テスト作りの基本については、「1. テスト作りの喜本」で詳しく述べました。しかし、テストを実際に作ってそれを実施するまでにはさらにいくつかの考えるべきポイントがあります。もちろん、それらを考慮しなくても問題を作って実施することはできます。ただ、より良いテスト作りを目指すのであれば、これから述べることを考慮してみてください。
(1) 複数の先生で作る
一人で同じ学年のすべてのクラスを教えている場合は、おそらくすべての問題をその先生が一人で作っているでしょう。では、二人以上の先生で同一学年を教えている場合はどうでしょうか?
考えられるやり方は以下のものでしょう。
① それぞれまったく別の問題を作っている
② 一人が代表で作っている(交代制も含む)
③ 分担して問題を作成して1つにまとめている
④ すべての問題を全員で相談しながら作っている
上記のうち、高校で多いパターンは①と②でしょうか。特に担当者によって教科書も違うような学校では①が基本でしょう。中学校では中規模以上の学校では②か③が主で、①もあるかもしれません。小規模の学校ではそもそも一人で作るしかないという状況でしょう。おそらく中学校でも④はかなりの少数派だと思われます。
同一学年を複数の教員で教えている場合、理想的には④のパターンが望ましいです。その理由は、複数の頭で考えた方が良い問題ができること、授業のあらゆる活動を網羅した問題を作りやすいこと、問題の作成ミスが少ないこと、などがあげられます。ただ、筆者も以前に何回かそれをやったことがありますが、作業がとても大変でした。主な理由は、担当者のスケジュールを合わせる必要があること、相談しながら作るのでその他の場合に比べてかなりの時間がかかること、などでした。
以上のことを考えると、理想的かつ現実的なのは③の方法と言えるでしょう。ただし、その場合でもどのような問題構成にするのかの事前相談は必要で、その上でここの問題はそれぞれに任せるという形にしたいものです。筆者の前任校は全学年を複数の教員で持っていたので、多くの場合で③の方法を採っていました。
(2) 複数の目で確認する
複数の先生で作成したときは、問題を合体させる前にお互いに相手の問題に目を通しましょう。そのねらいは次のとおりです。
一番の目的は出題ミスを無くすことです。面白いもので、自分で作った問題は何度も見直してミスがないと思ったのに、パートナーの先生に一目見てもらっただけでミスが見つかることがあります。
それが正答に関わらないような小さなミスでしたら見逃されてもそれほど大きな問題にはなりませんが、問題として成り立たなかったり答えが変わってしまうようなミスであったりすると、実施後に「もっとちゃんと確認しておけばよかった」と悔やむことになります。場合によっては生徒や保護者からクレームを受けるようなことにもなりかねませんから、できるだけミスは避けたいものです。
筆者は前任校で初めて毎回複数の教員で問題作成を行い、必ず複数の目で問題の確認をするようになりましたが、テスト中の巡回時やテスト後に問題のミスが判明する確率がそれ以前と比べて格段に低くなりました。英語科は他教科(担当者別の問題作成が普通)に比べてテスト中の訂正が少ないと生徒にも思われていましたが、その理由は印刷する前に複数の目で確認することが習慣になっていたからでした。
(3) お互いのテストを交換し合う
最後に、テスト作りの留意点ではありませんが、より良いテストを作る方策として比較的簡単にできることを取り上げましょう。
過去に評価に関する研修会の講師を務めたとき、参加者の先生方に伺ったところ、同じ学校の中の同じ教科でも他の先生がどのようなテストを作っているか見たことがないという先生が結構いらっしゃいました。お互いの授業を見合うことも結構難しいということですが、テストとなるとほとんど“アンタッチャブル”のようでした。
指導と評価の一体化が叫ばれる中でこれではいけません。テスト作りは単独で行うことがあるとしても、せめて作った実物は見合ったり交換し合ったりしたいものです。
そしてそれは、テスト作りの研修ができると言うことでもあります。長年一人でテストを作っていると、もうそれでいいと思ってしまって、テストの構成や問題を作る能力が伸びません。同僚の先生の問題を見せてもらえれば、自分にはそれまでになかった視点の問題に出会えることもあるでしょうし、テストの見かけなども参考になるかもしれません。また、新しい学習指導要領に沿った問題作りをしている先生の問題であれば、無料で質の高いテスト作りの研修をさせてもらうことができます。
そこで提案です。ぜひ同じ学校内では英語科全員の先生でテストを交換し合いましょう。それが面倒であれば、いつでもお互いの作ったテストを見合うことができる体制を整えてみてください。例えば、作成したプリント(テスト問題を含む)を入れてあるバインダーはお互いに自由に見合うことができるようにするのがいいでしょう。ちなみに、筆者の元勤務校ではお互いのバインダーはいつでも見られるように本棚に並べてありますし、1年経てば希望によりそのバインダーを次の学年の先生に渡しています。
ただ、そのためにはお互いの"手の内"を隠さずに自由に見せ合うことができる、先生方同士の人間関係作りが欠かせません。コミュニケーションを扱う英語科の教師としてはぜひ教師自身がそのような人間関係作りを日頃からしておきたいものです。
〈おわりに〉
いかがだったでしょうか。テスト作りの基本からは少し離れた話をしましたが、実際にテストを行う上では頭においておきたい大切なことをお話ししたつもりです。より良いテストが実施できるように頑張ってください。
【追記】テスト用紙を冊子タイプに印刷する方法
先生方はテストをどのように印刷なさっていますか? すべて片面印刷ですか? でも、それだと紙を多く使いますし、枚数が多い場合は配布する監督の先生も大変ですよね。
筆者の前任校では25年以上前から両面印刷して冊子タイプ(1ページ目はテストを受ける際の注意などを含む表紙)に仕上げる印刷をしています。それでもたいていは複数枚になりますが、ホチキスで留めたりせずに単に挟み込むだけの冊子にしています。こうすれば、配布するときは1回の作業ですみます。
ただ、このような印刷方法はどこにどのページを配置したら良いかがよくわからないという印象があるようです。しかし、けっしてそんなことはありません。たった1つのパターンを覚えさえすればいいのです。それを「つぶやき」のコーナーの「223. 冊子タイプの簡単な印刷方法」として記事にしてありますので、興味のある方はご覧になってください。
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