27. 大人のたしなみ

【きっかけ・ねらい】

前回の話(4/16)の最後に「これからはみんなをもう少し大人として扱って話をする」という主旨のことを言いました。しかし、非公式な個人面談をしてみると、面談を受けるときのマナーがきちんと身に付いている生徒とそうでない生徒に差があるように感じました。これは1年次の担任が意識的に指導したかどうかということもその一因としてあると思いますが、全員に対して再指導する機会があってもいいと思い、この話をすることにしました。また、この指導の裏の目的として、このような礼儀作法を重視する姿勢を見せることによって教師に対する言動をしっかりさせること、すでに礼儀がしっかりしている生徒を褒めることでその生徒の成長ぶりを評価して満足感を与えることがありました。

 

なお、今回の個人面談は非公式に個人的に行ったもので、昼休みや放課後の空き時間を使って一人3~5分程度の話をしました。その最も大きな理由は、他の担任とちがって私だけが1年次に授業を持っていなかった生徒がクラスの5分の2いたので、その生徒たちとの人間関係作りを少しでも早く築きたかったからでした。それは同時に、そのような生徒たちの新しい担任に対する不安感を早く取り除いてあげたいということでもありました。また、全員に対して、新しいクラスの雰囲気や居心地についてどう感じているかを探ってみたかったということもありました。

 

【手順・工夫】

 面談時の挨拶については昨年の担任クラスでも同様の話をしており、他のクラスでも指導のあったことと思われたので、話の中身は簡素な確認程度にするつもりでいました(ところが、結局はいつものように余計なことを話したのでかなり長尺なものになってしまったのですが…)。また、「できていないこと」を批難するよりも「できていること」を強調することによって、生徒が心を開いて話を受け止めやすくするようにしようと思いました。

 

導入部の工夫としては、過去に何度か使った手法である「なぞかけ法」を採ることにしたことです。そして、今回はそれを数字のデータとして示し、それが何を表すのかを考えさせることによって生徒の関心を引くようにしてみました。また、ちょっとしたお遊びの話も入れて、気持ちを和ませてから肝心の話をしようと思いました。

 

なお、話を考えているうちに最終的にはけっこうな時間をとるものになりそうだったので、今回は生徒の集中力を考えて2回に分けて話すことにしました。

 

【実際の会話①】5/7

T:昨日はアレルギー性鼻炎のためか耳まで調子が悪くて話をする気になれなかったのですが、今日は調子がよくなったので、お約束の話をしようと思います。

S:(前日から予告してあったので、聞く態勢はできているようである)

T:ただ、今日はあまり時間がないので、話の「さわり」だけにします。

A男:何?「さわり」!?

B子:「さわり」?

T:は、は~ん。やっぱり旧5組の人が反応したな?

S:(多くの生徒が「いったい何のこと?」という顔でキョロキョロしている)

T:旧5組以外の人は何のことだかわからないよね?実はね、去年、先生があることを話そうと思ったときに、やっぱり今日みたいに時間がなかったので、「『さわり』だけにします」と言ったら、「えっ?先生、痴漢をしちゃったんですか?」ということになっちゃったんですよ。

S:(みんな笑う)

T:それで、「こらっ!お前ら、先生がそんなことをする人間に見えるか?」って聞いたら、みんなが「見えま~す!」だって!

S:(大爆笑が起こる)

T:(みんなが話に乗ってきたので、声の調子を上げて)ひどいでしょう?去年の5組の人は先生をそういう目で見ていたんですよ。

S:(また笑う)

T:(ため息をついて)まったくね…。旧5組ではいつも終礼がそんな感じで…。今年の5組の終礼は絶対にそうならないようにするぞ!

S:(「もう、そうなっています」のような笑いが起こる)

T:と、まあ、そのことはおいておいて、本当に時間がないので、今回の話は2回に分けてします。それで今日はそのとっかかりとして、ある数字を見せましょう。

S:(笑いが収まる)

T:実はですね、これからあるデータを示しますから、それが何を表すか考えてもらいたいんです。

S:(「何だろう?」という興味津々の顔)

T:(黒板に縦に「24」「27」「38」「29」の4つの数字を書く)これはね、実はみんなと面談をしたときに…、先週までみんなと面談をしたよね?そのときにわかったことを数字にしてみたんです。何のことだかわかりますか?

