26. 小さなこだわり

【きっかけ・ねらい】

新しいクラスになり、日常生活が始まりましたが、1年次の生活内容、特に終礼のやり方や週番活動には旧クラス毎に若干のちがいがあり、その運用をめぐって調整が必要でした。事前にそれを予期していたので、1年次に配布した活動マニュアルを再度配布して原点に返って活動させること、学級の係が決定した後に議長団を指導して学級自治会を開いて生徒に話し合わせることが学年会で決定されました。しかし、マニュアルには最初から気になる点があり、それを含めて生徒による話し合いを待たずともすぐに調整させたい細かい点がいくつかありました。そこで、この話をすることにしたわけです。ところが、話しているうちに、言い忘れたことや新たに気づいたことが出てきて、結局は3日連続で話すことになりました。

 

【手順・工夫】

この話を進める点で留意したことはその示し方でした。1年次のように単に「~しなさい」「~した方がよい」と結論を示すだけでは2年生の精神的発達度には合いません。しかも、それぞれにすでに1年間慣れ親しんできた習慣があります。したがって、へたをすると反発を招く恐れがあります。そこで、具体的な問題点とその対処法を示しつつも、なぜそれが大切なのかということを論理的に説明しようと試みました。

 

【課題1:「週番仕事チェック表」の記入と終礼の運営】

学級週番の活動の1つに、その日一日の仕事を誰がどの程度のレベルで行ったかを記録する「週番仕事チェック表」というものがあります。これは、縦軸に登校から下校までに週番が行うすべての仕事の項目があり、横軸に誰がそれをどの程度のレベル(○、△、×、/:該当しない)で行ったかを1週間記録できる枠があるものです。このチェック表は、平成8年度に本校で初めて担任した学年で私が考案したものですが、以降は自分の担任学年はもとより、他のいつくかの学年でも採用してもらっています。ただ、とても細かい内容を記録させることや、毎日学級日誌と一緒に提出させて確認しなければならないという煩雑さがあるので、実際の利用レベルは担任間で多少の温度差があります。しかし、考案者である自分としては、それを学級指導の一方策として利用する価値があるというこだわりがあったので、旧クラスでの使用実態をつかんだ上で、再指導をすることにしました。

 

一方、終礼の進め方は1年次に配布したマニュアルに立ち返って行うことにしましたが、どうしても納得できない箇所が1つありました。それは、最初に黙想をしたときに、黙想をさせたまま週番が「礼!」という点でした。1年次にも同様のことを感じたので、その時はすぐに自分の鶴の一声で、「目を開けてください」という一言を入れてから礼をさせることにしました。この点は1年次の各クラスでどのように扱われていたのか不明でしたが、マニュアルどおりに再度やらせてみたところ、生徒の中にもおかしいと感じる者が比較的多くいたので、目を開けさせることに統一させようと思いました。

 

【実際の会話】4/14

T:先生には「小さなこだわり」があります。「小さな」と言いましたが、それは実は とても大切なことです。そこで、今日はそれについて話したいと思います。話を聞いてみると、みんさんは「そんな細かいことを…」と感じるかもしれませんが、しっかり聞いてください。

S:(一応「聞く準備はある」という表情をしている)

T:(週番から「学級週番仕事チェック表」を渡してもらい、それを開いて見せる)みんなはこれを知っていますか?

S:はい。(数名が「知らない」という顔をして周りを見ている)

T:(順不動で各クラスを確認する)元○組の人は知っていますか?

S:はい。

T:元○組の人は?

S:知っています。

T:元○組の人は?

S:知りません。

T:そうか。○組ではやっていなかったんだね。それはそれでいいです。元○組は?

A子:知っています。

B子:うそっ? 私、知らないよ!

A子:ええっ? あったじゃん!

T:A子さん、これはどういうこと?

A子:確かあったと思います。

B子:あったっけ?

