※自分で印刷した冊子版の第6巻・第7巻の「はじめに」を再編集
前半の10話(第48話~第57話)は、3年生の前期(4月~10月中旬)に話したものです。この期間は、名実共に校内の最高学年として修学旅行、運動会などの行事や部活動など学校生活全般で活躍することが期待される時期なので、それに合わせた話題が多くなっています。一方、3年生に進級する際にクラス替えのない本校では、生徒同士の人間関係も学級担任と生徒の人間関係も新たにやり直すということが事実上不可能なので、マンネリズムに陥りがちな学級内の雰囲気に少しばかりの緊張感を持たせつつ、それまでに築いてきたものを崩さないよう、一層深みのあるものにする努力をしなければなりませんでした。したがって、この期間はそのあたりの難しさが表れている話が多くなっています。
まったく同じメンバーである41人の生徒と同じ担任のつきあいも2年目に入り、3年5組の生徒達は良きにつけ悪きにつけ“肥沼色”の強い雰囲気をもつ集団になっていました。私はどちらかというとかなり先のことまで考えて先走って行動してしまう質(たち)で、その上自分の思いどおりに事が運ばないと我慢できない性分なので、どうしても生徒に細かく指示を出してしまいがちです。それは、結果として生徒の活動の質を高めるという点ではプラスに作用していると言えなくもありませんが、一方で生徒の自主性を伸ばすという点ではマイナスに作用しているのではないかと危惧もしていました。つまり、終礼の話を含めて、あらゆることに私が口を出して一生懸命指導してきたことは、かえって生徒の自主的活動能力が育つことを阻害してきたではないかと感じていたのです。特に、今回のクラスのように早くから比較的大人びた生徒が多い集団に対しては、もう少しおおらかに構えて生徒にいろいろなことをどんどん任せた方がよかったのではないかと思っていました。このあたりのことは前半の10話全編にわたってにじみ出ているように思います。もちろん、だからといってそう簡単に自分を変えることはできませんし、そこまで関わっておいて急にはしごをはずしてしまったら生徒も困るでしょうから、少しずつ生徒を手放していくことにしました。
後半の11話(第58話~第68話)は、3年生の後期(10月中旬~3月)に話したものです。この期間は、中学校生活最後の半年間で、生徒にとっては高校進学という進路を決定する大切な時期にあたります。もっとも、本校ではこの期間にも学芸発表会(10月)、研究協議会(11月)、合唱発表会(12月)という大きな行事があり、3年生といえども進路のことだけを考えていればよいというわけにはいきません。そこで、それぞれの行事の前後ではそれらに向けての意識向上をねらったり、それらの振り返りをしたりする話があります。また、卒業に向けて生活していく中で、中学校の教師として生徒に伝えておきたいことの総仕上げのようなつもりで話したものもあります。
ところで、本校には同じ敷地内に附属高校があり、生徒の約8割が内部進学という形で附属高校に進学することができます。そのため、進路指導は一般の学校より楽そうに思われますが、逆に本校にはそのことからくる生徒指導上の難しさがあります。すなわち、1月初旬に行われる内部進学試験で進路が決定してしまった大多数の生徒が卒業式までの約2ヶ月間で気を抜いてしまわないような指導をしつつ、2月末に行われる都立高校の入試が終わるまでは残りの生徒のケアもしていかなければならないということです。今回収録した話の中にはその点について直接ふれているものはあまりありませんが、言外にそれをにおわせているものや、その点を意識して事前指導のつもりで話したものがいくつかあります。
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