう何度も聞きましたよ」という空気)
T:その次の行事は何でしたっけ?
S:合唱発表会!
T:そうでした。とまあ、こうやって振り返るだけでも、本当に大きな行事がありました。じゃあ、「3学期」はどうでしょう?何があるか知っていますか?
S:(反応がない)
T:えっ?みんな何があるか知らないの?
F男:卒業式!
T:そうだね。みんなには直接関係はないけど、とても大切な行事です。実は、その直前にみんなが直接関わる行事があるんですが…?
S:(「いったいそれは何?」と驚いた顔をしている)
T:みんながそれを運営するんですよ。
G子:ソツカン(=卒歓:卒業生歓送行事)!
T:そう、それ!先輩たちを気持ちよく送り出すのはみんなの役目なんだからね。
H子:シンカン(=新歓:新入生歓迎行事)も!
T:そうだね…。でも、それは来年度になるかな。そういえば…、卒歓、新歓といえば、それらのジュンショウ(=準小:準備小委員会)も含めて、1月にはみんなの中のかなりの人が委員や係に任命されます。
S:(自分に直接関係する内容になったためか、急に真剣な顔になる)
T:(副委員長のI男に向かって)I男くん、2年生はどのくらいの人たちが任命される予定ですか?
I男:2年生の5分の2か5分の3くらいです。
T:5分の2と5分の3とじゃ、40人もちがうよ。だいたい100人くらい?
I男:今のところ、120人くらいを任命する予定です。
T:ということは、約5分の3ということですね?
I男:はい、そうなります。
T:しかも、今年は15団体すべてを1月11日に任命するんですよね?
I男:そうです。
J男:2日間に分けるんじゃないんですか?
T:例年はそうなんだけど、今年はそうしている余裕がないから、1日でやってしまうそうです。
I男:なので、返事はしなくていいんです。プロジェクターで名前を出します。
T:そうなんだってねえ。でも、それで大幅に任命時間が短縮できていいんじゃない?
I男:そうだと思います。
T:それでね、単純計算すれば、このクラスも5分の3の人が何らかの委員や係に任命されるわけで…。そうるすと、すぐに活動を始めなければならないから、みんな1月以降は忙しくなるよ。
S:(顔を見合わせて「それは大変だ!」のようにざわつく)
T:1月からは忙しくなるから、みんな覚悟をしておくように。
S:(また真剣な顔をして静かになる)
T:ところで、これで中学校生活の36分の…、いくつが経ったことになりますかね?
K子:29!
T:本当?そんなに経ったかい?数えてみようか。1年生が12ヶ月でしょ。2年生が4月から、4、5、…、12で9ヶ月しょ。合計すると?
S:21!
T:そうだよね。36分の21。誰か、約分してくれない?
L男:12分の7!
T:そうなんですよ。ついこの間、半分過ぎたという話をしたばかりなのに、もう12分の7ですよ。
M子:ええ~!早い~!
N子:いやだ~!
T:先生の経験でもね、本当、中学校生活なんてあっという間だったなあ…。
S:(顔を見合わせてざわつく)
T:それで、2年生になってからのことを考えただけでも、もう9ヶ月が経ちました。
その間のことを考えてみると…、今までに何度か言ったことがあると思いますが…、
先生は2年生の担任をしていてこんなに楽だったことはありません。何か事件を起こす人がいるわけでもないし、大声で怒らなければならないようなこともないし、みんな仲良く暮らしてくれているし…。こんなに楽をしていていいのかなとも思っています。この後に何か大変なことでも起こるんじゃないかと心配しているくらいです。
S:(笑っている生徒もいれば、緊張している生徒もいる)
T:何はともあれ、あと3ヶ月しっかり過ごして、無事に2年生を終えましょう。さらにあと1年間同じメンバーで過ごすわけですからね。
S:(真剣な顔をしている)
T:ところで、みんなには修学旅行のことについての補足の話をしましたっけ?他のクラスでは先週の金曜日の英語の授業で話したんだけど、5組だけ授業がなかったから。
S:(「いったい何のことだろう?」という表情)
T:例えば、先生のコースは3泊ともテントだっていうわけじゃないぞ~とか、どのコースも夕食と朝食はちゃんとしたものが出るぞ~とか…。
S:聞きました。
I男:それなら金曜日の終礼のときに先生が話していました。
T:あ、そう。それならよかった。今日希望調査を集めるのに、それを話していなかったら5組だけ条件がちがっちゃうからね。では、この後学級委員に…、男子は□□くんに、女子は○○さんに出してください。ところで、紙を忘れちゃって出せないとい う人はいますか?
S:(誰も手を挙げない)
T:素晴らしい!忘れる人がいるんじゃないかって、予備の紙を持ってきたんだけど、使わなくて済んだわけだね。では、面談はこの後…、10:45から放送室でやります。順番はこの間言ったとおり女子の最後からです。それから、12:00になったら15分だけ先生にもお昼を食べる時間をください。
S:ええ~!
L男:先生、5分でいいじゃないですか。
T:あのねえ、先生にだってお昼を食べる時間をくれよ。労働基準法では1時間の昼休みが認められているのを15分でいいって言っているんだから。
I男:8時間労働すると1時間の昼休みですよね。
T:そうだ。先生は8時間どころか、1日に12時間から15時間学校にいるんだぞ。
I男:先生、それじゃあ、ほとんど2日分じゃないですか。
T:そうだろう?だから15分くらいくれよ。
S:(みんな笑って、それ以上文句を言おうとはしない)
T:では、これでおしまいにします。
【こぼれ話】
この後の個人面談は、4月、7月、10月に続く4回目のものだったので、短時間でざっくばらんな話をしましたが、それぞれが自分のことをよく話してくれました。なお、あらかじめ「『何か相談事はありませんか?』と最初に聞くから、何か困っていることがあったら話しなさい」と言っておいたところ、成績面、クラブ内での人間関係、家庭内の事情についての相談は受けましたが、クラス内の人間関係で困っているという相談を1件も受けなかったことはとても嬉しいことでした。もっとも、面接を待っている間に教室でゲームをしていた生徒とiPodを聞いていた生徒がいたことが面接後にわかり、指導のためにその生徒たちを再面接しなければならなかったことと、翌日(冬休み初日)に反省文を持ってこさせて再指導をしなければならなかったことというおまけはありましたが…。
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