S:(笑いが起こる)

T:先生は君たちのクラスにこれがあったのを知っています。でも、2人の話を聞いていると、あまり使われていなかったということだね。

A子・B子:(恥ずかしそうに苦笑いをしている)

T:ええと、実はこれは先生が考えたものなので、旧クラスでどのように使われていたかというのを問題にするつもりはありません。でも、自分で作ったものであるということもあるので、先生は3年間これをきちんとやろうと思っています。なぜかという と、これによって週番がきちんと仕事の確認ができるからです。例えばここを見てください(水曜日の部分を指す)。おっ!今日の週番はきちんとここまで書いてあるね。

週番男子A:(書いた本人を見ると満足そうな顔をしている)

T:例えば放課後のイノシュー(「居残り週番」の略)ですが、これを見てチェックすれば、何をしてから帰らなければならないかがわかりますよね。だから、きちんとつけてほしいんです。

S:(素直な表情で聞いている)

T:それとですね…、ということは、これと日誌が下校前に準備室に返されていることがあるとしたら、それはおかしいと思いませんか?

S:(驚いたような顔をしている)

T:だって、最後に「窓締め・消灯を確認する」とあるのに、下校時間より前に出されていたり、ましてや終礼後すぐに出されていたりしたら、それはウソでしょ?

S:(数名が苦笑いをしている)

T:なので、きちんと仕事をしたのを確認して、すべて記入してから、日誌と一緒に出してください。お願いします。

S:(多くが「わかりました」とうなずいている)

T:それから、これはもっと小さなことで、「そんな小さなことまで…」と思われることかもしれないんだけど、終礼の最初に黙想をしますよね? それから「礼」をするわけだけど、やっぱり目をつぶったまま礼をするというのは我慢できないんだなあ。

週番男子B:でも、マニュアルにそう書いてありますよ。

T:そうなんだよ。でもね、先生はそれが納得できないんだ。去年もそう思ったから、すぐに「先生の感覚に合わないから、目を開けてから礼をして」って変えてもらったんだね。

S:(旧5組の生徒がうなずいている。他の生徒は意外に無反応)

T:でね。やっぱり今年も気になるんだよねえ。それで、「やっぱり先生の感覚に合わないから変えてくれ」ってずっと言おうと思っていたんだ。でもね、2年生のみんなにそう言っても納得してもらえないだろうから、どう話そうかなってずっと考えていたんだ。

S:(多くが関心を示しているが、数名が「早く終わらないかなあ」と中庭を見ている)

T:それで、昨日の夜、お風呂に入りながら、(タオルで身体をこするジェスチャーをして)こうやって身体を洗いながら考えたんだ。何か上手い説明はないかなって。風呂に入ってるときまで学校のことを考えているなんてすごいでしょ?

S:(数名がニコニコしている)

T:そして、2つの論理的な説明を思いついた。

S:(「試しに聞いてやろう」という関心を示している)

T:1つはね…、これはそれほど重要じゃないんだけど、目をつぶったまま礼をするのは危ないってこと。

S:(笑いが起こる)

T:だってさあ、もしかしたら、顔をどこかにぶつけるかもしれないでしょ?

S:(再び笑いが起こる)

T:まあ、今のはちょっとふざけた説明だけど…。真面目に言うとね、目をつぶったまま身体を動かすというのはやはり危険だし、そう思うと不安になるから声も出ない。そうすると、挨拶の声が小さくなってしまうでしょ?

S:(理解はできるが、はぐらかされているのではという笑顔で見ている)

T:もう1つは…、これはもっとちゃんとした理由だよ。ところで、「黙想」って何のためにやるの?

C男:その日一日のことを思い出して反省するため。

T:そうだよね。じゃあ、「礼」は?

D男:挨拶のため。

T:そうでしょ。そもそもこの2つは目的がちがうんですよ。それをね、1つの流れの中で一緒にやるというのはおかしいでしょ?

C男:そうかあ!

T:だから、その2つの間には何か切り替えが必要だと思うんだよね。その切り替えは?

D男:目を開ける。

T:でしょ? だから、黙想と礼の間には、「目を開けてください」が必要だっていうわけ。さあ、先生の説明に納得できた人は「ガッテン!ガッテン!」(NHK総合テレビ「ためしてガッテン!」の決め台詞)をしてみましょう!

