イングリッシュ・ルーム


本校には、昼休みや放課後にネティブ・スピーカーと自由に話をできる英会話教室があります。授業ではなかなかできない自由な雰囲気で好きなことを話せるこの時間は生徒から大変好評です。特に、英語学習に強い関心を持っている生徒からの支持が高く、毎週のように通っている生徒もいます。ここでは、その英会話教室「イングリッシュ・ルーム」導入までの経緯と運営方法について紹介しましょう。

 

イングリッシュ・ルーム(以下「ER」)は、平成24(2012)年後期に急に予算がついて始まりました。当時の副校長から、「学教(現筑波大学教育局)から予算がつきそうなんだけど、ALTを2名に増やして英会話教室をやってみてはどうか?」という提案があり、実現にこぎつけたものです。ちょうどその年からアメリカ短期留学が行われることになっており(同年度3月に初めて実施)、授業を超えた英語教育の機運が校内にあったこともERの導入を後押ししたと考えられます。

 

問題は実施場所でした。英語科には特別教室はありません。また、公立中で生徒減などで余った“空き教室”もありません。ただ、2階の英語科準備室のとなりに放送室があり、そのまたとなりにほとんど使われていないスタジオがありました。スタジオはかつて英語科の「英全」や国語科の「国全」という学年全クラスを放送で一斉指導するのに用いられていましたが、平成9年度以降はそうしたことはやっておらず、ほとんど倉庫と化していたので、その部屋を利用することになりました。そこで、予算でカーテンと防音用のカーペットを新調し、新しいテーブルと本棚を入れて、新たに「イングリッシュ・ルーム」として模様替えされたスタジオでERをスタートしました。

 

運営はアメリカ短期留学の企画がスタートしたときに組織された国際委員会が行うことになりました。その中心となったのはもちろん英語科ですが、他教科の教員も数名入っています。ただ、筆者は翌年から研究部長(4年)と教務部長(2年)を務めることになったので、同委員会に所属したことはありません。それでも英語科の教員である以上はまったく関わらないというわけにはいかないので、部外教員のような立場で運営に協力しています。

 

先述のように、英会話を担当するのは本校に勤務する2名のALTです。幸い、当時務めていたALT2名が快くこれを引き受けてくれ(一日5時間連続の授業に加えての勤務であった)、以来今日までその態勢は続いています。ただし、彼らは非常勤なので、増えた勤務時間分は後援会費(保護者から集めたお金)から支払われることになりました。

<注>予算の関係で、令和3年度よりALTが再び1名になりました。

 

実施日は前期は火曜日ないし水曜日の1日のみ、後期は火曜日と水曜日の2日としました。いずれもALTの勤務日です。開設時間は当初は放課後のみでしたが、翌年から昼休みの30分間と放課後の3:40から下校時刻(夏期は5:40、春期・秋期は5:00、冬期は4:40)までとなり、令和2年度は再び放課後のみとなりました。一組(個人では希望者をさばききれないので、2人一組とした)の持ち時間は15分とし、昼休みに2組×2、放課後に4~7組×2(下校時刻により異なる)の枠を確保しました。参加するには事前の予約が必要で、ERのドアに実施枠が貼られているので、生徒は自分の希望する日時に予約することになっています。

<注>ALTの労働時間を考慮して、令和2年度から昼休みの活動を休止しました。

 

参加できる生徒は当初はまったくのオープンでした。しかし、翌年より前期は3年生を優先し、後期は1・2年生も平等に参加できるようにしました。これは後援会費で運営する以上は、全生徒にできるだけ卒業するまでに一度はERを利用してもらおうという配慮からでした。数年後には3年生全員(205名)が前期中に一度は利用するようなシステムにしましたが、令和2年度は臨時休校と分散登校でそれができませんでした。なお、年度末に行われるアメリカ短期留学(定員36名)は希望者が大変多いため(倍率は毎年3倍前後)、申し込みの条件として「申込時ですでに最低2回はERを利用したことがあること」としています。

 

以上のような運営方法をとっていることもあり、現在ERは毎回盛況です。実は、本校のER実施が学校教育部に認められて、数年前から他の附属校でも同じような自由英会話教室ができたのですが、多くの学校では生徒がなかなか集まらないと聞いています。同じような悩みを抱えている学校では、本校の運営方法を参考にしてみてください。

