教科書本文の導入(オーラル・イントロダクション)

オーラル・イントロダクションというと、新出文法事項の導入(「(1) 新出文法事項の導入(オーラル・イントロダクション」または「新出文法事項のオーラル・イントロダクション」のコーナー参照)の場面を指すと思われがちですが、実はそうではありません。むしろ、本家の「オーラル・メソッド」では、本文の内容を口頭導入することを指しています。教科書の本文を読ませる前に、その内容を生徒に理解可能な(つまり既習事項を使った)英語で導入してしまうのです。ここでは、それを行う際の留意点を述べます。

 

(1) 事前に本文を熟読し、口頭で導入すべき範囲を見極める

最初に、本文の内容をどこまで導入するのかということを考えます。例えば、細部まで全て導入するのか、要点だけ導入するのか、場面設定だけ行うのか、等です。どこまで導入するかは、教材によってちがいます。全部できそうだと判断できるものはやってもいいと思いますし、細部は難しいから要点だけ入れてみようというものもあるでしょう。内容がかなり抽象的なものの場合は、場面しか入れられないようなものもあるでしょう。

 

したがって、事前に教材をよく吟味して、口頭で導入すべき範囲を見極めるということが大切です。ここを見誤ると、やってはみたものの生徒が理解できないとか、やっているうちに生徒が飽きてしまうといったような状況に陥ることがあります。

 

(2) 本文を意味のある内容として生徒に語る

次に大切なのは、本文をそのまま再生するのではなく、教師自身が考えた「生きた」ことばで語ることです。それは、導入活動自体をリアルなコミュニケーション活動になるようにしたいからです。例えば、今こうして書いていることも、指導要領をそのまま書き写しているだけでしたら、みなさんはこれを読まないでしょう。教師が自分自身のことばで、どう話したら生徒にわかりやすいかを考えて話すのが大切です。

 

つまり、教科書の内容を生徒の身近な生活場面に変えて話を進めていくことです。本文の全てをそれで導入できるわけではないですが、話し終えたら結果的に導入が終わっていたという形になるのが理想です。

 

(3) 生徒とのインタラクションを重視する

文法事項のときの繰り返しになりますが、オーラル・イントロダクションでは、生徒に語りかけ、答えを拾いながら進める指導過程を採ること大切です。そうすれば、教科書本文が、単に内容を理解するだけの教材から、会話の題材になるようになります。

 

もちろん、オーラルだけで、全ての生徒に細かいところまで理解させられるわけではありません。開本してから細かい文法的等を日本語で補足することは否定しませんし、自分も実際にそうしています。しかし、最初から「読んで理解する」ではなく、まず音声で入ってから開本して読ませるという方法を採ってみてください。概要・要点・細部を理解する、などの活動を音声でやると、理解活動にもメリハリが生まれます。

 

なお、実際の授業でどのように導入しているかの例は、以下でお読みいただけます。

 

・「英語で行う中学校1年生の授業:ケンちゃんといつでもティーム・ティーチング全台詞

 

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