S:ガッテン!ガッテン!(数名が声を出してそのポーズをする。他の者は笑っている)

T:ということで、明日からはちゃんと目を開けてから礼をしてください。では、今日はこれでおしまい!

 

【こぼれ話①】

今回の話の最大の収穫は、自分の話に初めて新しいクラスの生徒がからんできてくれたことでした。それまで私の話にどう対応したらいいか迷っていた、あるいは周りの仲間の目を気にして発言を控えていたと思われる生徒の「心の壁」(英語で言うと emotinal barrier)を一部崩せたかなと思いました。

 

なお、翌日の終礼では司会役の週番がこのことを忘れていて指示を出そうとしていたので、他の2人の週番に「昨日先生が言ってたじゃん!」と言われ、「礼!」の前に目を開けさせる指示を出していました。ただ、何と言ったらいいのかかなりの時間(といっても十数秒)議論し、そのうちの一人が「『やめ!』でいいんじゃん?」と提案したので、この時は「やめ!」ということになりました。

 

この件は一件落着したようですが、今度は最後の「さようなら」の声がほとんど出ないということがありました。その原因の1つは以前から気になっていたことでしたので、翌日の終礼で取り上げることにしました。

 

【課題2:挨拶の声を大きく】

授業及び終礼時の挨拶は、「よろしくお願いします」と「ありがとうございました」の言葉を添えることを、前回の担任学年と同様に入学式直前の学年会で私が提案し、担任団全員で了承していただきました。そして、それを全クラスで1年間続けてきました。ただ、このような行動規範を続けさせることは学年が進むにつれて難しくなり、クラス替えをした際に再度しっかり指導しないと、場合によってはいつの間にか消えてしまう可能性があります。実際、新5組もその例外ではなく、週番がいい加減な指示を出すと、他の生徒の挨拶の声があまり出ないという現象が見受けられました。そこで、きちんとした再指導が必要であると考え、それをこの日に取り上げることにしました。

 

【実際の会話】4/15

T:今日の話は「小さなこだわり」のパート2です。昨日は黙想の後の礼の仕方についてこだわりましたが、今日は授業のときの挨拶のことについてです。

S:(「なんだ、そんなことか…」と思っているような表情をしている)

T:みなさんは、先生が挨拶にこだわりがあるのを知っているでしょう?英語の授業のときも何度もやり直してもらったりしていますからね。なぜこだわっているかというと、それはもちろん、挨拶がとても大切だと思っているからです。では、なぜ大切だと思っているかというと…、それはいずれ日を改めて話しましょう。

S:(話が長くなりそうもないので、ホッとした表情をしている)

T:それで、今日はとにかく大切なことだと思っているので、それをきちんとやってもらう方法をみなさんに話したいと思います。その方法は、やはり週番が単に「礼!」というのではなく、きちんとその場に応じた言葉を言ってもらいたいんです。なぜかというと、「礼!」と言っただけでは、みんな一瞬「何て言おうかな?」って迷いますよね?迷うと、言うタイミングがずれる。タイミングがずれると、一人一人が自信がないから声が小さくなる。そうすると、しっかりとした挨拶にならないというわけです。

S:(納得しているような表情)

T:そこで、週番にはその場その場で言うべきことを大きな声で言って、みんなをリードしてもらいたいんです。

S:(数名が「わかりました」とうなずいている)

T:では、それぞれの場面で何と言ったらいいでしょうね? 例えば、授業の始めは?

S:「よろしくお願いします。」

T:終わりは?

S:「ありがとうございました。」

T:まあ、これは毎回やっているから簡単ですね。じゃあ、終礼が終わって帰るときは?

A男:「ありがとうございました。」

S:(笑いが起こる)

B子:それはおかしいよ。

T:そうですか? では、何ですか?

S:「さようなら。」

T:まあ、やっぱりそれでしょうねえ。じゃあ、他には…? 朝の会を始めるときはどうしよう?

C男:「よろしくお願いします。」

T:まあ、それもいいけど、朝一番にふさわしいのは?

S:「おはようございます。」

T:やっぱりそれでしょう。ということで、場面場面でそれに応じた挨拶を週番が言ってください。明日から、もし「礼!」なんて言う週番がいたら、「ああ、こいつは何も考えていないヤツなんだな」って思うからね。

S:え~!