C男:面接の点数?

T:いや、そうじゃないなあ。

D子:面接の順位だ!

E男:そりゃあ、ちがうでしょ。だって、順番どおりになっていないじゃん。

T:ふっ、ふっ、ふっ。確かにちがいます。さ~て、何でしょう?

F子:先生、ヒント出してくださいよ~

T:う~ん、どうしようかなあ…。(上目使いでみんなを見る)

S:ヒントくださ~い!(みんなが乗ってきた)

T:しょうがないなあ。わかった。でも…、じゃあ、ある文字を書くけど、わかっても言っちゃダメだよ。(数字の左側にそれぞれ「し」「よ」「あ」「し」と書く)

S:「し・よ・あ・し」?

G男:「しよあし」って何?

S:(しばらくみんなが「しよあし」と繰り返しつぶやいている)

F子:あっ、わかった!「失礼します」「よろしくお願いします」だ!「あ」は「ありがとうございました」。(思ったことをすぐに口に出してしまう旧5組の可愛い生徒)

S:(これを耳にしたところで、何人かの生徒が何のことか察したらしく、隣り同士でコソコソと話している)

F子:最後の「し」って何だろう?

T:(F子の発言を無視して)え~、ということで、今日はさっきも言ったとおりデータを示すだけで、それ以上のことは話しません。なので、これでおしまいにします。

 

【こぼれ話①】

終礼が終わると、H子とI子が2人で嬉しそうに飛んできて、「先生、あの数字が何だかわかりました!面談のときに『失礼します』『よろしくお願いします』『ありがとうございました』『失礼しました』って言った人の数じゃないんですか?」と言いました。ズバリ正解であったので、一瞬どう対応しようかと迷ったのですが、結局「そのとおり」と認めてしまいました。次に、うっかり声に出してしまったF子もやってきて、「先生、4つともわかりましたよ!」と嬉しそうに言い、私が知らん振りをしていると、黒板に書いてあった4つのひらがなの後ろにそれぞれ該当のことばをすべて書いてしまいました。それでもう他の生徒にもわかってしまったようなので、それはそのまま放っておくことにしました。そうしていると、さらにH子が「先生、誰が言ったかってつけていたんですか?」と聞いてきたので、「そうだよ。こうやって(「正」の字を書くジェスチャーをして)1回1回カウントしてメモしていたんだ」と答えると、「ええっ!そんなことしていたんですか~?」と驚いていました。

 

なお、続きは翌日(8日)の終礼で話そうと思っていたのですが、その日は終礼後に生徒指導をしなければならないことが控えていたことに加え、実は結論まで導く続きの内容をきちんと頭の中で整理できていなかったので、翌週に回すことにしました。そこで、翌日の終礼ではそのことに触れずにスルーしようとしたところ、何人もの生徒から「先生、昨日の続きは?」と言われてしまい、「今日は時間も遅いし、話し出すと長いので、続きは来週にします」と言い訳をして終わりました。生徒たちがこの話にかなり関心をもっていることがわかるできごとでした。

 

【実際の会話②】5/10

T:(初めに、前回書いた数字と文字を書く)さて、先週の金曜日に書いたデータのことで続きを話したいんですが、聞いてもらえますか?5分ほどいいですか?

S:(「聞くつもりでいる」という顔をしている)

T:前回書いたデータのことなんですが、ヒントの文字を書いたら、何人かの人にはわかってしまったようですね。

H子・I子:(笑っている)

T:それから、ある人がそれをここに書いてしまったので、それを読んだ人もわかったと思います。

F子:(笑っている)

T:では、答えを聞いてみます。「し」って何ですか?

S:「失礼します」

T:「よ」は?

S:「よろしくお願いします」

T:「あ」は?

S:「ありがとうございました」

T:じゃあ、最後の「し」は?

S:「失礼しました」

T:そのとおりです。このデータは、41人の人のうち、それぞれのことばを言った人の人数を表しています。

S:(「へえ、そうだったのかあ」と今気づいた生徒もけっこういるようである)

T:これはね…。そう、最初の2人くらいの面談を終えたところで試しに数えてみようと思ったんですよ。それで、こうやって(「正」の字を書くジェスチャー)それぞれのことばを言ったら、1本ずつノートに線を増やしていったんです。

J子:え~!やば~い!私、言ってな~い!

