○現在進行形の肯定文

P.はじめに

 

現在進行形の導入というと、スポーツ選手の試合のシーンのビデオを見せて "He is playing tennis now." と叙述する方法をよく見かけます。それはそれでわかりやすくていいのですが、はたしてこれは適切な導入と言えるでしょうか。なぜかと言うと、ビデオに映っているシーンはすでに過去のものであり、その時点で試合をしているわけではないからです(もちろん、それが「中継中である」という断りがあれば別です)。また、ビデオの中のリアルな撰手の姿に注目するあまり、聞いてもらいたい英語が生徒の耳に残らないという可能性もあります。

 

一方、試合中の写真を見せて He is playing tennis now. とする導入もあります。こちらの方が手軽で、その瞬間を切り取っているので、より現在進行形の時間の感覚を教えやすいとも言えます。ただ、こちらもビデオのときと同じ理由で、本当に「今」それをやっているということを表しているという保証はありません。この点について、かつて元同僚の久保野りえ先生は望遠鏡をのぞくふりをして、見えたものを“実況”するという方法の導入を行っていました。これであれば、「今~している」という状況設定が進むと思いますし、「上手いなあ~」と感心したのを覚えています。

 

したがって、厳密に言えば、生徒の目の前で現在進行中のものを見せる方が、よりよい導入となります。そこで多くの先生が思いつくのが、ご自身がテニスをしている様子を生徒の目の前で再現して "I am playing tennis now." とやることです。ただ、これも先生の動きが止まってしまうと無効になってしまうので、言っている間はやり続けなければなりませんし、生徒は先生の動きが面白すぎて(?)、英語自体が耳に入ってこない可能性があります。また、その先生が普段からテニスをしているという前提がないと唐突な感じを受けますし、習慣を表す現在形との比較が難しくなります。さらに、"I am ~." でやっているので、その後に生徒に対して客観的にその状況を説明することができないのも、かつてそれをやったことのある先生でしたらおわかりでしょう。

 

そこで、今回は上記のような問題点を「全て」というわけではありませんが、ある程度解決した導入方法をご紹介します。しかも、手持ちの教科書に載っている写真を使うという“省エネ”の教材準備で済むものです。たまたまそのページを授業では注目させたことがなかったことと、その写真を使って「今現在している」という状況を生み出す方法を思いついたからでした。以下にそれをご紹介します。

 

なお、ここでお伝えしたいのは、それと同じ教材を使ってみてはどうかというのではなく、お手持ちの教科書等の身近な教材の中に使えそうなものを見つけて使ってみるという視点を持っていただこうということです。前置きが長くなりましたが、実際の指導事例を以下にご紹介します。

 

<使った教科書の写真>

令和3年度版 ONE WORLD(教育出版)2年生の Lesson 3 の扉写真


※教員用教科書附属のCDに全ページのデータが入っているので、それを利用します。ただし、基本的にPDFデータなので、パワポで使うには何らかのソフトを使ってJPGに変換する必要があります。

 

◇Introduction of the New Expressions

では、実際の導入シーンをご紹介します。左側の写真は黒板に写したパワーポイントの画面、右側は生徒とのやりとりです。発言者は、T:教師、S:生徒(全体)、S1:生徒(個人)です。生徒の発言は実際の生徒の発言や表情を記憶を頼りに書き起こしたものです。(実施日:2021年9月8日)

 

(1) Input of the New Expressions through Interaction 

T: Look at this picture here.

S:(ああだ、こうだと大騒ぎになる)

T: Who is this?

S1: 大坂なおみ?

T: Yes!  That's right!

※写真にモザイクをかけて見えにくくすると、生徒の関心を強く引きます

T: This is Osama Naomi.  What is she?

S: She is a tennis player.

T: Is she professional or amateur?

S: Professional.

T: What does she do every day?

S: She...practices tennis.

T: Right.  Repeat, "She practices tennis."

S: She practices tennis.

T: Then, how about NOW?

S: Now?

T: WHAT is SHE DOing NOW?  Do you know? ※未習文型のわかる部分のみ強調する。

S: I don't know.