D子:そんな~!

T:いや、これはとても大切なことだから、みんなにしっかりやってもらいたい。いいでしょうか?

S:(声はないが、「わかりました」とうなずいている)

T:では、今日はこれでおしまい。

 

【こぼれ話②】

翌日は、朝の会、授業、昼食時、週番引継、終礼等、すべての場面で週番がきちんと挨拶のことばを言っていました。そして、クラス全体の挨拶もしっかりしていました。

 

一方、この日に話したことを帰路の電車の中で振り返りながら手帳にメモをしていたところ、ある大切なことを話しそびれていたことに気づきました。そこで、翌日の終礼でそのことを話そうと思いました。

 

【課題3:考える生徒に】

上の「こぼれ話」にもありますが、前日の挨拶の指導について振り返っていたところ、その指導の中に隠されているある重要なことに気づきました。それは、自分の話の中にも入っているのですが、週番にその場その場に応じた言うべき言葉を考えるように指導したということは、その生徒は反射的にいつもどおりのことを言えばいいのではなく、場面毎に何を言うべきかをきちんと考えて決断を下し、それを仲間に示さなければならないという課題を与えたことになります。そのことに気づいたとき、この大切なことをきちんと生徒に納得させれば、さらに一歩進んだ、自立した生徒に育てられるのではないかと思ったのです。もちろん、週番には「礼!」と言わせ、何を言うかを残りの生徒全員に考えさせるという方がさらに進んだ指導と言えないこともありませんが、それでは全生徒が一日に直面する判断すべき場面の数があまりのも多すぎてハードルが高くなり、結局はまた以前のような状態にすぐになってしまうことが予想されるので、順番に回ってくる週番の時にはそのことをしっかり意識させるということで、一人一人にそれを経験させることにしました。

 

おりしも、この日の3、4時間目のHRHでは前期の委員・係を決めることになっていました。それがどのような成り行きで決まるのかどうかまったく予想がつかなかったのですが(結果的には、未だかつて経験したことがないような感動的な選挙で委員が決まりました。それは後の【こぼれ話】を参照)、それとは切り離してこのことを上手に生徒に話して納得させようと思いました。

 

【実際の会話】4/16

T:さて、昨日の終礼で、挨拶をしっかりするようにと話しましたが、今日一日を振り返ってどうだったでしょうか?しっかりと挨拶できましたか?

S:(声は返ってこなかったが、多くの生徒がうなずいている)

T:そうですか。週番にきちんと言う言葉を考えて言ってもらうようにしましたが、その方が言いやすかったですか?

S:(これにも声は返ってこなかったが、多くの生徒がうなずいている)

T:なるほど。やはりそうしてもらってよかったなと思います。ところで、その話をしたときに、最後の方でみんなが「え~!」というようなことを先生は言ったのですが、それを覚えていますか?

S:(多くはキョトンとしているが、何人かが首を振っている)

T:それはね、「もし『礼!』なんていう週番がいたら、そいつは何も考えていないヤツだって思うからね」という部分です。覚えていますか?

S:(「ああ、それなら」という顔をしてうなずき、笑っている)

T:なんであんなことを言ったかというと、みんなにね…、少なくとも週番になったときは、場面に応じて、周りのことを考えて、きちんと物事を判断できる人になってもらいたいからなんです。

S:(真剣に聞いている)

T:先生もね、みんなにこうして話すときは、どうやって話したらみんなが聞いてくれるかなって考えて話しているんですよ。それを考えずに、ただ何か言えばいいやと軽く考えて連絡だけしていたら、みんなは聞こうとは思わないでしょ?

