4. 入門期のロイロ遠隔学習指導

ロイロノートのカードで「授業を再現する」と言っても、中1の入門期には2年生や3年生のような教科書を使った定型の指導過程はありません。ここで言う「定型」の指導過程とは、例えば①前時の復習、②新出文型の導入と練習、③新出単語と教科書本文の導入、④教科書の音読、⑤まとめ、というようなものを指します。

 

勤務校の入門期指導(最初の20~25時間程度)は、伝統的に教科書を使わずに、教師の口頭英語で進めていくことになっています。この指導法は100年以上も前から脈々と受け継がれてきたものであり、「それ無くして『筑波の英語』はない」と言われるほど特徴的な指導です(「入門期指導」のページ参照)。

 

イメージとしては、生徒と教師がお互いに英語でやりとりをしながら目的とする表現を導入し、そのまま口頭練習を行うというやり方です。この時期のほぼすべての時間がこのやり方で進められます。それを生徒の顔が見えない一方通行の指導の中でどうやって実現するのか…。ましてや、4月当初からの臨時休校によって、新入生はその特徴的な授業がどういうものかというイメージすら持っていません。

 

そこで思い浮かんだのが、いっそのこと1年生はすべての指導内容をビデオにしてしまおうということでした(最終的には2、3年生もその形になりました)。幸い、筆者は自分の担任学年だけでなく、学校行事全般のビデオ撮影及び編集を長年行ってきていたので、ビデオで教材を作成するということには抵抗がありませんでした。いや、その形を思いついた時点で俄然意欲が湧いてきました。その時の様子を英語科の同僚は、「それまで落ち込んでいた肥沼先生が、あれで生き返った」と振り返っています(笑)。

 

こうして1年生を主担当で教える筆者は、同学年を副担当で教える植野先生(3年生副担当兼務)を巻き込こんで、「NHKテレビ英語講座」ならぬ「TKBビデオ英語講座」を週に3コマ提供することになりました。

 

"番組"の構成をどうするかについては、以前に作成した入門期の指導内容一覧が役立ちました(「平成21年度英語科入門期指導実績記録」)。これを見ると全体の指導内容を、①「主な指導項目/口頭指導文法項目等」、②「補助指導項目」(多くは補助語彙の指導)、③「文字指導/発音と綴り/読む/書く」という3つに分けてあります。そこで、これを元に今回は次のような3つの項目を"番組"のコーナーにすることにしました。

 

①「表現の学習」…be動詞、一般動詞のごく簡単な表現の導入と練習

②「語彙の学習」…表現の幅を広げるための語彙の導入と練習

③「文字の学習」…アルファベットの名前と音や歴史等の学習

 

なお、③は文字の学習が一段落したところで「綴りと発音」(読むこと)、さらに「単語や文の書き方」(書くこと)へと進めていくことにしました。また、NHKラジオ『基礎英語1』を聴かせているので、しばらくしたところで④「基礎英語の復習」というコーナーも設けることにしました。一方、1年生の授業でいきなりそれらの内容に入るのには無理があるので、1コマ目の最初に以下の項目を入れて、生徒の学習意欲を高めることにしました。

 

○「英語学習の目的」…生徒に考えさせなが、本校の目指す英語学習の姿を解説

○「英語学習の方法」…英語学習を効果的に行うためのポイントの説明

○「教員自己紹介」…授業担当者の英語による自己紹介とその内容確認

 

ここまで来れば、なんとなく先のことが見えて来ます。そして、頭の中ではああしよう、こうしようという創造のための想像(妄想?)が始まっていました。ただ、上記の内容をすべて自分が製作するのは大変なので、③「文字の学習」シリーズの製作は"相棒"の植野先生にお願いすることになりました。

 

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