T:大丈夫。先生は誰が何を言ったかなんてつけていません。誰かがそれを言ったときに単純に1本ずつ加えていっただけだから。

H子:え~、誰が言ったかもつけてくれたらよかったのに~。

T:で、ちょっと見てください。「失礼します」の人数が少ないのは仕方がないかもしれませんね。先生が入り口から見えない位置に座っていたし、「こっちおいで」って呼んじゃった人もいるから。「ありがとうございました」はさすがですね。ほとんどの人が言っていました。あっ!言わなかった3人を責めているわけではないですよ。

S:(自分ではないかと周りの者と顔を見合わせている)

T:「失礼しました」も難しかったかな?先生が見えなくなったところで部屋を出るからね。面白いのは「よろしくお願いします」だね。これはね、先生としても一番こだわっていることばだからよく覚えている。ちゃんと言った人と言えなかった人ね。言わなかった人には、こちらからそのことばを引き出そうとして「こんにちは!」って言いました。だから、先生に「こんにちは!」って言われた人は「よろしくお願いし ます」を言わなかった人。

J子:私、言われた~!

K子:私も~!

T:まあ、まあ。言わなかった人を責めているわけではないから。これを機会に次からは言えるようになればいい。

J子・K子:(まだ恥ずかしそうにしている)

T:それで、データを採り始めたら、ある面白い傾向がわかったんだ。

S:(全員がその答えを待っているかのようにこちらを注視している)

T:それはね、元何組かだったかによってけっこうちがいがあったんだなあ。実はね、この4つのことばをほとんど全員の人が言ったのが元○組の人たちだった。

S:(元○組の生徒がみな「やった~!」と声を上げて喜んでいる)

T:元○組の人たちは、おそらく担任の○○先生に厳しくしつけられたんじゃないの?

 面接のときはきちんと挨拶しなさいって。

H子:いいえ、別に言われていません。

T:えっ?そうなの?それなのに、ちゃんとみんな言えるようになったの?

H子:だって、○○先生がこわかったからです。

T:○○先生ってそんなにこわいの?

C男:けっこうこわいです。

H子:こわいから、ちゃんとやらないといけないと思って…。

T:へえ、そうなんだ…。おかしいなあ。○○先生ってそんなにこわかったかなあ。随分前と変わったんだなあ…。(この話はここで切る)それから、もちろん元5組の人たちもちゃんとできていたよ。そりゃあ、そうだよね。去年あれだけ話したんだから。

S:(元5組の生徒がホッとした顔をしている)

J子:先生、元○組は?

K子:ダメだったのは何組ですか?

T:いや、どのクラスがダメだったとかいうのは話すつもりはない。

S:(「絶対、○組がダメだったんだ」と言い合っている)

T:ちょっと待って。先生の言い方が悪かった。どのクラスが悪かったとかそういうことじゃなくて、今日はあくまでもこの数字を見て、自分が言えなかったと思う人には、次からは言えるようになってほしいんだ。

S:(ようやく動揺が収まる)

T:それはね、こういうことをきちんと言えるってことは「大人のたしなみ」だからなんだよ。ちゃんとした場面に出会ったら、こういうことばをきちんと言えるかどうかで相手の印象がけっこう変わるからね。もしかしたら、みんなの中にはそんなことはないって思っている人もいるかもしれないけど、この話を覚えていてちゃんとそれをできるようになれば、きっと将来先生に感謝する時が来ると思うよ。「ああ、あの時に肥沼先生に教えてもらってよかった」ってね。

S:(多くがニコニコしている)

T:それで、どうして先生が今日こんな話をしているかっていうと、実は先生はみんなと同じ中学生の時にこういうことができていなかったんだ。そんなことは中学生の時には気づかなかったんだけど、高1の時に気づかされたんだよ。

S:(どういうことがあったのかという関心を示している)

T:高1の時にね…、先生は男子校に通っていたんだけど…、その学校にも週番制度があって…。ただ、この学校とちがうのは教科係みたいのがなくて、翌日の授業の連絡を全部週番が聞いてくるわけ。だから、うっかり連絡を聞き逃したり、言うのを忘れてしまったりすると、みんなから「お前の怠慢のせいだ!」って責められるんだ。

L子:え~!たいへ~ん!