T: You don't know?  I don't know it, either.  Then, let me check it.  (携帯を取り出す)I'm going to call her. (電話をかけるふりをする)

S:(大騒ぎになる)

S2: 先生って、大坂なおみの知り合いなの?

S3: バカ。うそにきまってるじゃん。かけるふりだよ。

T: Hello?  Naomi?  Hi, this is Nory.  How are you doing?  Good.  What are you doing now? ... What?  Oh, I'm sorry.  You're so busy now.  OK, I'll call you back later.  Bye!  

S4: 先生、演技うまい!

T: What is she doing now?

T: She is playing tennis now.

S:(爆笑になる)

S5: 試合中に電話に出られたの?

T: Look.  She IS PLAYING tennis now.

※今回の導入のポイントは、静止画を使いながらどうやって「(今)~している」という状況設定をするかということでした。それを今回は「電話をして何をしているかを確認する」という方法で設定しました。「P. はじめに」で指摘した問題点を解決する手段として考えたものですが、これによって生徒には臨場感のある「~している」の場面を提供できたと思います。なお、この方法は思いの外生徒に受けました(笑)。ただし、かなりの演技力が必要ですが…。

 

また、これも「P. はじめに」で述べましたが、生徒に示す写真を教科書の挿絵から取ったのもポイントだと思います。そして、それをぼかしたもの(Windows の「ペイント」で作成)から入ったことで生徒の関心はマックスになりました。今ではネットでいろいろな写真を手に入れられますが、既存のものを使うことで省エネができます。また、教科書から取れば安心して使えます。

 

T: Look at the next picture.  Who is this?

S6: 誰、あれ?

S7: 女の人?

T: I'll give you a hint.  She is an Olympic medalist.

S8: 石川佳純?

T: You're right!

T: This is Ishikawa Kasumi.

S9: 石川佳純って誰?

S10: 知らないの?

T: What is she?

S: She is a table tennis player.

T: Is she professional or amateur?

S: Professional.

T: No.

S: ええ!

T: She is amateur and professional.

S: ...?

T: She is semi-professional.  What does she do every day?

S: She practices table tennis.

T: Right.  Then, what is she doing now?  Do you know?

S: I don't know.

T: OK.  Let me check it.

S:(笑いが起こる)

S11: またかよ。

T: (電話をかけるふりをする)もし、もし。あれ? 石川佳純さんのコーチの方ですか? 石川さんは今…? あ、そうですか。それは失礼しました。また後でかけ直します。失礼します。

S:(笑いが起こる)

T: What is she doing now? 

T: She IS PLAYING table tennis now.

S12: 顔、こわっ!

S13: また試合中?

T: Look at the next picture.

S13: あ、わかった!

T: Who is this?

S13: 藤井聡太!

T: That's right!

T: What is he?

S14: 将棋ってなんて言うの?

S: He is a shogi ...

S15: 棋士ってなんて言うの?

S16: Player?

T: Yes.  He is a shogi player.  What does he do every day?

S: He practices?

T: Yes.  He practices ...

S: He practices shogi.

T: That's right.  Then, how about now?  What is he doing now?

S17: Practicing shogi.

T: Let me check it.

S18: またかよ!

T: No.  I won't call him.  Just check it in the next picture.  What is he doing now?

T: He is playing shogi now.

S19: すげ~。

S20: 将棋って"play"なの?

T: Yes.  He is playing shogi now.

T: Look at the next picture.

S:(笑いが起こる)

S21: 羽生結弦!

T: Who is this?

S: 羽生結弦!

T: That's right.

T: This is Hanyu Yuzuru.  What is he?

S: He is a ... skater.

T: That's right.  He is a skater.  What does he do every day?

S: He practices skate.

T: In this case, you say, "He practices SKATING.  Please say it.

S: He practices skating.

T: Good.  Then, what is he doing now?

T: He is skating now.

S: おお~!

S22: かっこういい!

