ゴールデンウィークの連休が明けると、いよいよ新型コロナウィルス感染症の位置づけが変わります。ただ、3年以上も警戒を続けてきた人間にはそう簡単に対応を変えることはできないのではないかと思います。筆者自身はおそらく今後もマスクを付けて授業をするでしょうし、学生の多くもそうではないかと思っています。
そのコロナ禍関係では、教育界にも3年前にそれによる大きな変化がいくつもありましたが、筆者にとって最も大きかったのがオンライン授業をしたことでした。その詳細は「ロイロノート遠隔学習指導」のコーナーに書かれていますが、その時の経験は定年退職するまでの2年間の授業スタイルにも大きな影響を及ぼしただけでなく、退職後の大学の授業でもその影響が残っています。いや、正確に言うと、そこから抜け出られなくなって深みにはまってしまっていると言った方がいいかもしれません。
具体的には、授業の準備にものすごく時間がかかるようになったということがあげられます。その一番の原因は、パワポを使って教材のほとんどをプロジェクターで示すようになったからです。それのどこが大変かというと、以前であれば準備できないとあきらめていたことも電子データで準備できてしまうので、結果的に視聴覚教材が膨大な量になってしまっています。
まず、中学校の授業で言えば、それまで手書きの絵やピクチャーカードを準備できる範囲で使っていたのが、電子データさえあれば画像も音声も手に入れられるので、「あれもあるかな、これもあるかな」と探してしまい、見つかればそれをパワポの画面に載せようとするので、それだけでかなりの作業量になります。
ところが、このパワポ教材には大きな難点(弱点)があります。それは作った画面の順番にしか生徒に見せられないということです。これが何を意味するかというと、事前に授業全体の流れを考えてパワポ資料の順番も整理しておかなければならないということです。しかも、一画面を一度に見せると面白くない場合は、アニメーション機能を使って見せる順番まで作り込みます。
結果的に、パワポは授業の指導案どおりに作ることになり、最終的にはパワポが一種の指導案となってしまうのです。そうなると、毎時間“隙”のない指導案、すなわちパワポを作ることになり、それが授業の準備時間を大幅に押し上げてしまいました。
この傾向は大学の授業にも引き継がれています。実は、ある科目は以前に持っていたときとほとんど同じシラバスと教材で行っているのですが、当時はパワポを使っていなかったので、結局はそれも毎時間一からすべて作成し直しています。新しく担当している科目に至っては教える内容もすべて初めてなので、ほぼ毎回前週の授業のない平日や休日を丸一日つぶして準備しています。非常勤で、かつ一日1コマだからできることで、常勤で一日に複数の科目があって同じ事をしていたら、きっとパンクしてしまっているでしょう。
同じようなことはきっと現職の先生方も感じていらっしゃるのではないでしょうか。コロナ禍でオンライン授業を経験したことで、それまで使ったことがなかったようなICT機器や教材を使うようになり、効果的な学習指導が可能になった反面、できることが増えてしまったために、教材準備に膨大な時間と労力を割くようになった…。
できることが増えると仕事が忙しくなるのは、パソコンで仕事をすることが当たり前になったときにも感じたことです。最近のICT機器の普及は、教師の負担軽減以上に教材準備の時間と労力を大きくするということに“貢献”しているように思います。(5/6/2023)
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