T:そうなんだよ。それで、週番を初めてやったときに、体育の先生のところに行って、「先生、明日の体育は何を準備したらいいですか?」って聞いたんだね。別にどこもおかしくないでしょ?

S:(みんなうなずいている)

T:そうしたら、その体育の先生に、「お前は何年何組の誰だ?どういう立場でここへ来た?もう一度、入るところからやり直せ!」ってしかられたんだよ。

S:(みんな驚いた顔をしている)

T:それで、仕方なく職員室の入り口まで戻って、何て言ったらいいか考えたわけ。「お前は何年何組の誰だ?」て言われたわけだから、クラスと名前を言わなければいけない。「どういう立場で来た?」と言われたから、週番として来たと言えばいいのかと。

 それで、もう一度やり直しに行って、こう言ったんだ。

S:(みんな注目している)

T:「失礼します!1年9組の肥沼です!」

C男:9組?

T:そう、1学年9クラスあったから「9組」。あれっ?数字じゃなくてアルファベットだった。だから、A,B,C,…,H,I。I組だった。「失礼します!1年I組の肥沼です!週番として明日の授業の内容を聞きに参りました!」ってね。職員室には先生が何十人もいて、その中で大声で言ったんだから、恥ずかしかったなあ…。

S:(みんな笑顔で聞いている)

T:そうしたら、その体育の先生は、「よし!それでいい!いいか、肥沼。人にものを尋ねに来るときには、そうやってまず自分のことを紹介してから話すんだ」って。

S:(再び緊張した顔になる)

T:先生はね、この体育の先生にとても感謝しているんだ。そのときにきちんと指導してもらったから、今の自分があるんだってね。例えば、今では初めて会った人に話しかけるときは、「失礼します。私は肥沼という者ですが、少々お話ししてもよろしいでしょうか?」って言えるようになったからね。だから、さっきも言ったけど、みんなも今日聞いたことを思い出して、いつか「先生にきちんと教えてもらってよかった」と思う日が来ると思うよ。

S:(そろそろ話を聞くのに疲れてきたような表情)

T:ところでね、教師でもそういうことができない人がけっこういるんだよ。

S:(また関心のある顔になる)

T:これはね、けっこう昔のことで…。実は、以前は自分のホームページにメールアドレスを載せていたから、よく見知らぬ人からメールをもらったんだ。そのほとんどは英語の先生からで、多くは先生が実践してきたことの資料を譲ってもらいたいというものだった。ところがね、中にはけっこういい加減なメールがあるんだよ。

S:(興味津々の顔になっている)

T:それはね、自分が誰かを名乗りもせずに、ただ単に「資料を送ってください」としか書いてないやつ。そういう時に、先生はどう返事すると思う?

S:(・・・)

T:そういう時はね、「失礼ですが、どなたでしょうか?英語の先生ですか?もしそうでしたら、コミュニケーションの仕方について教える立場の人間として、まずはご自分がどこの誰で、どのような理由で資料がほしいのかを書くべきではないでしょうか?」ってね。

S:(驚いた顔をしている)

T:そうすると、たいていは「大変失礼しました!私は○○の□□と申します」っていう丁寧な返事が返ってきたね。まあ、先生達も携帯のメールに慣れているから、最初からそういう乗りで送ってきたんだろうけど、初めて話す人間に自己紹介もせずに「資料ください」ってのは、英語の先生としては失格だな。

S:(緊張する話が続いたためか、疲れた顔をしている)

T:ところがね、1件だけそうじゃない返事が来た。

S:(また関心を示す)

T:おそらく、その人は先生よりも年上の女性だったんだと思うんだけど、「そっちこそ初めての人間にそういうことを言うのは失礼です」って書いてあった。

S:(笑いが起きる)

T:で、先生はそれに対して何て返事したと思う?