※実はここまでの間で、後半の2人のところでは What is he doing now? の質問に対してパラパラと He is ~ing .... という表現が出てきていました。繰り返し聞かせることで、場面から想像される意味とそれを表す表現が理解できた生徒がいたようです。他の生徒もそれを聞いて理解し始めていたと考えられます。

 

(2) Check of Understanding and Mim-mem

T: So far, you have four young people here.  They are doing something.  I will check what each one is doing, so please try to answer.  Look at this woman(大阪なおみ).  What is she doing now?

S: She is playing tennis.

T: Very good!  Repeat, "She is playing tennis.

S: She is playing tennis.

T: She

S: She

T: is

S: is

T: playING

S: playing

T: tennis

S: tennis

T: She is playing tennis.

S: She is playing tennis.(Chorus → Individual)※必ず個人的にも言わせます。

 

※以下、石川佳純、藤井聡太、羽生結弦についても同様の練習をします。

※(1)で十分にやりとりをしながらターゲットの文を聞かせており、途中でその表現が出てくるくらいになっていたくらいですので、ここでは英問・英答でその表現が多くの生徒から出てくるかを試すようにします。そしてそれを拾って Mim-mem を行うようにします。「何と言っていましたか?」とか「どういうことを言っていたのでしょう?」という日本語をこの時点で使う必要はありません。

 

(3) Mid-consolidation

T: では、ここからは日本語で確認をします。今日ここまでやってきた新しい表現はどういうことを言おうとしていたものですか?

S: ~している

T: そうですね。「今、~している」ということを言っていました。4人の人について言った文の共通する表現は?

S: イング

T: 何が「イング」なの?

S: 動詞

T: 例えば?

S: Playing

T: そうだね。羽生君のときは?

S: Skating

T: 「イング」と言うからにはつづりは何だろう?

S: i, n, g

T: そうだね。動詞にingが付いたもので表していました。じゃあ、それぞれの文の動詞は「~ing」かな?

S: be動詞

 

T: ここで使っていたのは?

S: is

T: そうだね。<be動詞+動詞のing形>で「今、~している」ということを表します。

後でもう少し詳しく振り返るので、今の時点ではそれだけを覚えておいてください。

※(2)で「日本語をこの時点で使う必要はありません」としましたが、やはりそれだけでは理解していない生徒がいる可能性がありますから、日本語でのやりとりでそういう生徒の頭の中を整理してあげます。ただし、大切なのは教師がすべて言ってしまうのではなく、生徒から理解できたことを順番に引き出してまとめるようにすることです。そうすることで「帰納的」なまとめができます。教師がすべて言ってしまったら、オーラル・イントロダクションをした意味がなくなってしまいます。

 

◇Oral practice of the New Expressions

教科書の練習問題を使って、もう少しターゲットの文の練習をします。

T: Then, let's practice this expression more with these pictures and hint words.  Look at the example.  The picture has some hint words like "I" and "sit on the lawn".  This is lawn.  What is lawn?

S: 芝生?

T: That's right.  And you can say, "I am sitting on the lawn."  Do you understand the task?

S:(うなずく)

T: OK.  Then, you try No.1.  What would you say?

S: I am studying math.

 

T: Good. →Mim-mem

T: Look at the next picture, No.2.  What would you say?

S: We... are... practice ...

T: We are practicing ...?

S: We are practicing singing.

T: Good. →Mim-mem 

※②はingが2語続くので生徒が戸惑う姿が見られる。

 

※③も同様に行う。

T: さて、今3問やってわかったことがあったと思います。みなさんは自然に言っていましたが、どこかに注意して言っていましたよね?

S: be動詞

T: どう変えていたの?

S: 主語によって

T: 例えば "I" なら?

S: am

T: "we" なら?

S: are

T: "that boy" なら?

S: is

T: そうですね。<be動詞+動詞のing形>としましたが、主語によってbe動詞を変える必要があります。これはこれまで習ったすべてのbe動詞の文と同じですね。

 

※この練習問題はbe動詞のバリエーションを練習できるように作られているので、ここでそれを利用するようにします。また、確認のためのまとめも教師が一方的に説明してしまうのではなく、生徒の既存の知識を引き出しながら整理していくようにします。

 

 

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