新出文法事項の導入(オーラル・イントロダクション)

先生方は教科書の新出文法事項をどのように生徒に教えているでしょうか?「今日は~を勉強しましょう」と日本語で明示的に教えているでしょうか。この教え方は「演繹的」に教える方法です。つまり、学習項目を明示的に説明することで生徒に理解させようとするものです。一方、この逆の方法として、生徒に気づかせることを重視した「帰納的」手法もあります。やや遠回りなことを承知の上で、生徒とやりとりをしながら、生徒に結論に気づかせるように教えていきます。

 

新学習指導要領改訂の基本方針でも謳われている「思考力・判断力・表現力等」に配慮した指導は、演繹的と帰納的のどちらでしょうか。もちろん、帰納的な指導過程をとった方が、生徒の思考を促し、判断する機会や表現する機会を多く与えられます。そして、そのような考え方に基づいた指導方法の1つが「オーラル・イントロダクション」なのです。

 

では、そのオーラル・イントロダクション(以下、OI)を行う際の留意点について述べます。

 

(1) 場面設定をきちんと行う

OIは、生徒と一種の仮想空間を共有するので、その場面が何かを明確にする必要があります。そこで、最初に生徒と会話しながら場面設定をしていくようにします。この場面設定が無く、いきなり本題を話し出して生徒を戸惑わせる実習生や先生が時々います。実物、写真、絵などの視覚教材を補助的に使いながら、的確な場面設定を行いたいものです。

 

(2) 帰納的に理解させる

昨今は管理職の指導で、毎時間授業の目標を最初に板書するということが増えているようです。例えば、2年生なら、不定詞の名詞的用法を扱う際に「自分のなりたいものを言えるようになる」ということなどでしょうか。活動目標を示すことは反対しませんが、「不定詞の学習」とか「『~すること』という表現を学ぶ」などの学習内容そのものを示すことには疑問を感じます。それをやると、生徒の気づく楽しみを奪ってしまいますし、教師も気づかせる楽しみを失うからです。

 

また、「日本語で詳しく説明しないと生徒はわからない」と考える先生がときどきいますが、それは教師の幻想です。わからない生徒は、例え日本語で詳しく説明したとしてもわからないことが多いからです。それは生徒は話を聞いているようでも頭は活性化していないからです。これに対して、平素の授業から「なんだろう?」と疑問に思わせ気づかせる指導は、生徒の思考を活性化します。帰納的な指導過程に生徒を慣れさせることで、生徒が自然と考えることに慣れてくるくるのです。

 

もちろん、未習表現を理解させるわけですから、「理解可能なインプット」が必要です。つまり、既習表現を使って帰納的に理解させるような指導過程を考えることが大切なのです。

 

(3) 生徒とのインタラクションを重視する

3つめのポイントは、OIの真骨頂とも言える、生徒とのインタラクションを大切にすることです。教師が一方的に話したのでは、例えそれが明示的な説明であっても、生徒の思考は不活性なままです。適度に生徒とやりとりすることは生徒の頭の中で「考える」という活動を促進させ、反応することで「表現する」という活動も行うようになります。そして、英語の問いかけに英語で反応させれば、それが即、実際のコミュニケーションになるというわけです。

 

また、この方法は授業運営上の技術としても有効です。それは、一方的に教えると生徒は飽きてくるからです。「気づかせる」という発想を大切にした指導過程は、生徒を「参加させる」ことを前提とするので、自然と生徒が集中するようになります。授業中に生徒の集中力がない、あるいはなくなってきたと思ったら、それは生徒とのインタラクションが欠けているからかもしれません。

 

なお、オーラル・イントロダクションの実際は、以下のページで読むことができます。

・「文法指導」の各指導事項のページ

「新出文法事項のオーラル・イントロダクション」の各指導項目のページ

・「英語で行う中学校2年生の授業:新出文型のオーラル・イントロダクション全台詞

 

(2) 教科書本文の導入(オーラル・イントロダクション) へ