 

なお、ALTの負担軽減のために令和2年度から昼休みの活動が無くなり、さらに予算の関係で令和3年度からALTがまた一人になったため、上記のような運営ができなくなり、現在は3年・2年>1年の優先順で希望者を対象に行っています。枠が半減してしまったのに希望者が多いので、任意の参加にも関わらず、毎回ほぼ満席状態です。

 

【参加した生徒の感想】※国際教育委員会の報告書より抜粋(コピー)

◆気軽に英語を使える。初回は不安や抵抗もあったが、行けばすぐ慣れる。授業と違い自分で話し

たい内容も決められる。英語に自信がなくても、好きな話題なら、伝えたいという気持ちで何とか

なる。(2年)

英語上達には短時間でも多く話せるERがベスト。初回は一年次で英語力もなく不安だったが、

友人の誘いで思い切って行ってみた。きっかけがない人は友達を誘ってみては。先生方の故郷の話

や体験談などを聞けるのも楽しい。以前物理の話をしたいが、「原子」「中性子」「陽子」などの

表現がわからず、図で伝えようとした際、先生が各単語を教えてくれ、とても勉強になった。何度

も行くと先生方と打ち解けられ、授業で緊張しなくなった。(3年)

緊張や不安があっても、まずは一度来てみた方がよい。(2年)

英語は使わないと伸びないのでどんどんERで使った方が絶対によい。即反応する力も伸びるし、会話学校に比べたら、お金も時間もかからない。(3年)

話題を思いつかなくても,先生が何か話しやすい質問をしてくれる。うまく話せなくても,日本

語を教えたり,絵を描いたりして,こちらのペースに持ち込めばいい。以前より英語で話すことに

抵抗がなくなってきた。アメリカ留学に申し込みたくて行き始めたが,意外に面白かったので今も

続けて来ている。(2年)

日常で英語を話す機会や,授業中ALTの先生方と一対一で話せる時間は少ないので,一人でもき

ちんと話せるようになりたいと思い,基本的に予約できる日は毎日予約している。最初は全然話せ

なかったが,間違えても先生がフォローしてくれ,正しい表現を丁寧に教えてもらえ,話しやすく

なった。授業で話さないような話題でも気軽に話せる。あとはもちろん無料で毎週行けるのがい

い!(3年)

英語に不安があっても,得意な友達と行くと,わからないことを聞けるので大丈夫です。(2

年)

一度行き始めれば,次から次へと自分が話せるようになっていくのが実感できます。一度まず勇気を出して行ってみてください。先生方の出身地の話も聞けるので,留学に興味のある人は絶対行った方がいいと思います。(3年)

日頃から来室していると、いざ英語を使う場面になっても,緊張せずに言いたいことを言えるよ

うになってきた。初めてのときは英語で話すのに抵抗があったが,一度来ると楽しくてハマる!当

初は言う内容をノートに書いたりしたが,今では自然な会話を楽しめるようになってきた。(1

年)

◆授業で習ったことを実際に使ってみて,どれくらい身についているのか確かめたくて来ている。

英語で瞬時に反応するのは難しいが,知っている表現を組み合わせて話すのが上達してきたと思

う。将来の夢や読んだ本から学んだことなど深い話になることもあるが,先生や友達に助けてもら

いながら伝えられると,自信になる。(1年)

最初は友達に誘われたが,おもしろくてよく来るようになった。先生の経験談を聞くのも楽しい

し,勉強になる。以前はTTの授業や英語での発表が辛かったが、毎週来ていると,英語を使うこ

とが楽しくなり,今はTTの授業が苦にならない。身近に英語で話せる人がいるのはいいと思う。

(2年)

習っていないことでも話しているうちに,簡単な表現や雰囲気でかなり伝わる。最初は聞き取れず難しかったが,わかる部分をつなぎ合わせれば何とか話せる。授業でわからないことも,ここでくり返し話すうちにわかるようになってきた。話題を決めていかなくても,先生がいろいろな話題をふってくれるので大丈夫。全員に来室を割りふるのは2年生でもよいのではないかと思う。(2年)

 

 

ERの入口ドア(左)。英語科準備室(右奧)の隣の隣

ERの予約記入表枠

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