S:(数名がニコニコしている)

T:それと同じだと思うんですよね。みんなが週番としてクラスメートにきちんと挨拶をさせなければならないとしたら、その場その場で状況をきちんと考えて言うことを考えなければならない。そして、そういうことを週番の時にやっておけば…、つまり、そういう経験を積んでおけば、場面に応じて行動できる人になれると思うんです。だから、これからもしっかりとやっていってください。もし、できていない人に気づいたら、やり直してもらいます。

S:(緊張した笑いが起こる)

T:話は変わりますが、今日のHRHの委員・係決めはとてもよかったですね。学級委員の選挙の時にも言いましたが、あの時は感動して鳥肌が立ってしまい、涙が出てきそうでした(注:【こぼれ話】参照)。そして、その後の学級委員たちの司会ぶりにも驚きました。いろいろなことを安心して任せられるなって。

学級委員たち:(チラッと目を向けると、歓びと不安の入り交じった表情をしている)

T:それからね。ここ数日のみなさんの様子と今日のHRHの様子を見ていると、どうやら先生はみんなの精神年齢を1.5歳くらい読み誤っていたようです。

S:(「いったいどういうこと?」という驚いた顔をしている)

T:どういうことかというとですね…(うまいことばが見つからず、しばらく沈黙する)

 みんなは先生が思っていたのより、精神的に大人だっていうことです。それはもしかしたら、去年の5組の人たちが子供っぽすぎたのかもしれませんが…、

A子:(旧5組でよく反応した女子が笑っている)

T:というより、みんなが2年生になって、急に大人っぽくなったのかもしれませんね。先生はどうやらそれに気づいていなかったようです。なので、これからは、みなさんに対する態度を少し変えようと思います。みなさんをもう少し大人扱いしようと思っています。そのためには、終礼で話すときも話し方を変えなければなりませんね。もちろん、言いたいことは言いますけど(笑う)。

S:(穏やかな顔でこちらを見ている)

T:では、今日はこれでおしまいにします。週番、お願いします。

週番女子:静座!

T:(数名が何かしているので)「静座!」がかかったら静座です。

S:(他の生徒まで背筋がピンと伸びる)

週番女子:起立! さようなら!

S:さようなら!

T:はい、さようなら。

 

【こぼれ話③】

これは終礼の話とは直接関係がないのですが、この日のHRHの時間に行われた前期の委員・係決めは今までにないくらい素晴らしいものだったので、そのことを記しておきたいと思います。

 

本校では、全学年とも最初に学級委員(男女各2名)、保健委員、図書委員、議長団(以上、男女各1名)を選挙で選びます。実は、前日の時点で「3組は女子が8名も学級委員に立候補するらしい」という噂を耳にし、実際にその中の旧5組であった生徒からもその意志を確認しました。ところが、当の5組からは何の声も聞こえてきません。

そこで、これは推薦すら出てこない大変な状況もあり得ると覚悟していました。そこで、選挙が始まる前に、今さら無駄だろうとは思いつつも、「これまで何度か話してきたことだけれども、仲間のために頑張ろうと思っている人は自分がやってみようと思う係に積極的に立候補するように」と念を押しておきました。

 

ところが、ふたを開けてみると、予想を大きく覆す様相を呈しました。なんと、学級委員に男子が5名、女子が4名も立候補したのです。しかも、その立候補理由を聞いていると、どの生徒も仲間のために頑張りたいというだけでなく、本校のキャッチフレーズでもある「自治」を持ち出し、自分たちの力でクラスや学年をさらに良くしたい、行事を成功させたい等、まるで生徒会役員選挙(本校では「委員長陣選挙」と言い、生徒会長にあたる委員長1名と副委員長2名だけを選ぶ一大イベント)かのような演説をしたのです。さすがにこれにはびっくりしました。そして、演説を聞いているうちに、本当に感動で鳥肌が立ち、涙すら浮かんで来たのです。しかし、選挙は残酷です。あれだけの演説をしながら、9名のうち5名は涙をのまなければなりません。そこで、開票をする前に自分が感動している事実を伝え、例え落選したとしてもその人たちの意志は尊重されるだろうということを予め伝えておきました。

 

なお、他のクラスでもほぼ同様の状況であったことがその日の学年担任会でわかりました。おそらくは、この春卒業した昨年の3年生(金子学年)の活躍ぶり(注:10、11の話参照)を目にし、それを引き継いだ現3年生の頑張りを見て、自分たちもしっかりやろうと密かに(?)力をためてきたのではないかと思いました。

 

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