S:(・・・)

T:「それは大変失礼しました。ただし、もうこれ以上あなた様と連絡をとるつもりはありません」ってね。

S:(「なるほど」という表情をする)

T:というわけで、大人の間でも礼儀というのはなかなか難しくて、うまくいかないこともあるんだよね。先生だって、今でもきっとどこかで失礼なことをしているだろうし…。

S:(ホッとしたような表情をしている)

T:(時計を見ると、すでに10分以上話していたことに気づく)あれまっ!またついつい話しすぎてしまったようです。繰り返すけど、ここに書いてある数字がね、いつの日か全部41になるといいなと思っています。もちろん、そうならなかったといって、しかるつもりはないけど、今日の話がみんなの心の中に残っていて、それが将来生きることがあれば、先生は嬉しく思います。では、今日はこれでおしまい。

 

【こぼれ話②】

終礼後しばらくしてから、いつも明るく話しかけてきてくれるH子がやってきて、「先生、今、理科準備室に行ってきたんですけど、『失礼します!2年5組のH子です!』って先生が言ってたやつを全部言って話してきました!」と嬉しそうに報告に来ました。そしてさらに、「これから数学科にも行くので、そっちでもやってきます!」と言って走って行きました。おい、おい。あまり派手にやりすぎないように(笑)。

 

また、7月に行った2回目の個人面談では、挨拶をきちんとできた生徒の割合が劇的に向上しました(この点について2ヶ月後に生徒を追加指導した終礼の話は次ページをご参照ください)。元々比較的多くの生徒がきちんとあいさつできていたわけですが、それがさらにアップしたことがわかります。そのデータを見る限りでは、今回の話の教育的効果(「教育」とは「変化を起こさせること」と言われます)はかなり大きかったと言えるのではないかと思います。

 

【実際の会話③】7/12

T:今日はあるデータをみなさんに紹介しましょう。

S:出た~!(個人面談の直後だったので、多くの生徒が何のことかすぐに気づいた)

 

T:さて、これは5月に示した数字ですが、それぞれ何だったでしょうね?(①の4つの数字を黒板に書く)一番上は?

24 → 38 (18+20)
27 → 32 (15+17)
38  → 40 (19+21)
29 → 38 (19+19)

S:「失礼します」!

T:次は?

S:「よろしくお願いします」!

T&S:(以下、4つ目まで同様のやりとり)

T:そうでしたね。実は、今回の面談でもみんなが挨拶をする度に「正」の字を書いて数えていました。それに気づいた人もいたと思います。

A男:先生が書いているのが見えた!

T:では、これが今回の面談でどうなったかと言うと…(②の矢印と4つの数字を書く)

S:(固唾をのんで見つめている。数字を書く度に「お~!」と歓声が上がり、3番目の「40」を書いたところで大爆笑になる。クラスの人数が41人だからである)

B子:きっと私だ~!

T:さあ、誰だろうねえ。今回はもう少し詳しいデータもあるぞ。男女別の数字。左が男子で右が女子だ。(③の4組の数字を書く)

S:(3組目の数字を書いたところで、女子全員が歓声を上げて拍手をする)

T:ということで、「その1人」は男子だったということがわかっちゃったね。

C男:D男じゃね?

E男:そうだ、D男だ!

S:(笑いが起こる)

D男:(オロオロしている)

T:ちょっと待て。誰がD男くんだって言った?証拠もないのに勝手に決めつけるな!(D男の肩に手を乗せて)D男くんに失礼だぞ!ちなみに、D男くんではない。

S:(ばつの悪そうな顔をしている)

T:さて、これだけたくさんの人がきちんと挨拶できたというのはすごいことだと思います。でも、ただ言えばいいというものではありません。例えばね、こういう人がいたんだよなあ…。(黙って座ってしばらくして)「あっ!よろしくお願いします!」

S:(大爆笑になる)

T:そう、いかにも今気づいて言いましたみたいな。面談なんだから、あらかじめ準備してきてほしいな。それから、できたら機械的に言いましたという感じではなくて、本当に心から言っているという感じになるとさらにいいんだけど。

S:(ニコニコしながら聞いている)

T:まあ、きちんと言えたというだけも良しとするかな。次回はこれがどうなるかね。

 

  この数字が全部「41」になるのを楽しみにしています。では、これでおしまい。

 

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